カインズのCTOに、俺はなる!:Go AbekawaのGo Global!〜崔 国編(後)(2/2 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もカインズの崔国(サイ・コク)氏にお話を伺う。英語も覚えたいし、MBAも取りたい。やりたいことが止まらない崔氏は次に何を望むのか。
CTOに、俺はなる
阿部川 宣言の崔、と勝手に呼ばせていただきましたが、今から10年後、崔さんは何をしているんでしょう? ちょっとここで宣言してもらえませんか。
崔氏 CTO(最高技術責任者)になります。10年でできるかどうかは分かりませんが、ITも経営も店舗にも詳しいエンジニアを目指しているんです。事業側が理解できないところも理解できて、「こういうビジョンに沿ったらできるよ」とちゃんと説明できる人になりたい。そして「一緒の船に乗っているんだから一緒にやっていきましょう」と言える人を目指しています。
阿部川 CTOじゃなくて、CDO(最高デジタル責任者)が適切かもしれませんね。ぜひそこを目指してください。
崔氏 まだまだ勉強が足りていないのですが、頑張ります。
阿部川 どの辺の勉強が必要だと考えていますか。
崔氏 英語です。情報量がまだ足りません。日本だけだと日本しか見えていないけれど、アメリカや世界の情報を手に入れたくて、本当に英語を頑張っています。英語が堪能になったら、韓国語、中国語、英語が使えることになるのでアジアで活躍できる可能性が広がります。
阿部川 大阪弁も使えますしね(笑)。
崔氏 そうですね(笑)。後はMBAです。できればその上のDBA(経営学博士)も取りたいと思っています。他にもやりたいことはいろいろあります。例えば、多くの日本企業が人材の採用や育成の課題を抱えていますので、どんどん海外の人材採用が進むと思うんですね。でもそういった人材をうまく回すためには異なる国の文化を認識して良い方向に持っていくためのマネジメントが重要になると思います。そういった挑戦をカインズでしていきたい。
阿部川 挑戦の中で成長していくということですね。最後にエンジニアに向けてメッセージをお願いできますか。
崔氏 会社に入って1年や2年プログラムをやっている人に言いたいのは、技術は全てではないということです。会社のビジョンによって「技術を使ってどういう価値を届けるべきか」は変わります。「技術+α」の人になってください。ITが詳しい人の希少性を10分の1だとしたら「金融業が詳しい人」の希少性は100分の1です。「ITが詳しくて金融が詳しくて物流が詳しい人」なら1000分の1の希少性があります。そういう人材を目指してください。
阿部川 自分だけにしかできないことをやるように学び続ける。まさに今、崔さんがやっていることだと思います。
インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜
中国内の朝鮮民族は韓国語と中国語の両方で生活しているとは、不勉強にして知らなかった。大学に入ると全てが中国語になる。言葉を知らずに留学するのに似て、より高い学び以前に言葉の壁が立ちはだかったはずだが、崔さんはその壁を「宣言」して飛び越えた。
大学への飛び級進学、Webデザイナーのスキル、日本への来日など越えるべき壁を明確にし、宣言した通り実行した。勤勉な父、家族と離れ一人韓国で働いてくれた母、年の離れた優しい姉。家族がいなかったら今の自分はいないと、素直に感謝を口にした。
カインズ入社は結婚のためだったと言い切る。ITのスキルに愛情が追加された。だがそれは必然でもあったことが徐々に分かる。気が付けばIT戦略会議は皆勤で、幹部と白熱した議論を交わす。
今はMBAの講義に通いつつ、英語も学ぶ。IT、ビジネス、英語というシリコンバレー流の武器はほぼ手中に収めつつある。「次の宣言は何ですか」と問うと、「CTO」とはにかみながら答えたが、あながち夢物語とは思えなかった。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。
編集部から
「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。
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