@ITが運営するコラム(ブログ)コーナー「エンジニアライフ」では、現役エンジニアたちが日々、思うこと、考えたことをポストしています。
本稿は、エンジニアライフにポストされたコラム(ブログ)や小説の中から印象的なものを、(編)の独断と偏見でピックアップして振り返ります。2019年3月は、エンジニアライフ人気ナンバーワンの覆面小説家「リーベルG」さんが、話題の事件を題材に小説を書きました。
ブラクラ補導は妥当だったのか?
2019年3月4日、不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで、13歳の女子中学生が兵庫県警サイバー犯罪対策課に補導され、39歳の男性と47歳の男性がそれぞれ家宅捜索を受けました。
「JavaScriptによる無限ループ」を使ってポップアップが繰り返し表示されるサイトのURLをネット掲示板に貼り付けたことが「不正指令電磁的記録供用」と見なされた本件、「ブラクラ(ブラウザクラッシャー)でもウイルスでもないのに補導は行き過ぎでは」「ネットに詳しくない人にとってこの動きはウイルスも同然だから、いたずらではすまされない」などの議論がネット上で交わされました。
タカミス先生、立ち上がる
この状況を受けて立ち上がったのが、産業技術総合研究所の高村ミスズさん、通称「タカミス先生」です。
タカミス先生は、「Librahack事件」を題材にしたフィクション小説「鼠と竜のゲーム」などで活躍したセキュリティエンジニア(架空の人物。モデルはたぶんいません)です。
「高村ミスズの事件簿 ブラクラ篇」と題された今回のシリーズは、「事件の裏に製品を売り込みたいセキュリティソフト企業がいた」という架空の設定で話が進みます。
「さあ、今週も始まりました。ピーター斎藤のイマトピザニュース! 今日もたくさんのアクセス、ありがとー! このコーナーはネット界隈(かいわい)でバズってるバズってないに関係なく、元SEのボクが興味深いなーとか、これどうなの、とか思ったり感じたりした話題をテーマに、ゲストと議論する30分です」
「はじめまして」ユカリが細い手を差し出した。「エマちゃんね?」ユカリが掛けているスマートグラスのカメラとマイクを通して、丸顔でショートボブの女の子が、ユカリの手をおずおずと握り、小声で「よろしくお願いします」と答える様子が届いた。
ピーター斎藤は、どこか後ろめたそうに顔をそむけ、横目で私を見ていた。ネットテレビのカメラに撮られているときの陽気で自信満々な表情とは真逆だ。どちらが本当の姿なのだろう、と少し興味が沸いたが、今は心理学者のまねごとをやっている場合ではない。
「さあ、今週も始まりました。ピーター斎藤のイマトピザニュース! 今日もたくさんのアクセス、ありがとー! このコーナーは……」
ピーター斎藤は、いつもと同じように陽気な声で番組を紹介している。私はそれを聞き流し、司会者席ではなく観覧席の方を見た。
作者の「リーベルG」さんは、最終回の末尾に本作の執筆を決意したいきさつを記しています。
ネットを使う仕事をしているエンジニアにとって、誰かが不快に思ったというだけで恣意的に法が適用されるのであれば、今回の件は全く人ごとではなく、薄ら寒い恐怖さえ感じさせられる出来事です。技術の進歩に法整備が追い付かないのは、やむを得ない側面もありますが、だからこそ運用する側に慎重さが求められるのではないでしょうか。
既に多くの著名な方々が声を上げておられますが、「この手の問題に声を上げる人が多過ぎて困ることはないだろう」と考え、小説の形で発言することにしました。どんな形でも、まず声を上げる、ということは大切なことです。
小説、SNS、オフライン、手段はいろいろあります。おかしいと思ったことに声を上げる。それは、人や社会のためだけではなく、自分を守るためにも、必要な行動となるでしょう。
技術の問題か、運用の問題か
本編の小説と同じくらい興味深いのが、コメント欄です。
特に最終回のコメント欄では、「元の事件は技術の問題かor法の運用の問題か」など、熱い議論が沸騰しました。
これらの熱い議論を受けて、エンジニアライフのコラムニスト「ちゃとらん」さんも、ご自身の見解を書きました。
ちゃとらんさんは、小説コメント欄の「議論してる匿名」さんと同じく、事件は「法律とその運用の問題」だと考えます。詳しい論旨は、ぜひリンク先でご覧ください。
タカミス先生のファンになったら
ここからは、ほぼほぼ宣伝です。
「ブラクラ編」でタカミス先生のファンになった方は、彼女が活躍するその他のシリーズもお楽しみください。
ユカリちゃんやキサラギも登場する「漫画編」もあります。
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リーベルGさんの小説「罪と罰」は、ツギクルブックス大賞に選ばれ、書籍化されました。
エンジニアライフの小説は、PressEnter■だけではありません。湯二さん執筆の「スーパー総務・桜子」も絶賛掲載中です。
エンジニアのエンジニアによるエンジニアのためのコラムや小説のポータル「エンジニアライフ」は、今日も元気です。本記事を読んで興味を持っていただけましたら、どうぞお立ち読みにきてください。
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