ママさんの思いが詰まった「うんこボタン」――IoTで実現する赤ちゃんの健康管理:ボタンと電池だけのハードウェア、情報をどう書き込む?(2/2 ページ)
144Labが開発した赤ちゃんの排せつ物を記録するIoT製品「うんこボタン」。144Labにとって初めてのIoT製品かつB2C向け製品ということもあり、開発にはさまざまな苦労があった。製品に詰められた、ある“思い”とは。
ソフトウェアの調整で電池持ちを長くする
単4電池2本で動くうんこボタンの稼働時間をいかに長くするかについてもチャレンジがあった。
「電池の本数を増やせば電池の持ちは長くなりますが、何とか2本に抑えました。最初はUSB給電の案もありましたが、子育てを経験している平山から強い反対がありました。『赤ちゃんのオムツ替えをするのは決まった場所ではないこともあり、うんこボタンを赤ちゃんと一緒に持って移動したい』と」(入江田氏)
電池を長持ちさせるにはソフトウェアの連携が不可欠だった。
「要は、マイコンでイベント処理を終えたらスリープし、ボタンを押したらスリープから起きてイベントを処理する。この処理を徹底させることで、長寿命を実現しています」(入江田氏)
またスリープの方式には、「浅いスリープ」と「深いスリープ」の2種類があり、その採用にも変遷があった。
「浅いスリープは、イベントを処理したら、一時停止の状態でスリープする仕組みです。一時停止なので、イベントが起きたときに、素早くイベント処理に取り掛かれますが、待機中の電力が大きくなってしまいます。『待機中の電力をどう抑えるか』が問題になりました。そこで、今回採用した深いスリープは、イベント処理をした後に一度電源を落としてしまうやり方です。この場合、ボタンを押すと、全ての処理を一から行う必要がありますが、待機電力は大幅に抑えられました」(入江田氏)
OEM展開で、別の用途にも使えるようにしたい
ママさんのことを考え、開発したうんこボタンは、今後さまざまな展開を考えているという。
「まずはWebアプリの機能追加を考えています。データ出力機能が付いていないので、そこを整備したい。また、うんこボタンのOEM展開を考えています。実は最初からOEM展開を視野に入れてうんこボタンを開発していました。できれば、別の用途のボタンとしてカスタマイズして、販売してもらいたいですね」(平山氏)
現に、うんこボタンのクラウドファンディングを行ったときにビジネスの可能性を探る目的で「ハッカーコース」を設け、うんこボタンを用いて自由に開発できる環境を提供した。ハッカーコースに申し込んだ開発者は、VR(Virtual Reality)上にうんこを出現させるためのボタンなど、さまざまな機能を作っているという。
またうんこボタンを作る上で、赤ちゃん関連の製品に関してノウハウを積んだので、BabyTech分野で新たなサービスを考えたいと平山氏は話す。
一方、ハードウェアやソフトウェアを担当した入江田氏は次の製品開発にも精を出す。
「うんこボタンを作る中で、B2C向けの開発ノウハウがたまっただけではなく、効率的な量産体制や取扱説明書の作り方といったノウハウも身に付きました。この知見やグループ会社のソフトウェアやハードウェア、射出成形の力を生かして、ソフトウェアやハードウェアという区別なく、チャレンジングな製品を開発したいです」(入江田氏)
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