セッションごとのWorkspace Memoryに関する情報を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(61)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、セッションごとのWorkspace Memoryに関する情報の出力について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_exec_query_memory_grants」における、セッションごとのWorkspace Memoryに関する情報の出力について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)です。
概要
ハッシュ操作や並べ替え操作が必要になった場合、まずメモリ上に「Workspace Memory」と呼ばれる作業領域を確保して操作を実行します。インスタンス全体のWorkspace MemoryはパフォーマンスカウンターのSQL Server:Memory Managerオブジェクトで確認できます。
インスタンス全体で使用できるWorkspace Memoryが枯渇した場合、Workspace Memoryの確保待ちで処理遅延が発生する可能性があるため、どのクエリがどの程度Workspace Memoryを使用しているのかを把握する必要があります。「sys.dm_exec_query_memory_grants」を実行すると、セッションごとのWorkspace Memoryに関する情報を出力します。
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
session_id | smallint | このクエリが実行されているセッションのID |
request_id | int | 要求のID |
scheduler_id | int | スケジューラのID |
dop | smallint | 並列処理の程度 |
request_time | datetime | このクエリがメモリ許可を要求した日付と時刻 |
grant_time | datetime | このクエリのメモリが許可された日付と時刻 |
requested_memory_kb | bigint | 要求されたメモリの合計量 |
granted_memory_kb | bigint | 許可されているメモリの合計量 |
required_memory_kb | bigint | このクエリを実行するために必要な最小メモリ |
used_memory_kb | bigint | この時点で使用されているメモリ量 |
max_used_memory_kb | bigint | この時点までに使用された最大メモリ量 |
query_cost | float | クエリの推定コスト |
timeout_sec | int | このクエリがメモリ許可要求をやめるまでの秒数 |
resource_semaphore_id | smallint | このクエリが待機しているリソースセマフォのID |
queue_id | smallint | このクエリがメモリ許可を待機している待機キューのID |
wait_order | int | 待機クエリの順番 |
is_next_candidate | bit | 次のメモリ許可の候補 |
wait_time_ms | bigint | 待機時間 |
plan_handle | varbinary(64) | このクエリプランの識別子 |
sql_handle | varbinary(64) | このクエリテキストの識別子 |
group_id | int | ワークロードのグループID |
pool_id | int | ワークロードグループが所属するリソースプールのID |
is_small | tinyint | 小さなリソースセマフォの使用有無 |
ideal_memory_kb | bigint | カーディナリティの推定に基づいた必要メモリサイズ |
reserved_worker_count | int | 確保されたワーカー数 |
used_worker_count | int | この時点で使用されているワーカー数 |
max_used_worker_count | int | この時点までに使用された最大ワーカー数 |
reserved_node_bitmap | bigint | ノードを識別するためのビットマップ |
動作例
ハッシュ操作や並べ替え操作が必要なクエリを複数実行した環境で「sys.dm_exec_query_memory_grants」を実行すると、セッションごとのWorkspace Memoryに関する情報が出力されます(図1)。
「grant_time」列に日時が入っている行は、Workspace Memoryを確保できたセッションで、「NULL」の行はまだ確保できていないセッションを示しています。確保できたセッションでは「granted_memory_kb」列で確保したメモリ量を確認することもできます。「wait_order」列では、Workspace Memoryを確保できていないセッションがメモリを確保する順番を確認できます。Workspace Memoryを確保できていない状態でも「requested_memory_kb」が表示されているため、極端にメモリ要求が多い処理があった場合は「sql_handle」列からクエリを確認できます。
Workspace Memoryを確保できていないクエリは「RESOURCE_SEMAPHORE」というセマフォ(排他制御)で待機しており、「sys.dm_exec_requests」から状況を確認できます(図2)。「RESOURCE_SEMAPHORE」待ちについては以前の記事に記載しています。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019 RTM」をインストールした環境を想定して解説しています。
筆者紹介
椎名 武史(しいな たけし)
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
伊東 敏章(いとう としあき)
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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