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Azure仮想ネットワークのIPv6対応およびAzureスポットVMの一般提供開始Microsoft Azure最新機能フォローアップ(105)

2019年4月からパブリックプレビューとして提供されていた、「Azure仮想ネットワーク」におけるIPv4/IPv6デュアルスタック対応が、全てのAzureパブリックリージョンで正式版になりました。また、2019年12月からパブリックプレビューとして提供されてきた「AzureスポットVM」の一般提供も開始されました。

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Microsoft Azure最新機能フォローアップ

Azure仮想ネットワークが正式にIPv4/IPv6デュアルスタック対応に

 「Azure仮想ネットワーク(Azure Virtual Network、Azure VNet)」は、Azure仮想マシン(Azure VM)にプライベートなIPサブネットとインターネットへの接続性、インターネットへのアプリケーションの公開、オンプレミスとの仮想プライベートネットワーク(VPN)接続などの機能を提供する、ネットワーク基盤サービスです。

 従来、Azure仮想ネットワークのサブネットはIPv4専用であり、IPv4のアドレス空間の定義とルーティングが可能でした。2019年4月からは従来のIPv4専用に加えて、IPv4/IPv6のデュアルスタックに対応した機能がパブリックプレビューとして評価やテスト用向けに提供されてきましたが、2020年4月初めに一般提供となり、Azureの全てのパブリッククラウドにおいて、運用環境への導入および既存のAzure仮想ネットワークへのIPv6サポートの追加が可能になりました。

 具体的には、Azure仮想ネットワークでのIPv6プレフィックスによるユーザー定義のアドレス空間の構成とIPv6サブネットの作成(画面1)、Azure仮想ネットワークから外部へのIPv6の通信やルーティング、「ネットワークロードバランサー(Network Load Balancer、NLB)」を使用したアプリケーションのIPv6エンドポイントの負荷分散(画面2)、「ネットワークセキュリティグループ(Network Security Group)」におけるIPv6規則によるリソース保護(画面3)、「DDoS保護プラン(DDoS protection plan)」のパブリックIPv6エンドポイントへの拡張などです。

画面1
画面1 Azure仮想ネットワークは従来のIPv4アドレスに加えて、IPv6のアドレス空間の定義とサブネットの作成に正式対応
画面2
画面2 ネットワークロードバランサーにIPv6アドレスを割り当て、IPv6トラフィックを負荷分散できるように。「Basic SKU」は動的な、「Standard SKU」は静的なパブリックIPv4/IPv6アドレスの割り当てに対応
画面3
画面3 ネットワークセキュリティグループでは、ソースIPアドレスや宛先IPアドレスにIPv6アドレスやIPv6サフィックスを定義して、IPv6トラフィックの受信や送信を制御できるようになった

 Azure仮想ネットワークのデュアルスタック正式対応は、インターネットのIPv4枯渇問題の解消に貢献することになるでしょう。企業は、自社のIPv6アドレス空間をAzure仮想ネットワークに拡張し、オンプレミスとクラウド間の安全なIPv6による接続性を実現することができます。また、膨大なエッジデバイスに対応するため、IPv6で構築されることが多い「モノのインターネット(IoT)」対応アプリケーションを、Azureでホストすることができます。

AzureスポットVMの一般提供開始

 「AzureスポットVM(Azure Spot Virtual Machines)」は、SLA(サービス品質保証)を提供せず、特定の条件下で自動的な停止/割り当て解除を行うことで、Azure VMの従量課金制の価格と比較して未使用のAzureコンピューティング容量を最大90%の割引価格で提供する、Azure VMの新しい提供形態です。2019年12月にパブリックプレビューとして評価、テスト向けに提供が開始され、2020年4月初めに一般提供となりました。

 AzureスポットVMは、Azure VMまたはAzure VMスケールセットのWindowsおよびLinux仮想マシンで利用することができます。スケールセットの一部など、中断してもよいワークロードの実行に最適であり、コストを削減しながら、スケーラビリティを得ることができます。

 AzureスポットVMは、容量(Azureのコンピューティングリソースが不足する場合に停止して回収)、またはユーザー定義の最大価格(米ドル/時で指定)に達したときに、自動的に停止/割り当て解除されます(画面4)。

画面4
画面4 SLAが提供されず、容量不足や最大価格に達すると自動停止されるため、通常の従量課金(画面手前の計算ツール)よりも圧倒的に低コスト(画面奥のサイズ選択画面)でAzure VMを実行できる

 そのため、AzureスポットVMは、バッチ処理、開発/テスト環境、大規模計算など、中断しても問題ないワークロードでの使用に適しています。

 スタンドアロンのAzure VMを必要時に開始し、不要時に手動(またはスケジュールに従って)で停止/割り当て解除するような使い方の場合は、AzureスポットVMよりも、通常の従量課金制のAzure VMの方が経済的でしょう。

 なお、Azure VMスケールセットの「低優先度Azure VM」を置き換えるものであり、既存のデプロイの環境は自動的にAzureスポットVMに移行されます。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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