データサイエンティストとは、自分が携わった仕事が世の中の課題を解決して自分に返ってくる仕事:データの扱いに長けている、統計解析ができるだけではダメ(1/3 ページ)
「データサイエンティスト1期生入社」を日立に提案した新卒エンジニア。大企業には珍しい「出る杭」として積極的にチャレンジし続けた彼は、6年後、どう変わったのか――。
データ分析の仕事ができることで日立を選んだ
日立製作所(以下、日立)のLumada Data Science Lab. 技師の末吉史弥さんは、自動車関連のエンジニアだった父の姿を見て育ち、ものづくりのエンジニアになりたいと考えていた。そのため高校から理系を選択し、大学は名古屋大学の工学部に進む。
当初は尊敬していた父の影響もあり、将来は形のあるハードウェア系エンジニアになることを考えていた。しかし大学3年時で方向性を決める際に、製造系の仕事現場で人々が遅くまで働く姿を目の当たりにする。さらにハードウェア系の大学研究室が、夜遅くまで活動しているのが当たり前の状況も見て、少し疑問を感じるようになった。一方でソフトウェア系の研究室は、比較的時間の使い方が自由に見えた。そのため方向を転換してソフトウェア系エンジニアを目指すことにする。
ソフトウェア系の研究室での研究対象は、エンジン燃焼のシミュレーションだった。大学4年から大学院にかけ、メーカーと一緒にこれに取り組むことになる。実際のエンジンそのものでの実験とソフトウェアによるシミュレーションで、エンジンにおける燃焼の状況を検証した。「実物のハードウェアで実験しなくても、バーチャルな世界で検証できる点には興味を持ちました」と末吉さん。このときから多くのデータを扱い、それを分析して知見を導き出すことに携わる。
大学院では1年生の夏に、インターンシップがある。それが、就職活動の始まりだ。末吉さんもエネルギー系企業や大手製造業などで、現場仕事を経験する。製造業でのインターンシップでは、自身の研究と同様、製造する機器のデータを取得しシミュレーションを実施する仕事を経験した。この仕事の内容は、かなり興味深いものだったと振り返る。とはいえ仕事環境的には深夜まで忙しく働くもので「面白いけれど、かなり忙しそうだとのイメージを持ちました」と振り返る。
末吉さんは、プライベートと仕事の両方を充実させたいと考えていた。これは、いつも忙しく働く父の姿を見ていたからかもしれない。インターンシップで働く現場の実態を見て自分の進みたい方向性が固まり、通信会社やメーカーなど幾つかの企業にエントリーする。そして複数企業から内定をもらった。
最終的に就職先として選んだのは、日立だった。データサイエンティストになるため、現在の所属部門であるLumada Data Science Lab.の前身となる組織への配属を提案する。この希望が通らなければ、他の企業に行くつもりだと人事担当者に告げた。「この部隊で分析の仕事ができるからこそ日立を選んだので、それは譲れませんでした」と末吉さん。結果的に、日立で初のデータサイエンティストの新卒社員として採用される。
日立で働き始めて6年が過ぎた。就職活動を振り返ると、もっと企業分析などをしっかりすればよかったかなとも思うそうだ。理系の大学院などでは、研究室にOB経由などで求人があり、その中から研究の合間にOBと話をして行き先を決めることが多い。自分がやっている研究のうまい説明の仕方や、エントリーシートの書き方を工夫するなどもせず、企業研究も特に行わなかった。
研究室の先輩が就職した企業が就職先の選択肢であり、その中から選ぶのが当たり前だと思っていた。今となれば、もっとしっかり就職のための活動をしていれば、選択の幅は広がっていたはずだったのではと思う。そのため「OBと話して何となく決めてしまうのではなく、就職のための基本的な活動部分は理系の大学院生もしっかりやった方がよいでしょう」と、末吉さんはアドバイスする。
今は、OBとして学生と話をすることもある。会話の内容が、模範解答になっている学生も多く見受ける。選ばれるための面接よりも、落ちないための面接になっていないか。学生のうちにそういった対応ができるようにしっかり取り組み、自分なりの主張ができるようにしておくべきだとも末吉さんは強調する。
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