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Windows 10トラブル“未”解決事例──スタートメニューに現れた「謎のショートカット」は見ないこと、見えないことに山市良のうぃんどうず日記(158)

Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903)にアップグレード後、スタートメニューに出現した「ms-resource:AppName/Text」という謎のショートカットが気になって仕方がないというユーザーは少なくないと思います。その正体とは? そしてこのショートカットをどうするべきなのか?

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山市良のうぃんどうず日記

謎アプリ「ms-resource:AppName/Text」のショートカット、クリックしても無反応

 2019年5月のリリースから2カ月以上経過し、Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903)にアップグレードを済ませたユーザーは多いと思います。「Windows 10」の使用暦が長く、アップグレードを繰り返してきたユーザーの中には、Windows 10 バージョン1903にアップグレード後、スタートメニューに“不審なショートカット”が突如出現したことに気が付いた人は多いと思います。

 “不審なショートカット”とは、スタートメニューの「その他」に分類された「ms-resource:AppName/Text」という名前のアプリのショートカットです(画面1)。

画面1
画面1 Windows 10 バージョン1903にアップグレード後に出現した謎アプリ「ms-resource:AppName/Text」のショートカット

 このショートカットをクリックしても何も起きませんし、マウス操作で削除することもできません。できることはスタートへのピン留め、タスクバーへのピン留め、ドラッグ&ドロップ操作によるデスクトップなどへのショートカットの貼り付けくらいです。このショートカットがWindows 10 バージョン1809以前にもあったかどうかは確認していません。以前から謎ショートカットとして存在していた可能性もあります。

 この謎の「ms-resource:AppName/Text」ショートカットが出現する明確な条件は定かではありませんが、Windows 10 バージョン1903にアップグレードした全てのPC/ユーザーに出現するわけではありません。

 筆者の周辺にあるWindows 10 バージョン1903にアップグレードした物理PCの4台のうち、最近購入したPC(Windows 10 バージョン1809プリインストールPC)を除く3台のMicrosoftアカウント/ローカルアカウントのユーザー環境で出現しました。Windows 10 バージョン1809にこのショートカットが存在しなかったことは、この問題に気が付いた後にアップグレードしたPCで目視確認しています。

 問題の発生した3台のうち1台には、もう1つの謎アプリ「ms-resource:appDisplayName」のショートカットもありました。こちらは「アンインストール」など、コンテキストメニューの項目が多くなっていますが、「アンインストール」をクリックして実行してもスタートメニューに変化はありませんでした(画面2)。

画面2
画面2 別のPCではもう1つの謎アプリ「ms-resource:appDisplayName」のショートカットも出現。アンインストールを実行してもスタートメニューに変化なし

 先に言っておきますが、このショートカットを削除しようと試行錯誤しても徒労に終わると思います。最悪の場合、現在のWindows 10の利用環境を破壊してしまうことにもなりかねません。謎ショートカットの存在が気になり、削除したくてたまらない人もいると思いますが、スタートメニューの一番下の「その他」までスクロールしないと見えないものですし、クリックしても害のないものです。

 問題の解決を試みるよりも、見て見ぬふりをするのが一番です。おそらく、謎ショートカットの原因は、Windows 10のバグです。「フィードバックHub」を通じてこの問題のフィードバックに対する投票を増やし、今後の「品質更新プログラム」や将来のバージョンで解決されることを期待して待ちましょう。

時(バージョン)を超えて現れた旧「Mixed Realityポータル」の亡霊

 害がないといわれても、その根拠を知りたいという人はいると思います。謎ショートカットの正体を見つけるヒントは、デスクトップにショートカットをドラッグ&ドロップしてそのプロパティを開くと確認できます。

 「ms-resource:appDisplayName」ショートカットのリンク先は「Microsoft.Windows.HolographicFirstRun_cw5n1h2txyewy!App」で、「ms-resource:appDisplayName」ショートカットのリンク先は「Windows.ContactSupport_cw5n1h2txyewy!App」でした。これらは「ストアアプリ」とも呼ばれるユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリを起動するためのショートカットであり、どちらもWindows 10の過去のバージョンにプリインストールされていたものです。

 「Microsoft.Windows.HolographicFirstRun_cw5n1h2txyewy」は、Windows 10 バージョン1709にプリインストールされていた旧「Mixed Realityポータル(Mixed Reality Portal)」アプリのパッケージファミリー名です。現在の「Mixed Realityポータル(Mixed Reality Portal)」アプリは、Windows 10 バージョン1803で「Microsoft.MixedReality.Portal」(パッケージファミリー名:Microsoft.MixedReality.Portal_8wekyb3d8bbwe)に置き換えられました。

