Windows Server 2016の次は「1709」? いえ、2016の次はまだ出ていません!:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(96)(1/2 ページ)
Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709、ビルド16299)が一般向けにリリースされた同じ日に、Windows Serverの最新バージョン「Windows Server バージョン1709」もリリースされました。Windows Serverの最新バージョンであることには違いありませんが、“Windows Server 2016の次のバージョン”というのは正確ではありません。Windows Server 2016向けの「機能更新プログラム」では決してありません。“Windows Server 2016とは別の製品の新(初)バージョン”といった方がいいかもしれません。
Windows Server バージョン1709は、Windows Updateではやってこない
2017年10月17日(日本時間18日未明)に「Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709、ビルド16299)」がリリースされ、Windows Updateによる配布が開始されました。Windows Updateによる配布は段階的に行われているため、その日にすぐバージョン1709の「機能更新プログラム」が来たという人もいれば、まだ来ていないという人もいるでしょう。
同じ日に「Windows Server バージョン1709(ビルド16299)」もリリースされ、Microsoftの「ボリュームライセンスセンター(VLSC)」と「MSDN(Microsoft Developer Network)サブスクライバー」でISOイメージが公開され、ダウンロードが可能になりました。
以下のMicrosoftのアナウンスによると、Microsoft AzureのMarketplaceでも同時に利用可能になったように書いてありますが、実際にMarketplaceに登場したのは2017年11月に入ってからでした(筆者が確認できたのは日本時間2017年11月1日)。
- Windows Server, version 1709 available for download![英語](Windows Server Blog)
導入済みのWindows Server 2016があったとして、Windows Updateを実行しても、Windows 10のようにバージョン1709の機能更新プログラムとして検出されることはありません。第一に、Windows Server 2016とWindows Server バージョン1709は、ライセンス体系とサポートポリシーが違います。第二に、Windows Server 2016とWindows Server バージョン1709はSKU(別製品として扱われる製品単位)が異なります。その意味において、Windows Server バージョン1709は、Windows Server 2016の次のバージョンではありません。
バージョン1709はSKU 145または146のServer Coreインストール
Windows Server バージョン1709(ビルド16299)は「半期チャネル(Semi-Annual Channel)」サービスモデルで提供される、Windows Serverの新しい、初のバージョンです。このサービスモデルは、Windows Serverのソフトウェアアシュアランス(SA)契約に基づいて提供されるものです。
一方、Windows Server 2016は「Long Term Servicing Channel(LTSC)」(旧称、Long Term Servicing Branch:LTSB)として提供される“永続ライセンス”であり、従来と同様、数年ごとに新バージョン(LTSCの次のバージョン)がリリースされる予定です。これにSAを付けることは可能ですが、その場合、SAの有効期間中、LTSCの次バージョンにアップグレードすることもできますし、半期チャネルに移行することもできます。
なお、LTSCは標準で10年の長期サポート(Premium Assurance契約でさらに6年延長して、最大16年)が提供されますが、半期チャネルは各リリース最大18カ月のサポートになります。
- Windows Serverの半期チャネルの概要(Windows IT Pro Center)
Windows Server バージョン1709を導入する方法は2つあります。1つはISOメディアからのクリーンインストール。もう1つは後述する「コンテナベースのOSイメージ」としての導入です。Windows Server バージョン1709のクリーンインストールは「Server Coreインストール」のみで、デスクトップエクスペリエンスの機能は提供されません(画面1)。デスクトップエクスペリエンスは、今後もLTSCバージョンでのみ提供されます。
Windows Server バージョン1709で利用可能な「サーバーの役割」と機能をざっと確認してみたところ、Windows Server 2016のServer Coreインストールとほとんど共通していました。Server Coreインストールでもともとサポートされていない「FAXサーバー」「リモートデスクトップセッションホスト」「MultiPoint Services」は、Windows Server バージョン1709でもサポートされません。その他、「SMB 1.0/CIFSファイル共有のサポート」が既定で削除された状態でインストールされる点が異なるのと、新たに「Windows Subsystem for Linux」の機能が追加されている点が異なります(画面2)。
