「Android 9 Pie」が正式リリース、エンタープライズ機能が大幅に強化:AI活用やセキュリティ強化、多様なユースケースへ対応
Googleが正式発表した最新モバイルOS「Android 9 Pie」では、エンタープライズ機能が大幅に強化されている。
Googleは2018年8月6日(米国時間)、最新モバイルOS「Android 9 Pie」を正式発表した。既に同社の「Pixel」シリーズスマートフォンへのβ版のOTA(無線経由)アップデートを開始した。2018年秋から幅広いデバイスで利用できるようになる見込みだ。
同OSでは、エンタープライズ機能が大幅に強化されている。
Android 9はAI(人工知能)ベースの生産性ツールや、強化されたセキュリティ機能、Digital Wellbeing(健全なデジタル生活)を促進する新機能、さまざまなユースケースのサポートを提供する。
Android 9では、仕事用のアプリは、「All Apps」メニュー内でタブにまとめられており、見つけやすく、個人用アプリとはっきり区別されている。仕事用プロファイルと個人用プロファイルの両方に含まれるアプリについては、仕事用と個人用のどちらで使うかをアプリ内で切り替えることができる。
Android 9ではDigital Wellbeingに重点が置かれており、仕事用プロファイルでも新しいトグル機能により、仕事用のアプリと通知を素早く簡単にオフにできる。
Android 9では、「Dashboard」(ダッシュボード)や「Do Not Disturb」のようなDigital Wellbeingツールも提供される。Do Not Disturbでは、デバイスの使用状況をモニタリングし、視覚的に操作の妨げになるものを全て個別にオフにできる。現在、Pixelデバイスでこうしたツールのβ版を利用できる。
AIを活用してお勧めのアクションを提示
Android 9では、AIベースの機能である「アプリアクション」を導入した。ユーザーのコンテキストに基づいて、お勧めのアクションを表示する機能だ。アプリアクションはAndroidランチャーや、スマートテキスト選択、Google検索アプリ、Googleアシスタント、Playストアの利用時に、お勧めのアクションを表示する。
例えば、従業員が仕事をしていると、Googleドライブのフォルダを共有するよう勧められるかもしれない。
アプリアクションは時間とともに、ユーザーごとのデバイスの使い方を学習し、個人用と仕事用のアプリの両方でアクションを勧める。
専用端末として利用できる
多くのAndroidデバイスが企業において、POS端末やデジタルサイネージ、情報キオスクなど、単一用途で使われている。
Android 9では、管理者はユーザーインタフェース要素(ステータスバーやナビゲーションボタンなど)の表示と非表示を柔軟に設定できる。エンタープライズモビリティ管理(EMM)プロバイダーは、カスタムホーム画面を設定し、選択したアプリだけをそこに表示できる。
Android 9は、複数ユーザーによるデバイスの共有もサポートする。デバイスをキオスクとして構成し、各セッションが終わるたびにユーザーデータを消去するようにしたり、複数の社員向けにセットアップしたりできる。二交代制で昼番勤務者が夜番勤務者にデバイスを渡し、セッションをまたがってデータを保持する一方、セッション自体を常に完全に分離するといったことが可能だ。
セキュリティとプライバシー
Android 9では、スマートフォンが内蔵する耐タンパー性(改ざんしにくさ)のあるハードウェアを利用して、業界をリードするハードウェアセキュリティ機能を実現する。アプリ開発者が耐タンパー性のあるハードウェア(Strongbox)を利用することも可能にした。
さらに主要OSとしては初めて、「Protected Confirmation API」による安全なトランザクションをサポートする。
Googleは、CFI(Control Flow Integrity)などのコンパイラベースの対策により、バグの悪用を困難にするとともに、特定のバグが脆弱(ぜいじゃく)性につながることを防ぎ、Androidプラットフォームのセキュリティを強化している。
Android 9はデフォルトで、デバイスで送受信される全てのデータをTransport Layer Security(TLS)で保護している。プライベートブラウジングのためにDNS-over-TLSをサポートする初のモバイルOSでもある。
IT管理者にもメリットがある。個人用プロファイルと仕事用プロファイルについて異なるPIN(Personal Identification Number)とタイムアウトルールを要求したり、プロファイル間でのデータ共有を厳しく防ぐポリシーを設定したりできる。企業リソースにアクセスするデバイスを安全に識別するために鍵と証明書を扱う新しいAPIも利用できるようになった。
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