検索
連載

シリコンバレーについた瞬間、全てのものがつながった――そうか、自分がやりたかったのはコンピュータだったのだGo AbekawaのGo Global!〜Nir Horesh編(3/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はWix.comのNir Horesh(ニール・ホレシュ)氏にお話を伺う。よく遊び、よく学ぶ青年が「私がやりたいのはコンピュータだ」と気付いたきっかけとは何だったのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

今の仕事で一番の魅力は「一緒に仕事をする仲間」

阿部川 どうやってWix.comへの就職が決まったのですか。

ホレシュ氏 Wix.comに直接コンタクトを取りました。そのころは新たなことに挑戦したいと考えていて、他の企業とのインタビューを繰り返していました。大体8カ月間近く、仕事を続けながら次の機会を探していましたね。もちろんLeverateが悪い会社だったわけではありません。探していたのはチャレンジングな超優秀な企業、例えばGoogleやFacebookなどに入りたいと考えていました。私にとってWix.comはそのような企業の中の1社でした。

阿部川 Wix.comはWebサイトのアクセシビリティ(Webサイトの「使いやすさ」を示す指標)を改善する取り組みをしていますね。Wix.comのどんなところに魅力を感じていますか。

ホレシュ氏 一緒に仕事をする仲間たちだと思います。私が何か新しいアイデアを持っていて、それをなんとかして実現したいと言ったとすると、周りのチームの皆は、それぞれとても忙しいにもかかわらず、「じゃあ、すぐやってみよう」という反応をしてくれます。共通した企業文化を持ちながらも違った考えの人々と一緒に仕事ができるので、多くのことを学べる環境だと思います。

 カルチャーも素晴らしいと思います。「自分が責任を持てる物事は、床に落ちているから、やりたければ自分で拾い上げればいい」というカルチャーがWix.comにはあります。一方で「他の人たちのために何かをしよう」というカルチャーもあります。こうした背景があるので、何事にもチャレンジしようと思えます。もし失敗したらどうしようと悩むことがないからです。

画像
ただいま、飛行機の運転中

阿部川 失敗を恐れて何もしないのではなく、何度も挑戦し、失敗した方が早く目的地にたどり着けます。

ホレシュ氏 その通りだと思います。少し前のことですが、Wix.comがやったことのないサービス開発を手掛けることになり、ハッカソンなどでアイデアを集めていました。そこで上司にこんな質問をしたのです。「やり方が2通りあります。1つは『従来通りのやり方でとにかく作る』。もう1つは『少し機能を絞って作る』です。どちらにしますか」と。

 上司の答えは「君がやりたい方を選びなさい、どちらであっても私はサポートするよ」でした。もちろん、「こういう風にしなさい」といったやり方に対する指示もありませんでした。私の判断に全てを委ねてくれたのです。

阿部川 ホレシュさんを含め、従業員の方を信頼しているからできることですね。そうした環境があれば新しいことにどんどんチャレンジできますし、新しいアイデアも生まれやすいでしょう。

常に変化は起きている、だからこそ今起きていることをしっかり理解する

阿部川 多くのエンジニアが新しいチャレンジを重ねていったとして、今から20年後、ITは私たちの世界をどう変えると思いますか。

ホレシュ氏 良い質問ですね。おっしゃる通りさまざまなチャレンジが必要だとは思いますが、機械によってできる仕事が増え、人々にゆとりが生まれると思います。例えば車の運転は自動運転になり、長距離トラックの運転手は職を失うかもしれません。ただ、だからといって元トラック運転手の彼らがプログラマーになるわけではないでしょう。

 さまざまなことが自動化された後、その仕事を担っていた人々は何をするのか。飛行機の操縦士も自動車の運転手も製造業のエンジニアも不要になったときに、そこで働いていた人々はどうすればいいのか。それはこれからの世界に対する大きな問いだと思います。

 少数の富める人々と大多数の貧しい人々へと二極化した社会になるのか、それとも「何が求められているか」を明確にして、それに応えられる人が職を得るといった社会になるのか。今はまだ分かりませんが、既に変化は起き始めています。

 もちろん「何をすればいいか」がはっきりしているわけではありません。だからこそ、まずは現在起こっていることをしっかり理解することが重要だと思っています。

インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜

 Wix.comはWebサイトのアクセシビリティを改善するツールを提供している。アクセシビリティと聞くと何か構えてしまうが、例えば「Webサイトの色味を、色覚障害がある人でも判断しやすいように調整する」といったように、要は全ての人が分け隔てなくWebサイトやインターネットの恩恵を受けるようにするための方法を見いだすことだ。

 「自分がいる世界だけが唯一の世界ではない」軍隊での経験の話が印象的だった。優れた人はどんなことからも学び、自分なりに消化する。そこで止まらずに実践で使い続けるから精度はどんどん上がっていき、そこから新たなサービスや視点が生まれる。ホレシュさんはそういった「良い上昇スパイラル」を体現している人だった。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

ご連絡はこちらまで

@IT自分戦略研究所 Facebook@IT自分戦略研究所 Twitter電子メール


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る