「トラック10台を一人で遠隔運転」――5Gは“無人”の未来を現実にするのか?:10年、20年、100年後にどうなっているのだろうか(1/2 ページ)
2020年から「5G」(第5世代移動通信システム)が日本で開始予定だが、その後の未来を考えたことはあるだろうか? 5Gはわれわれ生活にどのような影響をもたらすのか――。
「10年、20年、100年後に私たちの生活や仕事がどうなっているか」を想像できるだろうか? もしかしたら、ドラえもんや火の鳥のロビタ、バビル2世のバベルの塔を守るコンピュータなどが現実になっているかもしれない。
「これからのビジネスには、『世界がどのように変わっていくのか』を見通す力が必要になってきます」と話すのは、Huaweiの王宇峰(アレックス・ワン)氏だ。
「1社だけでは将来を見通すことは難しいかもしれません。そこでHuaweiでは、これからのデジタル世界にどのような変化が訪れるのかを見極めるために、1つの小さい部署を立ち上げました。この部署では、既にさまざまな産業でデジタル化の先駆けとなっている企業と協力しながら、5年あるいはもう少し先の産業界が、デジタルでどのように成長するのかを考えています」
その小さな部署が、王氏がディレクターを務める「ワイヤレスXラボ」だ。そこでは、2020年に日本でも開始予定の「5G」(第5世代移動通信システム)に注目し、既に取り組みを進めている。王氏は、5Gについて、次のように話す。
「5Gによって、新しい時代がスタートします。5Gは、さまざまな新しい想像をかき立て、その想像を現実へと導きます」
ワイヤレスXラボでは、5Gが作り出す未来を、どのように描いているのだろうか。
変わっていくデバイス
デスクトップクラウド
まず、1つ目の未来として王氏が話すのが、デジタルサービスについてだ。
「私たちの生活で身近なデバイスといえばスマートフォンです。このスマートフォンで使うアプリや、画像、音楽のデータのバックアップは、今ではクラウドに保存されることが多いと思います。そのため、スマートフォンをなくしてしまって、新しい端末を使い始めることになっても、ほぼ復旧可能です」
しかし、新しい端末を以前と同様の状態に戻すには、アプリを再インストールしたり、クラウドにバックアップした全ての写真、音楽、動画を端末にダウンロードしたりする必要があり、時間がかかる。もし、こうした時間がネットワークの強化によって、なくなったらどうなるだろう。
「そこでワイヤレスXラボが考えているのが『デスクトップクラウド』です」
デスクトップクラウドは、仮想化した「端末」がデータとしてクラウド上に存在し、その端末データを手元にあるハードウェアで使うというものだ。あくまでもハードウェアは、仮想化した端末を表示するだけの役目しかないので、ハードウェアが変わってもネットワークさえつながれば、仮想化した端末を使い続けることができる。これには、速い回線と安定してつながるネットワークが必要になる。
「今のスマートフォンのハードウェアは形や性能が似たり寄ったりです。しかし、デスクトップクラウドが浸透することで、さまざまな形のハードウェアが登場すると期待しています」
クラウドゲーム
デスクトップクラウドの次にワイヤレスXラボが取り組みたいデジタルサービスが、「クラウドゲーム」だ。現在、ユーザーがいわゆる「家庭用ゲーム」を遊ぶ場合、ソニーや任天堂、Microsoftなどが販売するゲーム機や、そのゲーム機に対応したソフトを購入しなければならない。
「ゲーム好きの友人は、各社のゲーム機を取りそろえていますが、普通の方にはどれも高価で、全てそろえるのはなかなか難しいでしょう。また遊びたいゲームに合わせて毎回、ゲーム機の切り替え、コードやその他の設定をする必要があり、これは時間がかかる上に不便です」
そこで、ワイヤレスXラボが考えているのが、全てのゲーム機をクラウド上で仮想化する方法だ。遊びたいゲームに合わせて、仮想化したゲーム機を借りて、使った分だけレンタル代を支払うのだ。これにより、ゲーム機を買いそろえる必要がなくなる。
「ゲーム機を意識せずに、遊びたいゲームを遊ぶことが重要です。もしプレイステーション 2のゲームを遊びたければ、クラウド上に仮想のプレイステーション 2の領域を割り当てればいいのです。ネットワークが進化し、テレビの電源をつけて1秒で遊びたいゲームを遊べるようになれば、ゲーム産業は大きく変わっていくのではないでしょうか」
クラウドVR
さらに、クラウドゲームの次の一歩として、「クラウドVR(仮想現実)」があるという。
「われわれは将来、スマートフォンに次いで、VRが人間とデジタル世界の接点になると考えています。しかし、現在のVRはまだ本格的に成長しているとは思っていません。なぜなら、ウェアラブル端末を身に着けると不思議な世界を体験できるものの、そのVRの世界には自分しか存在しないからです」
現在のVRのほとんどは、現実で隣に人がいる状態でウェアラブル端末を装着すると、デジタル世界でその人が見えなくなってしまう。VRを通じてデジタル世界で複数人がつながれるようになることで、VRは次のステップに進めるという。
「しかし、複数人が同じ場にいるような広い範囲でつながったデジタル世界を実現するには、その入口を作り直す必要があります。そのために必要なのが『WANが実現する次世代クラウド』『低遅延、高帯域接続を実現するネットワーク』『きれいな映像を表示するVRのディスプレイ』です」
これまでのVRは有線接続が主流で持ち運びができず、主に自宅で楽しむものだった。そこで、VRを無線化して、気軽に持ち運べて、複数人で楽しめるものに変えていくことが重要になるという。
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