SI業界のエンジニアが陥りがちな「3つの地獄」:ツユダク、ネギダク、ご飯少なめ(2/4 ページ)
ITエンジニアが足りない、でも希望者は多い、でもいつまでたっても足りない――エンジニアはなぜ、いつまでも不足し続けているのでしょうか。
エンジニアを成長させない「3つの地獄」
結論からお話しします。エンジニアが成長できない理由は、SI業界約2万社の多くが「エンジニアを成長させない3つの地獄」のどれかだからです(イメージを明確にするために地獄という表現をしますが、会社が悪いわけではない……というお話は後ほど)。
3つの地獄を紹介します。
1 運用ループ地獄
プログラミングの必要がない、エンジニアでなくてもできる、運用保守作業を延々と繰り返す地獄
2 スキルが上がらない塩漬け地獄
1つの案件から抜け出せず、その案件で使うスキルしか身に付かない地獄
3 やりたいことができない地獄
得たいスキルを身に付けられる案件に永遠にたどり着けない地獄
未経験からエンジニアになろうという人が捕まりがちなのが「1」、そこから頑張って抜け出しても「2」「3」の地獄が待っています。その結果、7割のエンジニアがふ化せず終わってしまいます。
次に、なぜこのような地獄が生まれてしまうのかをお話ししましょう。
3つの地獄を産んでしまう「営業の力学」
「1」「2」「3」の地獄が産まれる理由は、会社に成長できる案件がないためです。成長できる案件がないのは、営業が取ってこないから……ですが、それには理由があります。
SI業界の営業の多くは、以下3つの仕事に追われています。
A トラブル対応
B プロジェクトに必要なスキルを持つエンジニアの提案
C エンジニアが希望するスキルアップ案件探し
「A」と「B」は営業としてやらなければいけないことで、ほぼこの2つで手いっぱいになります。特に「A」にかける工数は、営業1人が担当するエンジニアの人数が増えれば増えるほど多くなり、20人以上になると「A」だけでいっぱいになります。実際、「A」「B」だけで毎日終電まで働くSI業界の営業は少なくないようです。
そのため、後回しにせざるを得ないのが「C」です。「A」「B」に忙殺されているため、エンジニアが希望するスキルアップ案件を探す時間と余裕が営業にはありません。
エンジニアの希望通りの案件を見つけるとなると時間がかかり、他の仕事に支障が出ます。さらに、今エンジニアが働いている案件を抜けさせるのは至難の業です。下手をすれば、クライアントとの関係性が崩れてしまう恐れもあります。「C」は営業にとってリスクしかない仕事になりがちです。
この悪循環は営業を責めても解消しません。残された道は一つ、エンジニアが自身で地獄を見極め、回避する視点を持つことです。
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