企業ユーザーは要注意? Windows 7/8.1の「更新プログラム」の提供方法が変わりました:山市良のうぃんどうず日記(76)(2/2 ページ)
ご存じの方も多いと思いますが、Windows 7/8.1向けの更新プログラムの提供方法(サービスモデル)が変更されました。新しいサービスモデルは、更新管理を“さらにシンプルに”するそうですが、なんだか複雑な感じがします。
更新パッケージは3種類。一般ユーザーは「セキュリティマンスリー更新プログラム」だけでOK
以前のWindowsに対するサービスモデルの変更に関しては、以下の公式ブログで詳細を確認できます。
- Windows 7およびWindows 8.1のサービスモデル変更についての追加情報(日本のセキュリティチーム)
新しいサービスモデルでは、毎月、次の3種類の更新パッケージが提供されることになります(カッコ内は上記公式ブログ内での表現)。
(1)セキュリティのみの品質更新プログラム
(2)セキュリティマンスリー品質ロールアップ(セキュリティの月例の品質ロールアップ)
(3)マンスリー品質ロールアップのプレビュー(月例の品質ロールアッププレビュー)
「セキュリティのみの品質更新プログラム」は、その月にリリースされた新規のセキュリティ更新プログラムをまとめたもので、Patch Tuesdayにリリースされます。ただし、Windows Updateには配布されず、企業のWindows Server Update Services(WSUS)に配布されたり、「Microsoft Update Catalog」でのダウンロード提供されたりします(画面3)。2016年10月は、Windowsのバージョンごとに「KB3192392」と「KB3102391」がリリースされています。
- October 2016 security only quality update for Windows 8.1 and Windows Server 2012 R2(x86版46.5MB、x64版76.9MB)
- October 2016 security only quality update for Windows 7 SP1 and Windows Server 2008 R2 SP1(x86版45MB、x64版79.2MB)
Patch Tuesdayには、2つ目の「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」もリリースされ、こちらはWindows UpdateとWSUSの両方に「重要な更新プログラム」として配布され、Microsoft Update Catalogでもダウンロード提供されます。
その月の「セキュリティのみの品質更新プログラム」の内容は、その月の「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」に含まれます。また、前月までの「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」に含まれるセキュリティ更新および非セキュリティ更新を含む累積的な更新プログラムになります。Windowsのバージョンごとに「KB3185331」と「KB3185330」がリリースされています。
- October 2016 security monthly quality rollup for Windows 8.1 and Windows Server 2012 R2(x86版69MB、x64版116.6MB)
- October 2016 security monthly quality rollup for Windows 7 SP1 and Windows Server 2008 R2 SP1(x86版72MB、x64版119.4MB)
また、.NET Frameworkについても、このサービスモデルに従って累積的な更新プログラム(.Framework XX用セキュリティおよび品質ロールアップ)が提供されます。
「マンスリー品質ロールアップのプレビュー」は、翌月の「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」を先行的にリリースするもので、Windows UpdateおよびWSUSの「オプションの更新プログラム」として第三火曜日(米国時間)にリリースされます。Microsoft Update Catalogからのダウンロード提供も行われます。2016年10月19日(日本時間)に、初めての「マンスリー品質ロールアップのプレビュー」が提供される予定です。
一般ユーザーは、Patch TuesdayにWindows Updateで配布される「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」と.NET Framework用の「セキュリティおよび品質ロールアップ」、その他の検出された重要な更新プログラムをインストールするようにしておけばよいでしょう。
オプションの更新として提供される「マンスリー品質ロールアップのプレビュー」は「プレビュー」であるため、十分なテストがされていないと考えるべきです。もちろん、そのテストに参加したいという、積極的な理由があるのならよいのですが……。
企業のパッチ管理の効率アップ、それともトラブル増?
「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」は現在、100MB程度と小さいですが、毎月、前月までの更新プログラムが累積していくため、徐々にファイルサイズは大きくなっていくはずです。マイクロソフトによると、2017年以降、数カ月かけて「セキュリティマンスリー品質ロールアップ」には、さらに以前にさかのぼって、過去の更新プログラムを追加していくそうです。そうなると、“ファイルサイズの肥大化”が気になるところです。
Windows UpdateやWSUS(高速インストールオプションを有効化)で毎月適切に更新していれば、Windows 10の場合と同じように差分だけがダウンロードされてインストールされる仕組みになっているはずなので、ファイルサイズの肥大化問題は無用な心配かもしれません。
一方、累積的な更新プログラムが大きくなっていくと、累積的な更新プログラムのインストールで問題が発生した場合のトラブルシューティングは難しくならないか心配です。毎月、更新し続けているのなら、トラブル原因は新たに追加された更新プログラムと予想できますが、クリーンインストール直後のPCや数カ月更新していないPCの場合、切り分けは困難でしょう。
2016年10月から始まった新しいサービスモデルでは、品質ロールアップ自身の“品質”に注視する必要がありそうです。問題がありそうならインストール前に中止するなどの素早い対応が取れるように。幸いなことに、Windows Updateの機能には大きな変更はないので、Windows 10とは違って更新プログラムのブロックが容易です。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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