SI業界のエンジニアが陥りがちな「3つの地獄」:ツユダク、ネギダク、ご飯少なめ(3/4 ページ)
ITエンジニアが足りない、でも希望者は多い、でもいつまでたっても足りない――エンジニアはなぜ、いつまでも不足し続けているのでしょうか。
3つの地獄の見極め方
3つの地獄は、求人広告や紹介会社の情報では見分けがつきません。見極めポイントは他のところにあります。
1「運用ループ地獄」の見極め方
未経験者が一番ハマってしまう「運用ループ地獄」の正体は、プログラミング経験が不要な運用案件をメインで扱っている会社です。未経験者を大量に集め、運用案件に送り込んでいます。
開発案件希望なのに、営業から「未経験だからまずは運用案件で経験を重ねて、慣れたら開発できる案件にいこう」と言われ、運用案件に入る。そして約束はほごにされ、同じ案件に閉じ込められっぱなしになる……という話が多いのです。まさにアリ地獄の運用ループ地獄です。
就転職の際にこの地獄の見極めポイントは、2つです。
a 毎月大量採用している
常に求人を出していて「未経験大歓迎」「即日内定」とアピールする会社は地獄である可能性が高いです。それが大手で、研修が充実していて、Webサイトがしっかりしていたとしても、実は巨大な運用ループ地獄である可能性があります。証拠に、こうした大手出身の転職者ほどスキル、開発経験が伴っていないことがよくあります。
b 売上高÷社員数=単価が低い
「a」で見分けがつかない場合は、社員1人当たりの売上単価を算出してみてください。1000万円以下の会社は、運用ループ地獄の可能性が高いです。エンジニアの単価が低いということは、報酬が安価な運用案件しかやっていない可能性が高くなるからです。
開発案件もやっている会社は少なくとも売り上げ1000万以上、2000万円以上になると優良な開発案件がそろった会社である可能性が高くなります。Webサイトに売り上げが記載されていない場合は、直接聞いてみてください(教えてくれなかったり、はぐらかされたりしたら、それはお察しです)。
2 「スキル上がらない塩漬け地獄」の見極め方
開発案件に入れたとしても、ずっと1つの案件から抜けさせてもらえず、同じスキルしか身に付かない会社が「スキルが上がらない塩漬け地獄」です。
見極めポイントは、こちらも2つ。
a クライアントの数が少ない
案件から抜けさせてくれない会社の傾向の一つとして、クライアントが少ない傾向があります。クライアントが少ない会社の営業は「このクライアントがダメでも他を当たればいいや」と考えられないので、エンジニアをそのクライアント案件から抜けさせられません。
見極め方はWebサイトなどで取引先をチェックすることです。10〜20社は少ない、30社くらいが普通で、それ以上あればまずまずという相場観です。
b 自社製品の数が少ない会社
自社製品開発の求人も、この地獄である可能性があります。
製品が1つしかない会社だと、同じ製品の改修、運用を繰り返すことになるからです。自社製品開発をしている会社に入るなら、1つではなく、さまざまな製品を次々と開発している会社をお勧めします。いろいろな技術の開発経験を積むことが可能になるからです。また、その製品が古い技術で作られていないかもチェックしてください。開発で入れても得られる技術が古いものに限定されてしまえば、成長の幅は減ります。
ただし、複数の製品を開発していても、自社製品開発の会社には応募がたくさんくるので、未経験の人は運用保守に回されがち、というリスクは踏まえておいてください。
3 「やりたいことができない地獄」の見極め方
「1」「2」の地獄を回避し、そこそこ開発経験を積めたエンジニアに待ち受けているのが、「3」の「やりたいことができない地獄」です。開発経験を積むと、次にやりたい案件の条件が明確になってきます。ですが、その希望案件に就けずにもがき苦しむ地獄が“漏れなく”待っています。
“漏れなく”というのは、この地獄の正体は会社ではなく、エンジニア自身だからです。
SI業界の営業は多くの場合、「A トラブル対応」「B エンジニアの提案」に追われており、「C エンジニアが希望するスキルアップ案件を探す」に工数をかける余裕がありません。この現状を十分に理解していたとしても、エンジニアにとって営業は自分の将来を阻害する存在になってしまうという事実に変わりはありません。いつしか「営業がダメだから俺はやりたいことがやれないんだ……」というモヤモヤでいっぱいになります。
「悪いのは自分ではなく他人」と考え出すと、努力や勉強をする意味を見失い、営業を責めるようになります。すると信頼関係がボロボロになり、希望する案件を探してもらえず、やりたいことができない地獄が始まります。
転職しても同じことが起きます。なぜなら、業界の悪循環を作る営業の力学はどこに行っても変わらないからです。
心掛け次第でどうにかなりそうな話ですが、実はこの「3」こそが一番被害者を産んでいる地獄です。
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