AWS、SQL Serverアプリを実行可能な「Babelfish for Aurora PostgreSQL」を正式リリース:アプリの修正がほぼ必要ない
AWSは「Amazon Aurora PostgreSQL互換エディション」の新機能「Babelfish for Aurora PostgreSQL」の一般提供を開始した。「Microsoft SQL Server」アプリケーションをほぼ変更なく、Aurora PostgreSQLで実行できる。
Amazon Web Services(AWS)は2021年10月28日(米国時間)、「Amazon Aurora PostgreSQL互換エディション」の新機能「Babelfish for Aurora PostgreSQL」の一般提供を開始した。
「Amazon Aurora」は、クラウド向けに構築されたリレーショナルデータベースであり、オープンソースデータベースの「MySQL」「PostgreSQL」と互換性がある。
新しいBabelfish for Aurora PostgreSQL機能により、「Microsoft SQL Server」(SQL Server)用に作成されたアプリケーションをAmazon Auroraで実行できる。コードをほとんど、または全く変更する必要がないため、アプリケーションの移行に伴う作業負担を減らすことが可能だ。
これまでSQL ServerからAmazon Auroraへの移行には、時間がかかり、多くの労力を要する可能性があった。AWSの説明によれば、「データベースの移行については、『AWS Database Migration Service』(AWS DMS)を使ってデータベーススキーマとデータの移行を自動化できるものの、多くの場合、データベースとやりとりするアプリケーションコードの書き直しなど、アプリケーション自体の移行作業の負担が大きかった」。
なぜほぼ修正が必要ないのか
移行に当たって修正がほぼ必要ない理由についてAWSは次のように説明する。
Babelfish for Aurora PostgreSQLは、SQL Serverとの通信に使われるSQL Serverワイヤープロトコル(TDS)と、SQL Serverのクエリ言語であるT-SQLを解釈できる。このため、ユーザーはSQL ServerからAurora PostgreSQLへのアプリケーションの移行に当たって、データベースドライバを切り替えたり、アプリケーションのクエリを全て書き換えたりする必要がない。
Babelfish for Aurora PostgreSQLは、SQL Server言語とセマンティクス(T-SQL)のサポートを実装し、ユーザーがコードを大幅に書き直すことなく、レガシーSQL ServerアプリケーションとAuroraの通信を可能にする(出典:AWS)
Babelfish for Aurora PostgreSQLに接続するには、機能を有効にした後、Aurora PostgreSQLクラスタのBabelfish TDSポートを指すようにSQL Serverベースアプリケーションの構成を変更する。なお、Babelfish for Aurora PostgreSQLはストアドプロシージャや保存ポイント、ネストされたトランザクション、SQL_VARIANTデータ型などをサポートしている。
さらにBabelfish for Aurora PostgreSQLは、SQL ServerとPostgreSQLの両方をサポートするので、ユーザーは自らのペースで移行できる。レガシーSQL Serverコードと、PostgreSQL APIを使って開発した新しい機能を並べて実行することも可能だ。
Babelfish for Aurora PostgreSQLは、Aurora PostgreSQLでサポートされる全てのリージョンで利用できる。
Amazon Auroraは、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えている。AWSによれば、標準的なMySQLデータベースと比べて最大で5倍、標準的なPostgreSQLデータベースと比べて最大で3倍高速であり、商用データベースと同等のセキュリティ、可用性、信頼性を、10分の1のコストで実現するという。
AWSは同日、オープンソースプロジェクト「Babelfish for PostgreSQL 1.0」のソースコードがGitHubで公開され、Apache 2.0ライセンスで利用できるようになったことも発表した。
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