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データサイエンティストとは、自分が携わった仕事が世の中の課題を解決して自分に返ってくる仕事データの扱いに長けている、統計解析ができるだけではダメ(2/3 ページ)

「データサイエンティスト1期生入社」を日立に提案した新卒エンジニア。大企業には珍しい「出る杭」として積極的にチャレンジし続けた彼は、6年後、どう変わったのか――。

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データを分析し得られた知見で現場業務が本当に改善される喜び

 日立では入社後の2年間で、まずは社会人としてどのように仕事をすべきかを学ぶ。そのために所属する部署の業務について学び、それを論文形式のレポートにまとめ幹部社員の前で発表する。この2年間を経て、組織の一員としての仕事が始まる。

 末吉さんは、日立が提供している計画最適化サービスのコア技術「MLCP(Machine Learning Constraint Programming)」についてレポートにまとめた。これは、その後の仕事を進める上でのノウハウになっており、現在でも提案時に参考にする内容となっている。

 現状末吉さんは、顧客企業のデータ分析ニーズに対し、提案からコンサルティング、そして実際のデータの分析に至る広い範囲を業務として担当している。日立のような大きな会社では大規模なプロジェクトに携われるが、プロジェクトが大きくなればデータを分析するだけでなく、業務として成り立たせるために必要なさまざまな調整仕事などを行う必要がある。

 学生の研究とは異なり、スケジュールをきっちりと守るのはもちろん、他の部署との調整やプロセスの中で絶対にミスしてはならないことなど、考慮すべきポイントは多い。仕事をスムーズに進めるための大事なポイントをどう進めるかは、先輩社員から教わりながら対応してきた。

 さまざまな経験のある人たちで構成されたチームがあり、そのチームで業務に当たれることは、プロジェクトを成功に導くために重要だ。そして「学生の研究では、誰のための分析かは後から考えるようなこともありますが、仕事ではまずはターゲットをしっかり定めそれから動くことになります」ともいう。

 末吉さんは、これまでにメーカーの生産計画の最適化プロジェクトなどに携わってきた。ある企業では、受注した部品の生産を複数工場で最適に振り分けたいとの要望があった。工場の設備や人の稼働状況、部品の在庫、場所などもさまざまな条件を考慮し、MLCPで分析し、計画の自動化を行う。このプロジェクトでは初期のコンサルティングから入り、データ分析まで携わった。

 従来は5つの工場ごとに3人の技術者、合計15人が2週間に1回集まり、4時間くらい会議をして生産の計画を立てていた。注文が多ければ、工場で対応しきれずに受注を諦めることもあった。経験則で注文を受ける/受けないを判断しており、最適とはいえなかった。

 そこで末吉さんは、MLCPでデータを分析し、多様で細かい条件を考慮して調整できる最適化のAIエンジンを構築。これにより生産計画の作成時間は従来の半分以下へと短縮し、計画の精度も人が立てるよりも向上した。結果的に適切な優先度で受注の判断が可能となり、生産の効率化だけでなくビジネス機会の損失も削減できる見通しを示したのだ。

 「学生時代の研究も、業務で行っているデータ分析も、未来予測が重要です。当時はエンジンの燃焼でしたが、今は人の行動をシミュレーションして未来を予測しています。その意味では、学生時代のシミュレーションのノウハウが今の仕事でも生かせています」

 データを分析し、得られた知見を用い、本当に業務を改善できたときに喜びを感じると末吉さん。仮説を立てて検証し、データ上では改善できると分かっていても、それを実際の業務に落とし込んでみないと本当に改善されるかどうかは分からない。分析結果がうまく適用され、業務の改善が見られると「よし、仮説が当たった」とうれしくなるそうだ。

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