 「Windows.ContactSupport_cw5n1h2txyewy」は、Windows 10 バージョン1703まであった「サポートに問い合わせる(Get-Help)」アプリのパッケージファミリー名です。現在は「問い合わせ(Get help)」アプリの「Microsoft.GetHelp」(パッケージファミリー名:Microsoft.GetHelp_8wekyb3d8bbwe)に置き換えられています。

 置き換えられた新しいアプリのショートカットは、スタートメニューの「M」─「Mixed Realityポータル」と、「た」─「問い合わせ」にあります(画面3)。理由は分かりませんが、バージョンを超えて過去のアプリのショートカットがWindows 10 バージョン1903で「ms-resource:AppName/Text」や「ms-resource:appDisplayName」として出現したのです。リンク先は既に存在しないのですから、そこにショートカットが存在するというだけで、特に害はありません。

画面3
画面3 謎のアプリは、存在しないアプリへのショートカット。現在は更新バージョンではなく、別パッケージの新しいアプリに置き換えられた

筆者が/あなたが求めている、有効な解決策は存在しない

 この問題は、Windows 10 バージョン1903が正式にリリースされる以前、Insider Previewビルドのころから指摘されていました。以下のMicrosoft Communityのスレッドで、ショートカットを削除するさまざまな方法がやりとりされてきましたが、2019年6月末時点で有効な解決策は見つかっていません。

 この問題は、システムファイルの整合性の修復(sfc /scannow)やコンポーネントストアの修復(DISM.exe /Online /Cleanup-Image /RestoreHaelth)といった、Windows 10のよく紹介される一般的なシステム修復手段では決して解決できません。

 また、ショートカットに関連するアプリの「AppX」パッケージは、Windows 10の過去のバージョンでシステムから既に削除されているため、「DISM」コマンドの「/Get-ProvisionedAppxPackages」や「/Remove-ProvisionedAppxPackage」オプション(上記のやりとりではDISM++ツールが利用されています)、あるいは「Get-AppxPackage……/Remove-AppxPackage……」コマンドレットによる組み込みアプリの再インストールといった方法では、この問題は解決できるはずもありません。

 この問題は新規作成したローカルアカウントでは発生せず、Windows 10 バージョン1903をクリーンインストールした場合も発生しないことが分かっています。また、問題のアプリが既に存在しないWindows 10 バージョン1803以降のプリインストールPCを、Windows 10 バージョン1903にアップグレードした場合も発生しないと思います。「PCのリセット(このPCを初期状態に戻す)」を実行すれば、現在のユーザーの問題を解消できることも実際に確認しました(画面4)。

画面4
画面4 新規作成したローカルアカウントには謎のショートカットは存在しない(画面左)、「PCのリセット」で問題を解消できるが、長く使用している環境の場合は失うものが多過ぎる(画面右)

 しかし、「PCのリセット」は個人設定とデータを維持することは可能ですが、後からインストールしたUWPアプリ、デスクトップアプリが削除され、他社のウイルス対策製品は「Windows Defender」に置き換わるという制限があります。

 なお、新しいローカルアカウント(管理者)の作成と「PCのリセット」は、スタートメニューの問題解決を試みる方法として、以下のサポート情報でも説明されています。

 筆者や多くのユーザーが望んでいることは、単純にスタートメニューから問題のショートカットを“削除したいだけ”だと思います。つまり、以下の要件を崩すような、アカウントの再作成や「PCのリセット」、新規インストールは望んでいる解決策にはならないでしょう。

  • 現在利用中のユーザー環境をそのまま維持したい
  • 現在利用中のOS環境をそのまま維持したい(OS環境とは、OSのバージョン、システム設定、インストール済みのUWPアプリ、ウイルス対策、デスクトップアプリとその設定など)

 上記の要件を満たしながら解決できるとすれば、先に指摘したようにWindows 10 バージョン1903の品質更新プログラム、または将来のバージョンで解決されることを期待するしかないのです。筆者は物理PCの1台で有効そうな解決策の1つを試してみた以外(結果は未解決)、問題のショートカットは単純に無視することにしました。

 その後、幸い(?)にも、仮想マシンの評価環境で同じ問題が再現したので、その仮想マシンのチェックポイントを作成し、さまざまな解決策を試してみては、元に戻す作業を何日か続けましたが、結局、望んでいる解決策を見つけることはできませんでした。

 似たような謎のショートカットが出現する問題は、過去にも別のアプリで発生したことがあったようです。その問題の解決方法として、アプリに関連するレジストリを全て削除してしまうという強引な方法を紹介している人を見かけましたが、決して試してみようなんて思わないでください。関連するレジストリはさまざまな場所に多数存在しますし、操作を誤るとシステムを破壊してしまいます。

