Google、IBM、Red Hat、SAP、Arm、Arduinoが使う「ベンダー中立」のオープンソースIDEプラットフォーム「Eclipse Theia 1.0」が登場:「Visual Studio Code」向け拡張を実行可能
Eclipse Foundationは、ブラウザとデスクトップで動作する「ベンダー中立」のオープンソースIDEプラットフォーム「Eclipse Theia 1.0」を発表した。
Eclipse Foundationは2020年3月31日(米国時間)、ブラウザとデスクトップで動作するオープンソースソフトウェア(OSS)のIDE(統合開発環境)プラットフォームである「Eclipse Theia 1.0」を発表した。
Theiaは、TypeScript、CSS、HTMLで実装されており、「同じコードベースによるデスクトップIDEおよびブラウザベースIDEの開発をサポートする、ユニークなIDEプラットフォーム」とされている。ユーザーは、ブラウザとデスクトップのどちらで動作するIDEを開発するか、あるいは両方で動作するIDEを開発するかを、前もって決める必要がないという。
Theiaを使うには
GitHubとGitLab向けのオンラインIDEである「Gitpod」でもTheiaは使用できる。Eclipse Foundationは、Theia自体のソースコードを置くGitHubでGitpod版Theiaを動かせるようにしている。またブラウザベースIDE「Eclipse Che」を、以前のGWT(Google Web Toolkit)ベースのものからTheiaベースに作り替えている。
Theiaのコントリビューター/導入企業には、TypeFox、Ericsson、Arm、Red Hat、Google、IBM、SAP、Arduino、TORO Cloud、EclipseSource、Huaweiが名を連ねている。例えば、Googleは「Google Cloud Shell」でエディタとしてTheiaを使えるようにしている。SAPはブラウザベースIDEをTheiaで作り替えている。Arduinoの「Pro IDE」やArmの「Mbed Studio」はTheiaベースだ。
IDE開発ユーザー/企業の課題
Eclipse Foundationは、「『Cloud9』のようなオンラインIDEは、ブラウザベースの開発に道を開いたが、一方でモダンなデスクトップIDEがサポートする多くのプログラミング言語やフレームワークに対応していくことは、常に難題だ」との認識を示し、こう指摘している。「この問題は、拡張を作成する開発者の大規模コミュニティーの育成や、大量の開発者の採用によって解決できるが、どちらのアプローチも、長期にわたって持続していくのは至難の業だ」
Eclipse Foundationは、Theiaは、業界で最大かつ最も活発なIDE拡張コミュニティーを利用して、この問題を別のやり方で解決するとしている。それは、MicrosoftのOSSコードエディタ「Visual Studio Code」(以下、VS Code)の拡張コミュニティーだ。
VS Code向け拡張を実行可能
Eclipse Foundationは、「VS Codeチームは、全ての拡張を軽量のサンドボックスプロセスで実行する、プロトコルベースのIDE拡張モデルを構築した」と称賛する。Theiaは、VS Codeの拡張プロトコルをネイティブにサポートするので、OSSコミュニティーで開発された1万6000以上の既存の拡張をインストールできる。
だがMicrosoftは、Visual Studio以外の製品が、同社のマーケットプレースからバイナリをダウンロードし、インストールすることを禁じている。Eclipse Foundationは、「大部分のVS Code向け拡張がOSSであり、Microsoft自身が開発したものではないことを考えると、これは悲しむべき事態だ」としている。
この制限はTheiaとその全ての導入者だけではなく、VS CodeのOSSコードベースのリリース(「VS Codium」など)にも影響する。
Open VSX
Eclipse Foundationは、この問題の解決策として、VS Code向け拡張のレジストリのOSS実装である「Open VSX」を用意した。Open VSXは現在、β版がopen-vsx.orgで公開されている。
Eclipse FoundationはOpen VSXにより、誰でもアクセスできるOSSのVS Code向け拡張の公開レジストリを構築したいと考えている。また、企業が自社のプライベートネットワーク内で独自のレジストリをホストできるようにすることも目指している。Eclipse FoundationはVS Code向け拡張の開発者に、Microsoftのマーケットプレースだけではなく、Open VSXにも拡張を登録することを呼び掛けている。
他の特徴
Eclipse Foundationは、Theiaはこれら以外にも、以下のような特徴があるとしている。
- ベンダー中立
Theiaプロジェクトは、ベンダー中立の非営利団体であるEclipse Foundationがホストしている - 拡張可能
Theiaは、モジュラーアーキテクチャで設計されている。拡張の開発者や導入者は、Theiaのあらゆる側面をカスタマイズしたり、拡張したりできる。package.jsonファイルに必要な拡張を列挙するだけで、IDEライクなカスタム製品を作成できる。独自の拡張を実装して新機能を追加することも可能だ - JavaScript、Java、Pythonなど多言語をサポート
Theiaは「Language Server Protocol」をベースに構築されているため、発展が進んでいる60以上の言語サーバのエコシステムによる恩恵を受け、主要なプログラミング言語の編集をサポートする - 統合ターミナル
Theiaはフル機能のターミナルを統合している。このターミナルは、ブラウザでリロードされると再接続し、履歴を維持する - 柔軟なレイアウト
Theiaのシェルは、モジュラーウィジェットで構成されており、これらは、ドラッガブルなドックレイアウトの基盤を提供する
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