私の理想が私をイラッとさせる――感情コントロール「ステップ4 感情を切り替える」:ストレスフルな職場でエンジニアが心穏やかに働くための5段階感情コントロール(5)(5/5 ページ)
感情が生じるスイッチが自分の中にあるのなら、スイッチが切り替わると感じ方そのものが変わってくるかもしれません。
嫉妬心やうらやましさに気付けば、感情は切り替わる
自分の中にある固定観念や「嫉妬心」「うらやましさ」に気付いて、感情が切り替わることもあります。
例えば(これは私自身がよく体験するのですが)SNSに友人が「仕事終わりに仲間と豪勢な食事をしているさま」や「○○プロジェクトが大成功だった」という成功報告、「今度テレビに出演する」「本を出す」のような華々しい写真や投稿を見るとイラっとすることがあります。
このようなとき、「何が、私に、この感情を抱かせたのだろう?」と、感情が生じた理由を自身の中に問い掛けます。すると、「うらやましい」「本当は自分もああなりたい」なと、嫉妬心やうらやましさがあることに気付きます。
友人は成功体験をつぶやいているだけなのに、自分が勝手に嫉妬心を抱き、うらやましがっている。そのことに気付くと、何となく恥ずかしい気持ちになり、「いい気分でいるためには、この嫉妬心はいらないな」「何も、友人が悪いわけではないな。自分も早くそうなれるように頑張ろう」と、固定観念や嫉妬心、うらやましさを手放すことに役立っています。
感情スイッチが分かればコントロールしやすくなる
感情は、価値観によって生じます。価値観が変化すれば物事の捉え方が変化するため、抱く感情が変化します。無理にポジティブに考えなくても、自然とポジティブに考えられるようになるし、テクニックで感情を鎮めなくても、感じ方自体が変化してきます。
ネガティブな感情を抱かせる価値観に気付き、変化させるためには、それほど難しいテクニックは必要ありません。
ネガティブな感情を抱いたときに、「何が、私に、この感情を抱かせたのだろう?」と、「感情を抱かせた価値観は何か」を自分の中に問えばいいだけ。実践することはとてもシンプルです。
感情の背景にある価値観を問う際のポイントは、「何が、私に」です。
一般的に、物事の原因を探るための問いは「なぜ」です。でも、「なぜ、私は、この感情を抱いてしまったんだろう?」という問いは、何となくネガティブな感情を抱いてしまった自分を責めるような感じです。マイナス感情を「例外処理」する――感情コントロール「ステップ2 感情を受け入れる」でお話ししたように、感情は、意思にかかわらず自動的に発生してしまうものなので、「なぜ、この感情を抱いたんだ?」と問われても困ってしまいます。
一方、「何が、私に、この感情を抱かせたのだろう?」は、感情を抱かせたもう1人の自分に問うため、感情を抱いた自分と、冷静な自分との間に距離ができ、責め立てる感じがしなくなります。つまり……
「私は冷静でいたいのだが、私の中の“何か”が、課長に怒っている」
「私は穏やかでいたいのだが、私の中の“何か”が、違和感を抱かせた」
といった具合です。
ネガティブな感情を抱いた背景には、必ず、理想や固定観念があります。それが理想であれば「なるほど、私にはこういう理想があるから、ネガティブな感情が生まれたんだな」と納得感が生まれるし、固定観念であれば、「いい気分でいるために、この価値観は必要かな? 本当に大切なのかな?」と問い、固定観念を手放すきっかけになります。また、感情的になるパターンに気付くこともあります。「あ、いつものパターンだ」と分かれば、感情のループから抜けだすきっかけにもなります。
感情的になったときは、「何が、私に、この感情を抱かせたのだろう?」と考えてみてください。
今回は、感情スイッチの切りかえ方についてお話ししました。感情が切り替わったら、最後のステップは「活かす」です。次回(5月12日掲載)は、5段階感情コントロールのステップ5「感情の活かし方」をお話しします。
書籍紹介
竹内義晴著 すばる舎 1566円(税込み)
自分の「感情スイッチ」を探し、より実践しやすい感情スイッチの切り替え方を、[気付く→受け入れる→鎮める→切り替える→活かす]の5つのステップで紹介していく
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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