サーバ仮想化で運用コストは本当に減らせるの? データベース運用の効率化は“サービス”視点で考えよう!:データベース基盤と管理の「それって本当?」――スペシャリストが真実を暴く(2)(1/3 ページ)
今稼働中のサーバ、「そのまま丸ごと仮想化すればコストは下げられる」と思っていませんか? 実は必ずしもそうとは限りません。適用範囲を見極め、それに適した形の仮想化をしなければ、運用が複雑化してかえってコストがかさむ恐れがあるのです。自由度は高いけれど手を加える必要がある路面店と、必要な設備が整ったショッピングモールとの比較で考えてみましょう。[運用管理効率化][Oracle Multitenant][Oracle Database 12c]
はじめまして。日本オラクルの伊藤勝一です。クラウド・テクノロジー事業を推進する中で、多くのお客さまのクラウド移行や仮想化導入支援に携わってきました。ご相談を受けるときによく耳にする言葉が、「せっかく仮想化したのに、思うようにパフォーマンスが出ない」「意外と運用が面倒で、コストもかさむ」といったものです。そこで今回は、目的に見合った仮想化技術を活用し、プロジェクトから効果を得るコツをご紹介します。
「仮想化」と「クラウド」は似て非なるもの。「仮想化」で運用コストは上がってしまう?
「仮想化」は今やシステム構築・更改とプライベートクラウドへの移行を検討する際に挙がる選択肢の1つではないでしょうか。1台のハードウェアにハイパーバイザーを載せ、その上で複数の仮想マシンを稼働させてハードウェアリソースを集約し、ハードウェア自体のコストを削減できることがその「利点」とされてきました。
しかし、実際にサーバを仮想化してみたところ「思ったほどコストが減らせない」ことに気付く方も増えているようです。既存のシステムをそのままハイパーバイザー上に載せるのでは、物理的な機器の数は減っても、論理的なシステム構成数は減りません(図1)。
むしろ、仮想化でレイヤーが増える分、今までより管理が大変になり、特にシステムに問題が発生した際のトラブルシューティングなどにも時間や手間がかかるケースも増えてきます。結果として、運用コストがネックになってコスト削減の目標が達成できないことが多いようです。
「仮想化しただけ」ではリソース最適化ができない理由
もう1つの大きな課題はパフォーマンスです。確かに、サーバ仮想化の狙いの1つは「せっかく導入したハードウェアなのだからリソースが余っているのはもったいない。できるだけ集約して使い切ろう」というところにありました。しかし、OS からアプリまでを丸ごと仮想化して詰め込むだけ詰め込むと、仮想マシンごとにメモリやプロセスといったリソースを確保することになり、全体を見渡すと重複するリソース消費が多数存在し、無駄が多いように見えます(図2)。
一体どうしてでしょう? それは、仮想化、標準化のレイヤーが低すぎることに起因しています。そもそも、システムの目的とは何でしょうか? 従業員や顧客といったエンドユーザーに「サービス」を提供することですよね。従って、基盤側から考えるのではなく、サービス視点、アプリケーション視点で必要な性能や可用性を考慮し、アーキテクチャを考えていくことが重要です。
そのアプリケーションを支えているのが、ミドルウェアやデータベースです。この部分、すなわちプラットフォームレイヤーを標準化し、仮想化して統合する、そんなシンプルなアーキテクチャが実現できればどうでしょうか。OSやデータベースへのパッチ適用やバックアップなども少ない手間で行えますし、常に最新のパッチを適用できるため高いセキュリティレベルを確保できます。また、メモリをはじめとするリソースをプラットフォーム全体で共有しつつ、システムの重要度に応じて配分することで、より有効に活用できるでしょう。無駄なリソース割り当てを省くことで統合できるシステムも増え、集約率を向上できます。しかも開発者は、下のレイヤーのことを気にせず自由にアプリケーション開発に専念できます。
確かにインフラレベルで仮想化すれば自由度は高く、何でもできるでしょうが、その分あれこれとメンテナンスに手間がかかります。「サービスを提供する」という目的が明確ならば、それに合わせて高いレイヤーで標準化することで、求められるパフォーマンス要件を満たしつつ全体のITコストを削減できます。
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