Windows、Azureの管理はどう変わる?――Windows Admin Center バージョン2103の一般提供とAzureポータル統合のWindows Admin Centerのパブリックプレビューが開始:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(137)
Microsoftは「Windows Admin Center(WAC)」の最新バージョン「2103」の一般提供を開始しました。また、Azureポータルに統合された「Windows Admin Center(プレビュー)」のパブリックプレビューも開始しました。
進化を続ける管理ツール「Windows Admin Center」
Microsoftは2021年3月2日(米国時間)、HTML5ベースのWindows Server管理ツール「Windows Admin Center(WAC)」の最新バージョン「2103」のGA(Generally Available)を発表し、Microsoft Evaluation Centerでのダウンロード提供を開始しました(画面1)。
- Windows Admin Center version 2009 is now generally available![英語](Microsoft Tech Community)
- Windows Admin Center(Microsoft Evaluation Center)
上記は評価版ソフトウェアのダウンロードサイトですが、WACは評価用ではなく、正式版です。WAC 2103のビルドは「1.3.2103.01006」で、「プログラムのアンインストールまたは変更」の一覧ではバージョン「1.3.35878.0」と表示されます。WACのサポートポリシーでは、WACの新バージョンリリース後「30日間」は前バージョンがサポートされます。現在、WAC 2009を利用中の場合は、2021年3月中にWAC 2103に更新してください。
WACは2018年4月にバージョン1804が初めてGA版としてリリースされ、その後、おおむね半期に一度のサイクルで新しいGA版が提供されています。
最新のWAC 2103は、「イベント」ツールの再設計や「仮想マシン」ツールの表示列の選択とグループ化のサポート(画面2)、仮想マシン統合サービスの構成の追加、前バージョンのWAC 2009で追加された「Azure Stack HCI」サポートの強化など(画面3)、主要な各種管理ツールの改善や機能強化が行われ、新たに「Azure IoT Edge for Linux on Windows」のサポートも追加されています。
画面3 WACを利用すると、Windows ServerのクラスタやAzure Stack HCIクラスタをウィザードで簡単にセットアップできる。WAC 2103では、OEMベンダーの拡張機能とシームレスに統合されている
WAC 2103では、プラットフォームとして機能も強化されています。各ツールを別ウィンドウで開く「ツールを新しいウィンドウで開く」機能の追加、WACの自動更新機能のプレビュー機能としての追加、拡張機能の自動更新機能の追加、プロキシのサポートなどです(画面4)。
以前はWACの新バージョンがリリースされると、Microsoft Evalution Centerからインストーラーをダウンロードして更新するか、Microsoft Updateで配布されるまで待つ必要がありました(Microsoft Updateを有効にしている場合)。
今回、自動更新がサポートされたことで、ダウンロードやインストールの手間をかけることなく、素早く新バージョンに更新できるようになると期待できます。拡張機能もこれまでは更新版があるという通知を見て、「拡張機能」のページを開き、更新版を選択してインストールする作業を更新版ごとに行う必要がありました。
Azure Portalに統合されたWindows Admin Center(プレビュー)
Microsoftは同日、2020年9月からプライベートプレビューを行っていたAzureポータル内でWACを使用する機能「Windows Admin Center(プレビュー)」をパブリックプレビューとして公開しました。この機能はAzureポータルの「仮想マシン」ブレード内にある「Windows Admin Center(プレビュー)」からアクセスできます。
- Announcing public preview of Window Admin Center in the Azure portal[英語](Microsoft Windows Server Blog)
「Windows Admin Center(プレビュー)」は、WACをクラウドのサービスとして提供するものではありません。「Windows Server 2016」または「Windows Server 2019」を実行するAzure仮想マシンに「WAC拡張機能」として簡単にインストールすることができ(画面5)、Azureポータルに統合されたWACのGUIを介して、対象のAzure仮想マシンおよび同一の仮想ネットワークに接続されたAzure仮想マシンのリモート管理を可能にするものです。
画面5 Windows Server 2016またはWindows Server 2019のAzure仮想マシンにWAC拡張機能をインストールする。パブリックIPアドレスは必須ではなく、プライベートIPアドレスだけで接続可能
WACの「リモートデスクトップ」ツールを利用すると、WAC内でリモートデスクトップ接続ができるため、RDP(Remote Desktop Protocol)ポートを解放しなくてもAzure仮想マシンのコンソールにアクセスできます(画面6)。
Azureポータルの「Windows Admin Center(プレビュー)」にアクセスするためにAzure仮想マシンにパブリックIPや受信ポートの許可は必須ではなく、Azure仮想マシンのプライベートIPで接続できるためセキュアなリモート管理が可能です(Azure ExpressRouteやVPNなど、プライベートIPへの安全な接続環境がない場合はパブリックIPとポートの許可が必要)。
なお、Azureポータルから「インストールされているアプリ」ツールで確認できる、拡張機能としてインストールされたWACのバージョンは「1.3.5394.0」でした。WAC 2103よりも若いバージョンですが、機能的には同等と思われます。ただし、ローカルのWebブラウザ(新しいMicrosoft Edgeなど)からのアクセスはサポートされておらず、Azureポータルからアクセスするようにとのメッセージが表示されます。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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