早期退職に向いている人、いない人:仕事が「つまんない」ままでいいの?(61)(3/4 ページ)
大企業の早期希望退職者の募集が盛んです。でも、その早期退職、本当に大丈夫? それしか手はないの?
「会社の看板」の影響力
「会社の看板」の影響力も考えておきたいところです。
私は今、NPO法人を経営しながら、サイボウズというIT企業でも働いています。複業をはじめたのは2年前。10年ぶりに「会社の看板」でも仕事をしています。
久しぶりに「会社の看板」を得て実感するのです。「看板って、スゲーな」と。例えば、個人の「竹内義晴」の場合、初めて会う人の印象は「あんた、誰?」です。でも、「サイボウズの」という会社の冠がつくだけで、周りの見る目が全然違う。信用度が「ガーン」と上がるのです。「これほど違うものか」と驚きました。
この経験を通じて、こう思いました。「会社の看板って、怖いな」「人の意識を肥大化させるな」「気を付けないといけないな」と。
これは、私に今まで「会社の看板」がなかったからこそ感じられた驚きです。しかしサラリーマンの場合は、「××会社の○○さん」のように、信用は個人と会社がセットになっているのが一般的です。「会社の影響力は強い」ことを頭では理解できても、実感までできている人は、それほど多くないのではないでしょうか。
「会社の看板」が外れたとき、社外の市場評価がいかほどか……。早期希望退職を検討する際には、「看板なしでも信用してもらえるか」をよくよく考える必要があります。
自分の市場評価を知る簡単な方法
社外でも市場評価を知るためには、どうすればいいのでしょうか? 最も簡単な方法は、「転職サイトやエージェントに登録する」ことです。
転職サイトやエージェントに登録する際には、履歴書や職務経歴書を書きます。この作業を通じて「今まで、何をしてきたか」「何ができるか」を整理できます。
全てを登録すると、条件に合ったオファーが届きます。この数や内容で、「自分の市場価値はどのぐらいか?」「自分は必要とされているか」が、何となく分かります。
早期希望退職をするにしてもしないにしても、現状の市場価値を知ることに、得はあっても損はありません。登録するだけならお金はかかりませんので、トライしてみてはいかがでしょうか?
そして、もし「市場価値は低いかも」と思ったなら、安心して生活できるうちに、今の環境でできることをやりましょう。今の会社で問題に感じることはありませんか? そこに、あなたの経験を生かせそうなこと、ありませんか?
社内で分からなければ、意識的に社外に目を向けるのもいい方法です。社会を見渡せば問題ばかりです。業務経験に限らず、NPOや地域活動など、社外の活動に参加するとできる縁や信用もあります。
ここまでお読みになって、早期退職世代は「アラフィフの今から? 面倒だよ」と思うかもしれません。また、「それは分かっている。でも、何から始めたらいいか分からないんだよ」という人もいるでしょう。実際のところ、そんなものだと思います。もし退職、起業した経験がなければ、私もそう思うはず。
でも、若い世代と違って、私たちの人生は中盤です。「どうすればいいか教えてください」と誰かに答えをすがりたくなる気持ちをグッとこらえて、そこは、自分で考えたい。10年後を想像してみてください。何もしなければ、もっと面倒なことになるはずです。今のうちに、もうひとあがきしませんか。一緒に。
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