「火の鳥」の「ロビタ」を、2018年のテクノロジーで解説しよう:ワタシハ人間デス(2/5 ページ)
スピルバーグが、横山光輝が、そして全世界の子どもたちがあのころ夢見たテクノロジーは、2018年現在どこまで実現できているのだろうか?――映画や漫画、小説、テレビドラマに登場したコンピュータやロボットを、現代のテクノロジーで徹底解説する「テクノロジー名作劇場」、第4回は手塚治虫先生の「火の鳥」だ。
人間臭いロボット「ロビタ」
さて、今回の主役「ロビタ」についてである。
ネタバレになって申し訳ないが、ロビタは、AD2484にレオナとチヒロ(ロボット)の「心」が移植されたロボットである。その後大量生産されるが、それらには全てレオナとチヒロの心のコピーが埋め込まれている。このため、全てのロビタにはとても人間臭い心が宿っている。
ロビタの知能は、レオナとチヒロ(ロボット)の人格を書き写したものであると描写されている。これは現在の科学では到底実現不可能である。だからSFである。
現代の科学では、人間の脳の活動の神経細胞単位での活動が客観的に、それもかなり大まかに「観測」されただけである。観測されたことと解明されたことはレベルが違うことも理解いただきたい。例えるなら、イーサネットケーブルの外側から電磁波を読み取って「こんなデータが流れていたときはこんな電磁波が出ていました」認識する程度である。データが読み出せたわけではない。
人が物事をどのように認識し、どのように記憶し、どのように自己や人格や意識が形成されているのか、今はまだほとんど解明されていない。どのように情報が蓄積され、どの情報が何なのか、まるで分かっていない。
脳からの情報を取り出そうとする試みは学術業界では継続して研究されている。例えば、私の所属する研究所でも過去に頭の中でグーチョキパーを思い浮かべて人型ロボットに出させるという研究が行われていた。これはBMI(Brain Machine Interaction)と呼ばれる研究である。ただし思い浮かべてから手を出すまで20分ほど掛かったそうである。最近では頭の中で思い浮かべた文字をコンピュータのテキストとして読み取れたという報告が、とあるソーシャルネットワークベンダーからあった。
これらは、漏えい電気信号として読み出した脳の活動の外部観測データから「今、脳が考えていることはこうではないかと推測できるかもしれない」というレベルにすぎない。「生涯の経験や記憶を読み出せそうである」という研究はいまだかつてない。そして当分難しいだろう。
人間の人格を形成する「記憶」と経験から形成される「価値観」を読み出しコピーすることは、現代の科学では到底実現不可能である。
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