SNSアプリ制作→赤字、iOSアプリ制作で起業→もうからない――プロダクト開発に心血を注いだエンジニアの「うまくいかなかった」経験の評価:新卒無職(1/3 ページ)
就職活動もアプリ作りもうまくいかず、それでも開発経験を買われてソーシャルゲーム開発会社に入社できた。自主制作アプリの事業化はうまくいかなかったが、今は名刺アプリ「Eight」iOS版のエンジニアリングマネジャー。人生はどこからでも軌道修正できるんだ。
坂本和大さんの経歴は風変わりだ。
大学卒業後の2010年、ある事情で「中途扱い」で「KLab」に入社してソーシャルゲーム開発に従事。2013年に同社を退職した後、双子の弟とアプリ制作ユニット「Soragoto」を設立し、スマートフォンアプリの企画から開発までを手掛けた。
2015年4月、「Sansan」に入社し、名刺アプリ「Eight」iOS版のエンジニアリングマネジャーを務める。モバイル分野という共通点はあるが、組織に所属するエンジニアと個人事業主の両方を経験した坂本さんは、キャリアの節目でどのような選択と決断をしてきたのだろうか。
就職活動がきっかけでプログラミングと出会う
坂本さんは徳島県で育ち、中学生のころからPCとインターネットに親しんでいた。
上京して早稲田大学に入学する。寮に入り、国際交流サークルで活動した。マスコミ志望だったが、就職活動はうまくいかない。そこから「どういうキャリアを築きたいのか」を坂本さんは改めて考えた。
坂本さんは中学生時代に弟と2人でWebサイトを運営し、掲示板に人が集まったり、コミュニティーができたりする過程を経験していた。「それが一番面白い原体験だった」と坂本さんは語る。その延長で「インターネット上のサービスを作って食いぶちを稼げないか」と考えた。
当時は、人気があったSNS(ソーシャルネットワークサービス)のmixiが、OpenSocialという新しいAPIの規格に対応したばかりだった。このAPIを活用すると、外部の開発者が「mixiアプリ」を作ってmixiと連携できる。
そこで坂本さんは、プログラミングを勉強してmixiアプリを作り、リリースした。作ったアプリは「一行リレー小説」。「お題」に基づいて1人1行ずつリレー小説を書いていくものだ。
だが、結果は芳しくなかった。
「外部アプリが利用できるソーシャルグラフとアプリの性質がうまく合わず、あまり使われませんでした。食いぶちどころか、月5000円の持ち出しでした。気が付いたら就活の時期を逃し、ただの無職になっていました」
開発したアプリそのものは収入に結び付かなかった。だが、それ以上の効果があった。
「プログラミングを勉強して、アウトプットとして出すまでの過程をブログに書いて公開しました。そこに『仕事はありませんか』と書いたら、『はてなブックマーク』で1000ブクマ以上が付き、複数のIT企業から声を掛けてもらえました。ソーシャル分野のアプリケーションを作りたかったので、KLabに入社しました」
ブログがバズを呼び、就職につながったのだ。
最初の就職の時点で、坂本さんは人生を賭けたプレッシャー下でアプリを開発する経験を積んでいた。この経験は、KLab入社後にも役に立った。「100%のオーナーシップを持ってアプリを作る経験は強い」と坂本さんは振り返る。
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