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貴社は重大なGPL違反を犯していますコンサルは見た! オープンソースの掟(7)(1/3 ページ)

カーナビソフトのGPL違反を指摘された「プレミア電子」の木村(同社初の女性取締役就任目前)は、事態を打破すべく、リベンジプランを画策するが……。

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コンサルは見た!

連載「コンサルは見た!」は、仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)の筆者が@IT用に書き下ろした、Web限定オリジナルストーリーです。



登場人物

プレミア電子

takeda

武田

カーナビシステムベンダー「プレミア電子」社長。カーナビ市場独占状態を維持するために、カーナビソフト開発会社「ジェイソフトウェア」を子会社にしたい。


kimura

木村美智子

プレミア電子システム企画部長。ジェイソフト子会社化作戦の実行部隊。コンサルタントの江里口に、ジェイソフトのソフト「ボカ」がGPLに基づくオープンソースであることを告げられるが、裁判も辞さぬ覚悟のようだ。

A&Dコンサルティング

misaki

江里口美咲

大手コンサルティングファーム「A&Dコンサルティング」のITコンサルタント。ジェイソフトの三浦社長からプレミア電子とのトラブルの相談を受け、単身プレミア電子に乗り込み、木村と対決する。

前回までのあらすじ

カーナビソフト「ジェイソフトウェア」の三浦社長から、カーナビベンダー「プレミア電子」とのトラブルを相談された「A&Dコンサルティング」の江里口美咲は、プレミア電子の木村部長を訪問し、ジェイソフトがプレミアに提供したカーナビソフト「ボカ」は、GPLに基づくフリーソフトウェアであると告げる。

ジェイソフトは、ボカを基に作ったカーナビ「バルサ」をソースを開示せずに販売したプレミア電子を著作権侵害で訴えることができる、と説明する美咲。しかし、木村は動じることなく応えた――「いいわよ」

第1話 ベンチャー企業なんて、取り込んで、利用して、捨ててしまえ!
第2話 大手の下僕として安定の日々を送るなんて、まっぴらゴメンだね!
第3話 あまっあまのスイーツ社長なんて、大手に利用されて当然よ!
第4話 カーナビの要は使い勝手の良いアプリだ。よそには渡さん!
第5話 ソースコードの中に逆襲のネタを見つけたわ
第6話 ジェイソフトはプレミア電子を著作権侵害で訴えます!


これが資本主義ってものよ

kimura

「いいわ。ご不満なら裁判所にでも訴えればいいじゃない」

 「ジェイソフト」の代理人である「A&Dコンサルティング」の江里口美咲にGPL違反を指摘された「プレミア電子」の木村美智子は、それがどうしたといわんばかりの態度だ。想定外の彼女の返答に、今度は美咲が驚いた。

 「ソフトウェアの著作権に関する裁判なら、私も多少は知ってるわ。長く時間がかかるのよね。対象となるソフトウェアが本当に著作権の対象となるほど独自性や創意工夫のあるものなのか、それを認めさせるだけでも何年もかかるんでしょ?

 ジェイソフトさんの体力で、そんな長い裁判に耐えられるかしら? われわれとの取り引きがなくなれば2年と持たないでしょうね。すぐに泣きついてきて和解ってなるのがオチよ」

misaki

「木村さん、居直るつもり?」

 美咲の眉がつり上がった。今にも木村につかみかかりかねない勢いだ。だが、木村は動じない。ソファに深く背中を預けると、美咲をにらみ返してこう告げた。

 「弱者は強者に魂を売ってでも恭順して保護してもらわなければ生きていけない。これが資本主義ってものよ」

 美咲はしばらく黙り込んだ。木村の、いやプレミア電子という大手企業のあまりの厚顔さにあきれたのだ。この女、何も分かってないんだわ――木村の愚かさにあきれつつ、美咲は低い声で話を続けた。

 本当に怖いのは裁判なんかじゃないのに。それに……問題はジェイソフトからもらったプログラムだけじゃないかもしれないわよ」

 しかし、木村は余裕のある表情を崩さない。「どういうことよ?」と聞きはしたが、興味なさそうだ。美咲は立ち上がると、ソファでふんぞり返る木村を見下ろして通告した。

 「そのうち分かるわよ。予言してもいいわ。プレミア電子はいずれ、自分たちからパラソーテックに支援を頼むようになるのよ」

 「ふん、バカバカしい。ジェイソフトなんて零細企業に一体何ができるっていうのよ」

 そこまで言うと木村は、まるで虫でも追い払うかのようにシッシッと手を振り、美咲を応接室の外に追い出した。

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