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つながりやすくなった世界で大切なのは「学びを止めないこと」Go AbekawaのGo Global!〜Philippe_Godbout編(後)(2/2 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。前編に引き続きPhilippe Godbout(フィリップ・ゴドブ)氏にお話を伺う。日本法人のリーダーとして働く同氏が仕事で最も魅力を感じるところとは何だろうか。

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「学生たちは企業が提供すべき価値を理解している」

阿部川 能力開発という観点でいえば、ダッソーはHackathon(ハッカソン)活動にも熱心に取り組まれていますね。

フィリップ氏 はい、毎年やっています。こうした状況ですので2020年はオンラインで開催しました。オフラインのイベントをどのようにオンラインで開催すればいいのか迷いはありましたが、「私たちにはテクノロジーがあるし、クラウドソリューションもあるし、できないことはないだろう」と(笑)。参加者にPCを配送し、それぞれのチームがそれぞれのプロジェクトを進める形にして、成果発表だけは(感染対策をした上で)会場で実施することにしました。実際やってみると、小さな問題はありましたが、プロジェクトそのものは順調に進みました。

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成果発表の様子(出典:ダッソー・システムズ)

 印象深かったのは学生たちが発表の最初にお互いの自己紹介を始めたことです。オンラインで協業し、一緒にプロジェクトを立ち上げ、プロダクトやストーリーを一緒に創り出し、全てをバーチャルでプロデュースした同士なのに、実際に会ったときには、互いの自己紹介を、まずはしっかりと始めたのです。

 そんな学生たちのハッカソンでのプレゼンテーションを見ていると、企業が市場に届けなければならない価値とは一体どのようなものか、既に学生たちは十分に理解していると思いました。このパンデミックの状況下では、企業の多くが、それができず苦しんでいるのです。この意味でもハッカソンは、私たちが必ず継続しなければならない活動だと思います。

阿部川 素晴らしい取り組みだと思います、ぜひ続けてください。フィリップさんは日本法人代表という責任ある立場で日々仕事を進められていると思います。ダッソーの仕事でどこに一番魅力を感じていますか。

フィリップ氏 スピードへのチャレンジでしょうか。私は挑戦することが大好きです。もっとうまくできないか、そしてもっと速く出来ないか、と毎日考えています。

 テクノロジーの進化によって、全てのもののスピードが加速しています。問題は「加速しているスピードにどのように対応すればいいのか」は誰も分からないことです。まず、それをしっかり受け止めないといけません。現在、日本オフィスの従業員数は1000人を超えています。私がリーダーとしてすべきことは従業員が10人や100人だったときとは違います。この規模の企業を、どのようにナビゲーションしていくか、ここが私のチャレンジだと思いますし、同時にとてもエキサイティングなことだと思っています。

つながりやすくなった世界で大切なのは「学びを止めないこと」

編集 コロナでリモートが常態化して、世界はつながりやすくなったと思います。そのような世界で、エンジニアは、今まで以上にどのような能力が必要となるでしょうか。つまり、エンジニアのライバルは世界に広がるので、その中で選ばれるようになるには何が必要でしょうか。

フィリップ氏 「こうすればいい」という確固たるルールがあるわけではありません。一番大切なことは、学び続けることだと思います。自分の知識を常に進化させることを忘れないでください。何か一つが終わったからといって、そこで立ち止まってしまうのではなく、新しいことを学び続けてください。

 それはエンジニアとしての力をより高めることかも知れませんし、あるいは全く新しいテクノロジーを一から学ぶことかも知れません。マネジメントもそうですね。「学校の勉強は学校だけのもので、卒業したらもう勉強はしなくともよい」という時代があったかも知れませんが、今はそれでは駄目です。

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「学びを止めないでください」

 会社はあなたを教育してくれます。ただ、それであなた自身が学びをやめてしまっては意味がありません。もし、あなたがエンジニアとして成長するかマネジメントに進むか迷っていて、新しいテクノロジーを学ぶのが好きなのであれば、迷うことなくエンジニアの道を進んだ方がいいと思います。エンジニアとしてエキスパートになり、あなたにしかない価値を創り出すことができるでしょう。その上でマネジャーになったとしたら、誰もまねができない価値がありますし、その成果を他の人に与えることもできます。

阿部川 学び続けることは重要ですが、簡単ではありませんね。

フィリップ氏 もちろんです。ですが、そのようにして得たナレッジやノウハウは、あなたがどんなところに行こうとも、企業にとってこれほど価値のあることはありません。特に今は、オンラインもありますし、どこでも、誰からでも学ぼうと思えば学ぶことができます。私が学生のときは、教科書があって、教室があって、それで始めて学びが始まりましたが、現在は全てがオープンです。そして一人一人が自分に適した方法を選ぶことができます。

編集 企業側も優秀なエンジニアに選ばれるようになるために変わるべきですね。

フィリップ氏 多くの企業がその課題に直面していると思います。私も顧客から「どうやって企業を変革したらよいのでしょうか」とよく聞かれますから。

 企業の変革、つまりDXを実現させる方法が分からない理由は、シンプルに言えば「DXに詳しい人材が育っていないから」です。どうしたらいいかと質問してくるのは大抵管理職の方ですが、そういった方は自分たちよりDXに近いはずの若手に「どうやってイノベーションを起こすか」「どうすればこの製品を有効に使えるか」などを考えさせていないように思います。

 これは特定の企業に限定した話ではなく、学生のころから変革に関わる機会を提供していない、企業で働くわれわれの責任といえます。ですから、彼らがうまく未来を作っていけるような仕組みをこれから提供していかなければならないと考えています。

インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜

 ある経営者は「戦略には順番がある」(彼は“sequence”と表現した)と言った。バスケットボールが好きなら背の低いことを嘆いても仕方がない。その前提で何ができるかを考える。やれることは、実は山ほどある。戦略を構築する、スピードを高める、チームワークを固める、士気を上げる、相手のミスや焦りを誘う……。次第に身長が伸びてきたら、一気呵成(かせい)に、それまで培った力を開花させる。フィリップさんは既に学生時代に、スポーツから企業経営のツボを学んでいた。ボーイング777を全てコンピュータ上で設計したダッソーは、自動車へ、PLMへと進化し、今はDXの最先端をひた走る。既に起こった未来を、今顧客の目の前に提示する戦略に「時」も味方している。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビューアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(日本在住、35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOの来日などがあれば、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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