「デジタルトランスフォーメーション」と企業成長の相関関係が明らかに CAが調査:日本企業の課題は「市場投入速度」
CA Technologiesが、「デジタルトランスフォーメーションが企業に与える影響」に関する調査結果を発表。日本企業も、多くが「アジャイルやDevOpsなどのベストプラクティスの採用を徹底していくことで、ビジネスへの影響が高まる」と回答した一方で、「市場投入スピード」が世界平均より遅い結果だった。
CA Technologies(以下、CA)は2016年11月4日、「デジタルトランスフォーメーションが企業に与える影響」に関する調査結果を発表。調査結果から、企業の業績とデジタルトランスフォーメーションを支える技術の間には強いつながりがあることが明らかになったと伝えた。
同調査は、「事業の敏しょう性」「事業の成長」「顧客メリットの拡大」「業務効率化」の各カテゴリーを、デジタルトランスフォーメーション・ビジネスインパクトスコアカード(BISスコア)と呼ばれる指標で数値化し、世界規模のランキングで示したもの。BISスコアの世界平均「53」に対し、インド(79)、タイ(71)、ブラジル(69)、インドネシア(66)、マレーシア(64)など、多くの途上国が上位を占めた一方で、米国は「57」、日本は「47」と、やや低い値となった。その理由を同社は、「日本を含む先進国のスコアが全世界の平均値より低い理由は、新興国や発展途上国は、先進国に比べて従来の環境に対処する必要が少ないため、ゼロからデジタルトランスフォーメーションへの取り組みを開始できる。そのため、その取り組みからのメリットが短期間で得られ、かつ規模も大きくなる」と説明している。
ただし、日本においても、既に多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを支える技術の活用に乗り出しているとする。「デジタルトランスフォーメーションに必要な人材に投資している企業の割合」は、世界平均の84%に対して、日本でも85%と、世界平均並み。日本企業も同様に、アジャイルやDevOps、API管理、アイデンティティー中心のセキュリティといったベストプラクティスの採用を徹底していくことで、「ビジネスへ貢献する度合いが高まる」と回答した企業が多かった。
また、「デジタル技術を、事業の再構築と顧客との新たなコミュニケーション方法に活用している企業の割合」や「デジタルエンタープライズ施策に向けて、そのビジョンを既に策定している企業の割合」「デジタルエンタープライズ施策を促進する部署に投資している企業の割合」についても、日本企業の割合はほぼ世界平均並みだった。世界平均がそれぞれ82%、81%、80%だったのに対して、日本では84%、80%、78%だった。
一方で、実際の展開後を聞いた「デジタルトランスフォーメーションによる効果」の問いについては、「市場投入スピードを短縮できた」とする割合が、世界平均の33%に対して、日本は16%だった。市場投入スピードの短縮のみ、平均値の半分を下回る結果だったことから、同社は「今後、世界平均まで効果を上げていくことが日本企業の課題」としている。
なお、デジタルトランスフォーメーションを成功させる上で有益な指標を事業別に見ると、上位5業種は通信、銀行/金融サービス、公共セクター、小売業、医療だった。CAでは、公共性の高いセクターが上位に来ていることから、政府機関が国民へのサービス向上に注力するためにデジタルトランスフォーメーションを活用し、雇用や税収を向上させていることが分かると説明している。
同調査は2016年5〜6月に、21カ国/10業界のトップ層1770人に対して、Coleman Parkes Researchが実施したもの。そのうち日本からは89人が回答した。
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