 筆者が仮想マシン環境で調査した範囲では、スタートメニューのUWPアプリのショートカットは、デスクトップアプリや管理ツールのショートカット(.lnk)とは異なり、「%PROGRAMDATA%(%ALLUSERSPROFILE%)\Microsoft\Windows\Start Menu」(全ユーザー共通)や「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu」(ユーザーごと)には登録されていません。

 スタートメニューのUWPアプリのリストは、「タスクマネージャー」の「プロセス」タブでは「開始」、「詳細」タブでは「StartMenuExperienceHost.exe」として実行中の「Microsoft.Windows.StartMenuExperienceHost」アプリ(パッケージファミリー名:Microsoft.Windows.StartMenuExperienceHost_cw5n1h2txyewy)によってサインインごとに生成されているように見えました(画面5)。

画面5
画面5 Windows Sysinternalsの「Process Monitor(Procmon.exe)」を使用して「開始」アプリを強制終了(自動的に再開)すると、スタートメニューの生成過程を追跡できる。問題のショートカットの起源は「State-Repository-Machine.srd」の中にあるようだ

 ちなみに、「Microsoft.Windows.StartMenuExperienceHost」アプリは、Windows 10 バージョン1809以前には存在しない新しい組み込みアプリです。

 スタートメニューのUWPアプリのリスト生成に関わっているであろう、アプリケーションのリポジトリ、パッケージ、廃止(EndOfLife)アプリの情報は、ファイルシステムやレジストリのさまざまな場所に分散しています。そして、ユーザーにひも付いた問題のショートカットの起源は、「State-Repository-Machine.srd」というデータベースにあるところまでは追跡できました(画面6)。

画面6
画面6 「State-Repository-Machine.srd」のコピーをあるツールで開いてみると、問題のユーザー(この例では「5」)だけに「Microsoft.Windows.HolographicFirstRun」アプリがひも付いているように見える

 根本的に問題を解決するには、データベースに登録されたユーザーとアプリのひも付けを何とかする必要がありそうです。決して、レジストリの操作だけで何とかなるものではないということだけは想像できます。

 「ms-resource:……」の謎ショートカットは、いつか解消されることを期待して、放置して無視すること――。壊れてもすぐに戻せる仮想マシン環境でいろいろ試してみた筆者の結論です。


 その後、2019年7月初めにMicrosoft Communityのスレッドに、「State-Repository-Machine.srd」から該当エントリを削除することで解決を試みるスクリプト(Python 3)と手順が投稿されました。

 仮想マシン環境で試してみた限り、確かにショートカットを削除できました。しかし、筆者は非公式のこの方法を実運用環境で試すつもりはありません。このためだけに、今後、使う予定がないかもしれない「Python 3」を導入するのは大げさ過ぎますし(Windows 10 バージョン1903ではMicrosoft Storeから簡単に導入できるようになりましたが)、SYSTEM権限でなければ行えないコマンドライン操作は、一般ユーザーにとっては難易度が高いと思うからです。

 非公式の回避策が、別の問題を生じさせる原因になるリスクもあります。筆者が、そして多くの人が求めているような解決策ではないと考えています。もし、本稿を読むまで謎ショートカットの存在に気付いていなかったとしたら、気付かせてしまって申し訳ありません。気付かなかったことにしてください。

最新情報(2019年9月1日追記)

 日本時間8月31日にWindows 10 バージョン1903向けに提供されたオプションの累積更新プログラム「KB4512941」には、「ms-resource:AppName/Text」の問題に対処しているという説明がありますが、筆者の問題の環境にこの更新プログラムをインストールしても、「ms-resource:AppName/Text(およびms-resource:appDisplayName)」アイコンは依然として残っています。(筆者の)問題は解決されていません。

Addresses an issue that may cause the name of an unsupported application to appear as default text, such as “ms-resource:AppName/Text” in the Start menu after upgrading the operating system.



最新情報(2019年9月26日追記)

 2019年9月17日にサポート情報の記述が以下のように変更されました。問題の修正は、新たにアップグレードした場合についてのものであり、既にアップグレードされた環境から「ms-resource:AppName/Text(およびms-resource:appDisplayName)」アイコンを削除するものではありません。

Prevents the appearance of blank tiles in the Start menu when you upgrade to Windows 10, version 1903 from any previous version of Windows 10. These blank tiles have names such as "ms-resource:AppName" or "ms-resource:appDisplayName". However, if you have already upgraded to Windows 10, version 1903, installing this update will not remove existing blank tiles.



筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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