カインズのDXの秘訣は「同じ言葉」で話すこと:IT用語でもなく、店舗用語でもなく(1/3 ページ)
エンジニアとはお互いの言葉を使わずに、経営層への説明では定量的な効果と定性的な効果を混ぜながら。ホームセンターの元店長は、カインズDX(デジタルトランスフォーメーション)のハブとなり、橋となった。
「カインズ」は「世界を、日常から変える。」というビジョンの下、全国に226店舗のホームセンターチェーンを展開している。
小売業の中でも際だって扱う品目が幅広く、店舗スペースも広いという特徴を持つホームセンターで、どのようにデジタル技術を生かしてより良い「お買い物体験」を、ひいてはより良い暮らしの実現を支援しようとしているのだろうか。カインズ デジタル戦略本部オムニ戦略統括部長の水野圭基氏が「カインズのKindnessなDX推進とは?」と題する講演を通して、これまでの歩みとそこから得られた学びを紹介した。
次々に新機能やサービスをリリースし、日々の買い物の煩わしさを解消
まだまだ人海戦術に頼る部分の多い小売業だが、デジタル技術で改善できる余地も大いにある。カインズは、「PROJECT KINDNESS」という中期経営計画を形作る4つの戦略の1つにデジタル戦略を位置付け、「煩わしさの解消からエモーショナルな体験の創造」を目指している。
水野氏は、このデジタル戦略には主に4つの目的があると説明した。1つ目は「ストレスフリー」だ。探している商品が見つからないといった、買い物体験の中で日々起きている煩わしさを少しでも解消していくことが狙いだ。2つ目は、顧客一人一人に合わせた提案を行う「パーソナライズ」。そして3つ目は、ただ商品を販売するだけでなく、顧客や地域とつながる「コミュニティー」の形成だ。最後に、日々の暮らしをちょっと楽しくしたり、便利にしたりするようなアイデアを提供することで、暮らしを少しでも豊かにしていく「エモーショナル」だ。
これらの目的を達成するためにカインズは、前身となる「デジタル企画室」を経て、2019年7月にデジタル戦略本部を設立し、メンバーを拡大しながらさまざまな取り組みを進めている。
まず、店舗で接客などに携わるメンバーたちが日々感じていた不便さを解消するために、携帯端末「SITE Phone」で利用できる「Find in CAINZ」をリリースした。商品名やキーワードなどを入力すると、売り場や在庫数などが画面に表示される機能で、今では「CAINZアプリ」にも搭載されている。
「れんがやブロックのようにバーコードが付いていない商品も多く、レジではそのつど商品台帳を開いたり、売り場に走って価格を確認したりする必要がありました。そこで、画像認識技術を活用し、商品をスキャンするだけで似たものを探し出してバーコードを表示することで、台帳を出さずに会計ができる機能を開発しました」
頻繁にシフトに入らない学生アルバイトでも簡単に使える上、バーコードや台帳の定期的なメンテナンスも不要になるといったメリットが生まれ、今も随時改修を行っているという。
顧客向けのさまざまなサービスも展開している。
例えば、商品を取り置いて、自分の好きなタイミングでロッカーからピックアップできる「CAINZ PickUp Locker」を2019年12月に導入開始した。「ホームセンターの中で商品を探し回るのは楽しい反面、買うものが決まっているお客さまに取ってはストレスでした。そこで、売り場を探し回らなくても商品を取り置けるピックアップサービスを作り、さらに受け渡しの便利さを拡大するためロッカーを設置しました」
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