検索
連載

2016年、Windows関連の話題を振り返る山市良のうぃんどうず日記(81:年末特別編)(1/4 ページ)

2016年も残りあとわずか。2016年1月から12月まで、特に筆者の印象に残っているWindows関連の話題を、その後日談を交えながら振り返ります。2016年をひと言でまとめるなら、Windows 10とWindows Server 2016に振り回された1年でした。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
「山市良のうぃんどうず日記」のインデックス

連載目次

●1月――古いバージョンのIEのサポートが終了

 マイクロソフトは2016年1月に古いバージョンの「Internet Explorer(IE)」に対するサポート提供を終了しました。2016年1月からは“製品サポート期間中のWindowsで利用可能な最新バージョンのIEのみがサポート”されるようになりました。

 古いバージョンのIEのサポート終了と同じ日にWindows 8のサポートも終了し、Windows 8のIE 10はサポートされなくなりました。なお、Windows 8ユーザーは今でも「Windowsストア」からWindows 8.1(IE 11を搭載)に無料アップグレードできます。

 時期ははっきりしないのですが、2016年の中ごろから、サポートが終了した古いバージョンのIEで「サポート技術情報」(https://support.microsoft.com/ja-jp/kb/番号)のページを含むmicrosoft.comの一部のページを参照しようとすると、「お使いのブラウザはサポートされていません(Your browser is out-of-date)」と表示されるようになりました(画面1)。セルフサポートで情報を必要としている人にとっては、痛い仕打ちです。

画面1
画面1 Windows Vistaで古いIE(IE 8以前)を使っていると、サポート技術情報を参照できない

 Windows Vistaの場合はIE 9(Windows Vista向けの最後のIE)に更新することで解消されますが、Windows Vistaは「2017年4月11日」に製品サポートが終了します。その後はIE 9であっても、同様の扱いに切り替わるかもしれません。

 Windows XPのIE 8(Windows XP向けの最後のIE)もWindows Vistaと同様に、2016年の中ごろからサポート技術情報にアクセスできなくなりました。最近、あらためてWindows XPのIE 8から参照してみたところ、サポート技術情報はおろか、マイクロソフトのトップページにさえ接続できない状態になっていました(画面2)。ネットワークは接続されていても、DNSエラーが表示されます(実際にはセキュアチャネルのエラー(12157)が発生します)。

画面2
画面2 Windows XPのIE 8では、microsoft.comの多くのページがDNSエラー(セキュアチャネルのエラー)に

 昨今のWebサイト側のセキュリティ強化(一部のページの常時SSL化、SSL 3.0の無効化など)が影響しているものと想像しますが、サポートが終了したOSなのでどうしようもありません。

 Windows Vista以前のIEは、今後、参照できないWebサイトが増えていくでしょう。Windows XPおよびWindows VistaはTLS 1.0をサポートしていますが、TLS 1.1やTLS 1.2はサポートしていません。TLS 1.0には脆弱(ぜいじゃく)性があることが明らかになっており、すでにTLS 1.0を無効化したWebサイトが出始めています。

●2月――EMETがWindows 10に対応しましたが……

 マイクロソフトの脆弱性緩和ツール「Enhanced Mitigation Experience Toolkit(EMET)」は、Windowsやアプリケーションに存在する未パッチ(未修正)の脆弱性を悪用した攻撃リスクを軽減するセキュリティツールです。

 EMETを導入すると、“副作用(性能が低下する、攻撃ではないのにシステムやアプリケーションがクラッシュするなど)”に悩まされることもありますが、最新のWindowsよりもセキュリティ機能が乏しい古いWindowsのセキュリティ機能を補完してくれます。

 2015年11月のWindows 10リリース時に最新であったEMET 5.2は、Windows 10をサポートしていませんでした。2016年2月にリリースされたEMET 5.5で、ようやくWindows 10に対応しました。ただし、Windows 10にはEMET由来のいくつかの機能とともに、Windows 10だけの新しいセキュリティ機能(「デバイスガード」や「資格情報ガード」など)が組み込まれているため、Windows 10でEMETは不要という意見もあります。

 EMETの最新バージョンは2016年11月リリースされたEMET 5.52ですが、同時にEMETの今後に関して重要な発表もありました。EMETのメジャーバージョンはEMET 5.xが最後になり、次期バージョン(EMET 6.0)は提供されません。

 EMET 5.5xのサポートは、当初「2017年1月27日」まで提供されることになっていましたが、次期メジャーバージョンの提供がなくなったことを受けて、18カ月延長されて「2018年7月末」までになりました。それでも、2018年8月以降はWindows 7やWindows 8.1の製品サポートが終了する数年前にサポートが終了します。