なお、LTSC製品は「Windows Server 2016」のような固有の製品名を持ちますが、半期チャネル版は「Windows Server バージョンYYMM」(YYは西暦の下2桁、MMは2桁表記の月)と表記することにも注意してください。つまり、「Windows Server 1709」という表記は正式ではありませんし、18世紀(1700年代)に作られた年代物でも、平安時代からの遺物でもありません。そして、LTSC製品であるWindows Server 2016の次期バージョンは「Windows Server 20XX」という名称(XXは未定)でリリースされるはずです。
しかし、半期チャネルのリリースサイクル(1年に3月ごろと9月ごろの2回のリリース)とバージョン命名規則がこのまま進むとなると、過去のLTSC相当の製品との関係で、2020年にはさらにややこしいことになりそうです。2020年には、Windows Server バージョン2003とバージョン2009が出てくるでしょう。ご存じのようにWindows Server 2003は既にサポートが終了しましたが、Windows Server 2012/2012 R2については、2020年でもまだ現役のところが多いのではないでしょうか。
Windows Server 2016のServer Coreインストールから、Windows Server バージョン1709にインプレースアップグレード(アプリケーションとデータを引き継いだアップグレード)は可能かというと、それはできません。「できない」ことは、公式ブログのコメント欄のやりとりからもうかがえますし、実際にやってみて確認しました(画面3)。
つまり、Windows Server 2016の環境からWindows Server バージョン1709の環境に移行するには、「ローリングアップグレード方式」で行う必要があります。
例えば、Hyper-V環境であればホストクラスタを構築し、ノードを1台ずつバージョン1709に入れ替えます。Active Directory環境であれば、バージョン1709のドメインコントローラーを追加して、Windows Server 2016を削除していくという感じです。その他の役割やアプリケーションについても、それぞれ利用可能なローリングアップグレード方式を使用することになるでしょう。ただし、「記憶域スペースダイレクト(S2D)」の機能は、Windows Server バージョン1709から削除されているので、これを移行することはサポートされないようです。
- Release Notes:Important Issues in Windows Server, version 1709[英語](Windows IT Pro Center)
ライセンスの話は別として、「同じServer Coreインストールなんだから、インプレースアップグレードはできるんじゃない?」と思いましたが、そこでふとWindowsの「SKU(Stock Keeping Unit)」番号のことを思い出しました。Windows Server 2016のSKU番号は、以下の連載記事で説明したように、デスクトップエクスペリエンスとServer Coreインストールに関係なく、Datacenterが「8」、Standardが「7」でした。
Windows Server バージョン1709のSKU番号を確認したところ、Datacenterが「145」、Standardが「146」でした(画面4)。
SKU番号が違うということは、「異なる製品(エディション)」という扱いです。Windows 10でいえば、Windows 10 Enterprise(SKU 4)とWindows 10 Enterprise LTSB(SKU 125)でインプレースアップグレードはできません。それが、Windows Server バージョン1709へのインプレースアップグレードができない理由だというのが筆者の考えです。
おそらく、今回、Windows Server バージョン1709をクリーンインストールで導入すれば、次回(2018年3月ごろ)半期チャネルのリリース時にはインプレースアップグレードができるのではないでしょうか(あくまでも個人的な想像です)。その際、Windows Updateで更新されるのか、そうでないのかも気になるところです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「Windows Server version 1709」のダウンロード配布が開始――Microsoft
Microsoftは、Windows Serverの「半期チャネル」による初のリリースとなる「Windows Server version 1709」のダウンロード配布を開始した。コンテナやマイクロサービス関連など、多くの新機能を提供する。 - 「Windows Server version 1709」では、Nano Serverコンテナイメージサイズが80%縮小
Microsoftの公式ブログで、2017年秋に投入予定の「Windows Server version 1709」で注目されるNano ServerおよびLinuxコンテナ機能が紹介された。 - 先行き不安なWindows Update――ボクが2017年10月の更新をスキップした(できた)理由
毎月第二火曜日の翌日(日本時間)は、恒例のWindows Updateの日です。最近は何か問題が起きるのではないか、更新に何時間もかかったり、その上失敗したりするのではないかと、恐怖さえ感じます。さて、2017年10月のWindows Updateは無事に済んだのでしょうか。 - Windows Server 2016の今後の“更新”が怖い
テスト環境として構築したWindows Server 2016の物理サーバと仮想マシン。その一部でWindows Updateやシャットダウンに異様に時間がかかるといった現象に遭遇しました。そんな中、Windows Serverの次期バージョンに関する新方針の発表もあって、いろいろな面で“更新”に対する不安が高まっています(筆者の個人的な感想)。