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ベンダー一揆を回避したいなら、この情報をうまく使ってくださいコンサルは見た! 偽装請負の魔窟(9)(1/4 ページ)

偽装請負に苦しむ先輩を助けるために、白瀬が乗り込んだのはユーザー企業の法務部だった。そのころ江里口はある老人を訪ねていた――。

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コンサルは見た!

登場人物

サンリーブス

ベンチャー企業。AIソフトの開発を得意としていたが、最近はさまざまな案件を請け負っている

sawano

澤野翔子

イツワ銀行勘定系システム刷新プロジェクト、サンリーブスチームのプロジェクトマネジャー。原籍はA&Dコンサルティング。米国勤務から帰国後、本プロジェクトに出向。プロジェクト内に横行する偽装請負に激おこ中

東通

大手老舗ITベンダー。イツワ銀行勘定系システム刷新プロジェクトでは、顧客の信用管理機能のスコアリングパートを受け持っている

kishibe

岸辺和弘

イツワ銀行勘定系システム刷新プロジェクト、東通チーム、グループリーダー


A&Dコンサルティング

大手コンサルティングファーム

sirase

白瀬智裕

A&Dコンサルティングに化粧品メーカーから出向中の新米コンサルタント。ラグビー部出身でガタイが良い

イツワ銀行

日本を代表するメガバンク。勘定系システム刷新プロジェクトの真っ最中(ただし、2回リスケ)

koseki

小関卓

法務部課長


東京リアルエステート

サンリーブス株主

ooya

大矢和彦

会長。創業当初に買ったサンリーブスの株を幾らか持っている。政財界にも広い人脈を持つ経済界のフィクサー

前回までのあらすじ

「イツワ銀行」の勘定系システム刷新プロジェクトでトラブル発生。パートナー企業「サンリーブス」の桜田が契約外でサポートした「東通」でテストデータが消失。対応に追われつつ自社の担当分野も行い、イツワ行員からの契約外作業も行うサンリーブスのメンバーは限界寸前。本社からの支援が来ず、桜田はダウン。更迭が告げられ、社長にも連絡が取れなくなった四面楚歌(そか)の澤野のために、後輩の江里口美咲が動き出した――!

そろそろ反撃に出ましょう

 どうしたらいいのだろうか。どうやったらこのプロジェクトを、いや、このメンバーたちを、そして自分を救えるだろうか――澤野翔子は汗臭い空気の中で、ぼうぜんとしていた。

 「澤野さん!」

 ふいに後ろから呼び掛ける声に振り向くと、大きな体の男が立っている。A&Dの白瀬だった。その隣には、対照的に細身の東通岸辺が立っている。無精ひげを生やし、手入れされていない髪の毛もモサモサとしたままだが、その目はしっかりと輝いている。

 「一緒にいきませんか? そろそろ反撃に出ましょう」と白瀬が言った。

 「反撃? まさか山谷本部長のところに?」

 「いやいや、そんな正攻法の通じる相手じゃない。われわれが行くべきは、イツワの法務です」

 「法務?」

 「ええ」と、岸辺が頷いた。

 「私も、白瀬さんに誘われたんです。彼は澤野さんの同僚なんですって?」

 「ええ、まあ」

 「いや、とにかく一生懸命に口説かれちゃいましてね。『一緒に法務に行って、サンリーブスを助けてほしい。これは東通のためでもある』って」

 翔子はイツワの法務部の人間とは会ったことはない。そんなところへ行って何がどうなるのか正直見当もつかない。しかし、白瀬が動くということは、信頼する美咲も動いているということだろう。

 「それとも……」と、岸辺が問い掛けた。

 「サンリーブスの上の方にも、承諾が必要ですか?」

 翔子は立ち上がった。

 「要りません。そんなもの」

 結局、田原も布川も自分たちを助けてくれない。そんな上司たちより今目の前に立つ2人の方が、よほど頼りがいがあると思えた。

 「行きましょう。法律専門の部門にだったら、私にだって言いたいことはあります」

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