 EMETは定義ファイルに依存するツールではないため、サポートが終了しても機能しなくなるわけではありませんが、不具合があっても修正されることはなくなります。また、ダウンロード提供も停止されることになるのでしょう。

 ちなみに、メインのPCを全てWindows 10にアップグレードした筆者はというと、EMETは使用していません。Windows 10の仕様やバグに加えて、EMETの副作用に振り回されるのは御免です。

●3月――Office 365 ProPlus、3つの更新チャネルが出そろう

 Windows 10をはじめとするいくつかのマイクロソフト製品には、「更新ブランチ(Update Branch)」という考えが導入されるようになりました。Windows 10には、コンシューマー向けの「Current Branch(CB)」、CBの約4カ月後に提供されるビジネス向けの「Current Branch for Business(CBB)」、ボリュームライセンスを通じて提供される「Long Term Service Branch(LTSB)」の3種類のアップデート方式があります。

 Office 365 ProPlusのWindows向け「Office 2016」には、コンシューマーやOffice 365 ProPlus以外と同じ「Current Channel」、既定の「Deferred Channel」、次のDeferred Channelの新機能を先行提供する「First Release for Deferred Channel」の3つがあります。システム管理ツールである「System Center Configuration Manager」も2015年末から、数カ月ごとに新機能が追加されるCurrent Branchと、System Center 2016に含まれるLTSBの2つがあります。

 この更新ブランチという考え方は、スタートして間もない頃は、実際どうなのか分からない部分がありました。スタートしてから変更されたところや、今後、変更されるかもしれないところもあるので、現在でも更新の仕組みとして明確になっているのかと問われれば、何とも言えません。

 Office 2016バージョンのOffice 365 ProPlusは、2015年9月末に正式リリースされました。当初は、更新ブランチの名称は「Current Branch(CB)」「Current Branch for Business(CBB)」「First Release for Current Branch for Business(FR CBB)」であり、2015年9月末はCBとFR CBB向けの提供開始でした。

 2016年2月にCBBへの提供が開始されるのと同時期に、現在のCurrent Channel、Deferred Channel、First Release for Deferred Channelに変更されています。2016年3月には次のDeferred Channelに向けたFirst Release for Deferred Channelの提供が開始され、このとき初めて3つの更新ブランチが出そろったことになります(画面3)。

画面3
画面3 2016年12月14日現在のOffice 2016の最新バージョン。左から、Current Channel、Deferred Channel、First Release for Deferred Channel。First Release for Deferred Channelのバージョン1609は、2017年2月にDeferred Channel向けに提供される予定

 Office 365 ProPlusの更新ブランチや更新状況の確認、更新の手動実行は「ファイル」→「アカウント」から行えます。バージョン情報は、以前は「16.0.ビルド番号」の形式でしたが、最近は「バージョンYYMM」(2016年11月なら1611)とビルド番号で表示されるようになっています(Deferred Channelはまだ旧表記)。

 更新チャネルは、以前は「現在の分岐」「ビジネスの現在の分岐」「ビジネスの現在の分岐の最初のリリース」とおかしな日本語訳でしたが、現在は「最新機能提供チャネル」「Deferred Channel」「Deferred Channelの初回リリース」のように表示されます(2016年12月9日現在)。

 この辺りの表記もバージョン(ビルド)によってコロコロ変わるのが、最近のマイクロソフト的なところ。なぜ変更したのかと問えば、きっと「ユーザーのフィードバックを反映して……」と答えるでしょう。「ブランチ」「チャネル」「Deferred(遅延)」のいずれも日本人にとっては分かりにくい表現です。新しい用語として最初のものを押し通してくれた方が、Windows 10とも一貫性があってよかったのではと筆者は思います。

 名称はともかく、更新ブランチという考え方は分かりにくいし、1つの企業で複数のブランチを管理しようとすると一気に複雑になります。Office 365 ProPlusを導入したなら、既定のDeferred Channelのまま利用するのが最も安定的に使えると思います。

 もし、Office 2016のアプリケーションと連携するようなアドインやアプリケーションがあるなら、限定された範囲内でFirst Release for Deferred Channelで事前にテストするとよいでしょう。Current Channelは決してお勧めしません。

 例えば、Current Channelでは、2016年10〜11月の約1カ月間、Word 2016とOutlook 2016で日本語変換がおかしくなり(別窓が表示される)、非常に使いにくい状態になっていました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る