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データサイエンティストとは、自分が携わった仕事が世の中の課題を解決して自分に返ってくる仕事データの扱いに長けている、統計解析ができるだけではダメ(3/3 ページ)

「データサイエンティスト1期生入社」を日立に提案した新卒エンジニア。大企業には珍しい「出る杭」として積極的にチャレンジし続けた彼は、6年後、どう変わったのか――。

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データサイエンティストとして得意なものを見つけ、それを生かせるようにする

 多くのビジネス現場の課題を、データを分析して解決する。その恩恵が「最後は自分に返ってくるようなプロジェクトに携わりたい」と末吉さん。普段の仕事や生活のさまざまなシーンで、効率化できていないものが見えてくる。

 例えばサプライチェーンがつながっていないがために、ECサイトで注文した商品の到着が遅れることがある。自分が携わった最適化の仕事でサプライチェーンの効率化が実現すれば、頼んだ商品が迅速に届くかもしれない。「裏で自分が携わった仕組みが適切に動き、商品がすぐに届いたとなれば、仕事としてはかなり興味深いものになります」と楽しそうに話す。

 末吉さんは現状、コンサルティングとデータ分析に携わることが多い。そのような形でデータサイエンティストとして仕事をする上でのモチベーションは、顧客とデータを見ながら業務の話ができることだ。自分は技術屋でもなければ単なるコンサルタントでもなく、データを共通言語に経営目線で会話できる立場にいる。それが、仕事をしていて「最も面白いところです」ともいう。

 日立という大きな企業で働くことで、社会にインパクトを与える仕事ができるのもやりがいだ。この国のこんな重要なことに携われるのかと感じる仕事も多々ある。今はメンバーとしてそういったプロジェクトに携わっているが、5年後には、リスクを見極め、プロジェクトをきちんと回せるチームを率いる立場になっていたいと考えている。

 そして、これからデータサイエンティストを目指したいと考えている人たちに対しては、「データサイエンティストは、データの扱いに長(た)けている、あるいは統計解析ができるだけではなれません。課題を明らかにして顧客の問題解決を提案するコンサルティング力も必要です。自分の得意、不得意、自分に合うもの合わないものを見つけてほしい」と話す。自分がどのようなスキルを持っていて、どういったことが得意か、それをしっかり見極め、必要な準備をするようにしてほしいとアドバイスする。

 機械学習など技術はどんどん新しいものが登場しており、それを全て追いかけるのは難しい。新しい技術を取得できれば、予測精度は向上できるかもしれない。しかし自分ができることには限界もあり、あまり手を広げ過ぎないようにした方がいい。大事なのは、顧客に対しきちんと提案ができることだ。

 顧客が発する情報から推測し仮説を立て、さまざまなことを考慮して解決策を導き出す。仕事には期限もある。時間が限られていれば、手間のかかる難しいアルゴリズムを選ぶのではなく、あえて簡単な方法で迅速に答えられる方が適している場合もある。

 「顧客により困っていることが異なるので、それをくみ取り、どのように提案すべきかが大事です」

 歴史ある大企業の日立は、保守的な社員が多く、あまり目立った行動をしない傾向がある。そのような組織の中で、末吉さんは自分から声を上げ積極的にチャレンジする、珍しい存在だ。積極的なチャレンジは自身の長所でもあり「上司からもそういったところは、求められていると思います。ちょっと日立らしくはないかもしれませんが、『これやってみよう』でどんどん進められるのは、自分の良いところだと考えています」と話す。

 末吉さんのような「出る杭(くい)」が、これからの日立をけん引していく役割を担うことになるのだろう。

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