2020年代のエンジニアが年収を上げるための戦略 ー現状分析と今後の予想ー:年収を上げたいかー! おー!(2/2 ページ)
アフターコロナに訪れるであろうエンジニア弱肉強食の世界。サバイバルを生き抜き、年収を向上させるために、エンジニアは何を考え、どう行動すればいいのか――。
2.今後を予想する
現状を整理したので、それを踏まえて今後起こり得ることを予想していきます。
テレワークが引き起こす弱肉強食の世界
テレワークは、何年も前から働き方改革の目玉でした。より良い環境を提供し、気持ち良く働いてもらおう――というと聞こえがいいのですが、働き方改革の本丸はそこではありません。働き方改革の本丸、それは「弱者の排除」です。実力がある者に多くの報酬を与え、そうでない者を排除していくことです。
テレワークは場所に制約がないので、地の利が生かせません。それは、日本中のエンジニアが一斉にライバルになることを意味します。
例えば、首都圏の仕事を地方在住の優秀なエンジニアが請ける、その逆もあります。転職市場をのぞいてみると、フルリモートでエンジニアを採用する企業が増えています。北でも南でも離島や海外在住でも、ネット環境さえあれば、首都圏のプロジェクトに参加できます。必要なのはスキルだけです。
しかし求められるスキルレベルは上がります。日本中、いや世界中がライバルになるからです。これから訪れるのは真の実力社会、時代の変化に順応できた実力者だけが生き残れる弱肉強食の世界です。
変わらぬ業界構造の中で進む二極化
真の実力社会がもたらすのは「格差」です。今まで以上に二極化が進むと思って間違いありません。大きく年収を上げる者と大きく年収を下げる者とに別れ、その差はどんどん広がっていくでしょう。
IT業界にまん延する多重下請け構造を一言でいうと「搾取」です。元請けが受注した仕事は二次請け三次請けと下っていき、その度に中間マージンが発生します。つまり、下の商流にいくほど取り分が少ないのに仕事が多くなります。搾取から脱却するには上の商流に移るしかありません。
上の商流とは、元請けや一次請け、発注元企業のSEのことです。上の商流に移るための手段の一つが転職ですが、目先の年収アップに目を奪われると、転職回数だけを増やしかねません。転職するならば上のステージへとキャリアアップしなければ、広がる格差に飲み込まれるだけです。
新しい雇用スタイル
業界の構造は変わりませんが、雇用形態は少しずつ変わっていくでしょう。
現在は1つの会社に所属する働き方が一般的ですが、これからは複数企業に所属する時代がやってきます。副業や掛け持ちを許容する企業が増えてきたのがその現れです。また、サラリーマンとフリーランスのハイブリッドエンジニアも増えてくると思います。
戦場は物理的な空間からサイバー空間へと変わります。前述の通り、場所の制約がなくなると、地域1番の実力では生き残れなくなります。世界中のエンジニアがライバルとなり、真の実力者に仕事が集中します。時間の概念は不変なので、実力者の時間単価は上がり、二極化に拍車を掛けていくでしょう。
サラリーマンは、不安な時代のライフライン
話は年収アップの話から少し横道にそれますが、個人的にはサラリーマンであり続けるメリットは、今後一層増えていくと思います。
1つは、これからやってくる弱肉強食の世界では、実力があれば報酬や待遇に対して強気で交渉できると思うからです。
もう1つは、副業やハイブリッドワークが可能になれば、サラリーマンという軸足を持ちつつ、フリーランスのような働き方ができる点です。弱肉強食の世界では、実力者は引っ張りだこです。社会に求められる実力が備わっていれば、働き方の自由や高報酬を求めてわざわざ外に飛び出さなくても、会社に所属しながら全く同じことができてしまうと思うのです。
もちろん実力がなければ、フリーランスは当然ながら、所属する会社にも居場所なんてなくなりますけどね。
次回(2021年2月8日掲載)は、戦術編。2020年代のエンジニアが年収を増やすために必要なスキルを掘り下げます。
筆者プロフィール
勝ち逃げ先生
ベンチャー企業、派遣企業、大手製造業社内SEと渡り歩き、現在は外資系IT企業で働くITコンサルタント。体脂肪率8%の細マッチョでもある。
エンジニアライフ「ITエンジニアの高年収戦略」
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