IBM、新世代メインフレーム「IBM z14」を発表 データ保護機能を大幅強化:120億件/日を超える暗号化トランザクション処理能力を提供
IBMが新世代メインフレーム「IBM Z」の最新モデル「IBM z14」を発表。性能向上とともに、アプリケーション、クラウド、データベースにおける全データを「常時暗号化」する機能を備えた。
IBMは2017年7月18日、メインフレーム製品のブランド名を「IBM Z」に変更し、その最新製品「IBM z14」を発表した。
IBM z14は、1日当たり120億件を超える暗号化トランザクション処理能力を備えつつ、企業のセキュリティ責任者やデータセキュリティ専門家と、150社以上の世界中の顧客からのフィードバックを反映し、データ保護能力を特に拡張。アプリケーション、クラウドサービス、データベースにおける全てのデータを、常に、包括的に暗号化する暗号化エンジンを新たに実装した。IBM Zは企業のデジタルトランスフォーメーション時代の信頼の根幹を支えるとともに、以下の3つの領域で顧客のビジネス成長を支援するとIBMは述べている。
徹底したセキュリティを実装
IBM z14は、システムに関わる全てのデータに対して、OSレベルでハードウェア暗号化を施す暗号化エンジンを実装した。現行の暗号化ソリューションにおいて、システムへの負荷が高く、また、暗号化するフィールドの選定や管理に多くの工数がかかっていた喫緊の課題を解消できるとしている。
IBM z14では、暗号化アルゴリズム専用の回路を4倍に増やし、暗号化処理性能を前モデルのIBM z13比で最大7倍に増強。その結果、クラウド規模のバルク暗号化も可能となった。
また、攻撃者の標的になりやすいとされる暗号化キーを保護するための機能もハードウェアレベルで実装する。このハードウェアは侵入の兆候があると同時にキーを無効化させ、その後、安全に復活する機能を提供する。IBM z14のキー管理システムは暗号モジュールに関するセキュリティ要件の仕様を規定するFIPS(Federal Information Processing Standardization:連邦情報処理標準)140の最上位レベルであるFIPS 140-2 レベル4に準拠しており、システムの外にあるクラウドのストレージシステムやサーバ、その他のデバイスやアプリケーション全体を保護する。
機械学習によって価値を創造できる
IBM z14は、前モデルのIBM z13比で約3倍となる最大32TBのメモリを搭載可能とし、分析処理時間の短縮とスループットの増大を実現する。また、IBM zHyperLinkを利用することでSAN(Storage Area Network)の応答時間をz13に比べて10分の1に短縮可能。結果としてアプリケーションの応答時間の短縮にも寄与するという。
これらの性能向上に加えて、2017年2月に発表された「IBM Machine Learning for z/OS」を用いた機械学習により、業務分析モデルの作成、学習、展開を自動化することも可能になる。メインフレームに蓄積された日々のトランザクションで生じる膨大な機密データを、外部システムに移動させずに、IBM z14の内部でリアルタイム分析が可能になる。
クラウド連携による俊敏なサービスの提供
IBM z14では、クラウドサービスやDockerベースのコンテナとの連携もよりスムーズになる。2017年7月現在、多くのクラウド開発者はクラウドコネクターとして用意される「IBM z/OS Connect」を使用して、API(Application Programming Interface)経由で、IBM Z上にある重要なビジネスアプリケーションやデータと連携するサービスを開発しているが、IBM z14では、APIを用いてデータやアプリケーションへアクセスする際の暗号化処理を、x86ベースの代替技術と比べて3倍近い速さで実行できるようになる。また、IBM ZはIBMブロックチェーングローバルデータセンター全体の暗号化エンジンの役割も果たす。
IBMは今回の発表に合わせて、新たなソフトウェアライセンスプラン「Container Pricing for IBM Z」も導入する。Container Pricing for IBM Zでは、新しいz/OSアプリケーションや開発、テスト用のワークロード向けの新プランを用意した他、急増する電子取引需要に向けて、処理に使われた容量単位ではなく、「実際に処理された支払い数単位」の料金オプションも設定する。これらは2017年末までに、z/OS V2.2およびz/OS V2.3で利用可能となる見込みだ。
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