企業のID管理基盤、クラウド&Windows 10時代の3つの選択肢:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(7)(3/3 ページ)
企業のIT環境において、認証やアクセス管理の中心となるID管理基盤は欠かせない重要なインフラストラクチャサービスです。WindowsベースのIT環境では、Active Directoryドメインサービスがその中心として、長く企業を支えてきました。企業におけるクラウド利用の拡大とWindows 10の登場は、従来型のID管理基盤を維持しつつ、新たな選択肢を提供します。
選択肢その3:「ハイブリッド環境」の場合
オンプレミスのAD DSのActive Directoryドメインは、Azure ADとディレクトリ統合したハイブリッド構成が可能です。ハイブリッド構成は、Azure ADの管理ポータルと、ポータルから入手できる「Azure AD Connect」というツールを使用して、比較的簡単にセットアップすることが可能です(画面6、画面7)。なお、オンプレミス側には、AD FSおよびWAPの展開が必要です。
ハイブリッド環境では、次のような機能が実現されます。
- オンプレミスのIDを使用したクラウドサービス(Office 365など)のシングルサインオンアクセス
- オンプレミスのIDを使用したAzureのID関連サービスの利用
- オンプレミスのActive DirectoryドメインでのAzure MFAのサポート(AD FSの多要素認証の1つとして)
- クラウド側でのオンプレミスのIDのパスワードリセット(オンプレミスへのパスレードライトバック)
- Azure ADのデバイス登録機能を利用した、オンプレミスのIDによるワークプレース参加(オンプレミスへのデバイスライトバック)
- ドメイン参加済みWindows 10の自動デバイス登録、およびオンプレミスのAD DSでのWindows Hello for Businessのサポート
最後の「ドメイン参加済みWindows 10の自動デバイス登録」は、Windows 8.1の「ワークプレース参加」を置き換える機能です。オンプレミスのIDを利用したデバイス登録、AD FSの多要素認証の1つとしてのデバイス認証、およびWindows Hello for Businessのサポートは、この方法で実現されます。
また、この環境を構築するには、Windows Server 2016ベースのAD DS、AD FS、WAPを展開する必要があります。ドメイン参加済みWindows 10の自動デバイス登録の環境を構築すると、ドメイン参加時にPINの入力とWindows Hello for Businessのセットアップが要求され、Azure ADと同じSMS、電話、またはモバイルアプリで本人を確認した上で、デバイスがAD DSのディレクトリに登録されます(画面8)。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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