2018年の災害では34.2%で「BCPが機能した」、NTTデータ経営研究所が調査:事業継続できますか
NTTデータ経営研究所は、「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査」の結果を発表した。「平成30年7月豪雨」と「平成30年北海道胆振東部地震」の2つの災害でBCPが機能したと回答した割合は、東日本大震災と比較して1.7倍に増加した。
NTTデータ経営研究所は2019年3月8日、「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」の結果を発表した。
今回の調査では、BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)を発動した結果についても着目し、2018年に発生した「平成30年7月豪雨」(以下、西日本豪雨)と「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」の2つの災害について、発動したBCPが想定通りに機能したかどうか、問題があった場合はその理由についても調査した。
西日本豪雨と北海道胆振東部地震で、被害が大きかった地域に拠点がある企業のうち、BCPを発動した企業は、西日本豪雨で21.7%、北海道胆振東部地震で28.5%だった。そのうち、発動したBCPが「期待通り機能しており、特段問題は無かった」と回答した割合は約6割だった。
東日本大震災当時よりもBCPが1.7倍機能した
第1回調査では、東日本大震災でBCPが機能したと回答した割合が34.2%であり、今回の調査では1.7倍に増加したことになる。NTTデータ経営研究所では、東日本大震災で得られた教訓が生かされ、事業継続への取り組みが進んだ結果が表れていると分析している。
一方、BCPが想定通り機能しなかった原因として多かった回答は「手順や対策を定めていたが、予期せぬ作業、対応が発生した」だった。西日本豪雨の場合は、「そもそも手順や対策を定めていなかった」と回答した企業も散見された。
これらについてNTTデータ経営研究所では、BCPを策定しても事業継続のための対策について不十分な企業が多く、西日本豪雨の影響を受けた企業では河川の広域氾濫や土砂崩れを想定した対策をとっていなかったと推察している。
中小企業のBCPに難あり
今回の調査結果を見ると、BCPの策定状況については、「策定済み」と回答した企業は43.5%、「策定中」は21.4%だった。従業員数別で見ると、「策定済み」または「策定中」と回答した割合の合計は、5000人以上の企業の約9割に対して、99人以下の企業は約4割だった。
99人以下の企業では、「策定予定なし」と答えた割合が23.9%で最も高く、NTTデータ経営研究所では、規模の小さい企業では、そもそも策定自体を諦めてしまっていると見ている。
地域別で見ると、「策定済み」と「策定中」の割合の合計は関東が最も多く68.9%。最も少ないのは北海道で、51.2%だった。北海道では、「策定済み」の割合が、2017年1月の38.1%から2018年12月時には26.8%に低下した。
NTTデータ経営研究所はこの点について、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震を受けて、策定していたBCPの見直しが図られている途中だと推察している。また九州沖縄地方では、「策定済み」の割合が、東日本大震災前の7.0%から2018年12月には約5倍となる33.9%に増加した。この点について同社は、2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」を受けて、事業継続への取り組みが進んだ結果だと考察している。
BCPの策定状況を、第1回調査から今回の調査までで比較すると、東日本大震災後に実施した第2回調査では策定済み企業が第1回の25.8%から40.4%に大きく増加したものの、近年は「策定済み」や「策定中」と回答した企業の割合に大きな変化は見られなかった。
地震リスクを重要視
次に、BCPの策定状況を「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者に、想定している具体的なリスクを尋ねた。最も多かった回答は「地震(主として直下型地震)」で、74.3%。次いで「地震(東海・東南海・南海連動地震などの超広域地震)」の62.6%で、地震を想定してBCPを策定している企業が多かった。これに対して火災や停電、システムダウンなど、自社設備の停止リスクを想定している企業は4割程度だった。
想定するリスクの推移を見ると、「地震以外の自然災害(風水害など)」を想定している企業は前回調査から約5ポイント増えて54.0%。「鳥、新型インフルエンザなどによるパンデミック」への想定は、第1回調査(2011年7月)の39.7%から今回は26.4%に減少した。
BCPの課題は外部からの調達と供給
一方、BCPを策定した企業でも、BCPに対して課題を認識している企業が多いようだ。53.1%の企業が、何らかの課題があると回答した。最も多かったのは自社単独でのBCP策定自体に限界を感じている企業で、具体的には「外部からの調達、供給ができなければ事業を継続できない」と考えていた。
こうした外部連携の対象として企業が最も多く考えているのは、「密接な取引関係のある企業(調達先や納入先など)」。外部との連携を実現させるための対応策では、密接な取引関係のある企業との「危機発生時における情報(自社内の被災状況や周辺地域の被災状況など)の共有」が最も多かった。
今回の「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査」は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に、企業の事業継続に対する取り組みや意識を調べたもの。NTTデータ経営研究所が2011年7月から継続して実施している。今回は、2018年12月6〜15日に実施し、有効回答者数は1019人だった。
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