ソースコードの中に逆襲のネタを見つけたわ:コンサルは見た! オープンソースの掟(5)(2/2 ページ)
契約停止、主要エンジニアの引き抜き、メインバンクへの垂れ込み――大手カーナビベンダー「プレミア電子」は、なぜカーナビソフト開発会社「ジェイソフト」を執念深く追い詰めるのか。
私たちのターンの始まりよ
翌日、三浦はわらにもすがる思いで、「A&Dコンサルティング」の江里口美咲を訪ねた。話を聞いた美咲は、浦和銀行上層部の知り合いに取引停止を待ってくれるように頼んでくれると約束してくれた。彼女はまだ若いが、各方面に顔が利くようだ。
「ほ、本当ですか!」
美咲の言葉に、三浦は目頭が熱くなった。
「でも、いっときの時間稼ぎにしかならないから、その間にこちらも逆襲をしなきゃいけないわね。私たちのターンよ。この間、ボカと、それを使ったバルサのソースコード、それにミドルウェアも送ってくれたでしょ。ソースコード、全部見たわよ」
そこまで言うと、美咲はニッと笑った。
「いろいろと見つかったわ。プレミアに逆襲するネタがね」
「逆襲のネタ! そんなものがあるんですか?」
希望の兆しに表情を明るくした三浦に、美咲は優しく問いかけた。
「三浦さん、GPLって知ってる?」
「何ですか、それは?」
美咲はGPLが何かは説明せずに、意味深なことを言い出した。
「松井さんがね、プレミアがソースコードを独占して好き勝手しないように、ちゃんと仕掛けをしておいてくれたのよ」
「ま、松井が?」
三浦の問いに美咲はほほ笑みながら小さくうなずいたが、具体的なことはやはり何も教えてくれなかった。
「まだ、ちょっと準備が必要だから……そうね、来月の10日ごろにプレミアの木村部長にアポ取ってくれる?」
神様、仏様、美咲さま――前回訪問時は鬼にしか見えなかった美咲が、今日は女神に見えてきた三浦は、そのほほ笑みに会社とボカの運命を託してみようと決意した。
「コンサルは見た!」Season3「オープンソースの掟」は、毎週木曜日掲載予定です
書籍
細川義洋著 ダイヤモンド社 2138円(税込み)
システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」が、大小70以上のトラブルプロジェクトを解決に導いた経験を総動員し、失敗の本質と原因を網羅した7つのストーリーから成功のポイントを導き出す。
※「コンサルは見た!」は、本書のWeb限定スピンアウトストーリーです
細川義洋
政府CIO補佐官。ITプロセスコンサルタント。元・東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員
NECソフト(現NECソリューションイノベータ)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。その後、日本アイ・ビー・エムにて、システム開発・運用の品質向上を中心に、多くのITベンダーと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行う一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。これまで関わったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。2016年より政府CIO補佐官に抜てきされ、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わる
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