「Microsoft Edge」のリリースサイクル短縮と新しい拡張安定版チャネルが開始、企業への影響は?:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(112)
Microsoftはこれまで、Chromium版Microsoft Edge安定版のメジャーバージョンを「6週間ごと」のサイクルでリリースしてきました。今後はそのサイクルを「4週間ごと」に短縮し、新たに「8週間ごと」の拡張安定版の提供を開始します。
安定版Edgeのリリースは「6週間ごと」から「4週間ごと」に
「Microsoft Edge」の安定版(Stable)のリリースサイクルは、Chromiumエンジンのリリースサイクルに従います。Chromiumエンジンのリリースサイクルはこれまで「6週間ごと」でしたが、2021年9月第4週にリリースされたバージョン94からは「4週間ごと」に短縮されました。これに伴い、Microsoft Edgeのリリースサイクルもバージョン94以降は「4週間ごと」に短縮されます。
企業が標準利用のブラウザとしてMicrosoft Edgeを採用している場合、メジャーバージョンアップの新機能や変更点が、利用しているWebアプリやサービスに影響する可能性はゼロではありません(エラーが発生する、アクセスできなくなる、など)。
4週間ごとに行われることになる何らかの変更や更新は、安定的な業務運用を望む企業にとっては歓迎できないものでしょう。例えば、Microsoft Edgeの「ポリシー管理用テンプレート」は、メジャーバージョンごとに更新されるため、その都度、入れ替える必要があります。
そうした企業向けにChromiumおよびMicrosoft Edgeは、リリースサイクルの短縮に合わせて、新たに「8週間ごと」にリリースされる「拡張安定版(Extended Stable)」チャネルを用意しました。
- Microsoft Edgeリリーススケジュール(Microsoft Docs)
拡張安定版はバージョン94から始まり、8週間ごとに新しいメジャーバージョンを受け取る新しいオプションです。簡単に言うと、拡張安定版は“安定版の偶数バージョンのみを受け取るオプション”であり、安定版が奇数バージョンのプログラム更新(セキュリティ更新やバグ修正)を受け取っている間も、引き続き1つ前の偶数バージョンの更新プログラムを受け取ります(図1)。
拡張安定版は管理された企業向け
Microsoft Edgeの拡張安定版チャネルの選択は、他の更新設定(インターネットからの更新の禁止など)と同様に、Active DirectoryドメインまたはAzure Active Directory(Azure AD)ドメインに参加するデバイスでのみサポートされる設定です。更新設定は、グループポリシーや「Microsoft Intune」「Microsoft Endpoint Configuration Manager」で構成できます。
グループポリシーで管理する場合、Windows向けのポリシー管理テンプレート(msedge.admxやmsedgeupdate.admxなど)は以下のサイトからダウンロードできます。
- ビジネス向けMicrosoft Edgeのダウンロード(Microsoft)
具体的は、以下のポリシーを設定することで、拡張安定版チャネルに変更できます(画面1)。Active DirectoryドメインやAzure ADドメインに参加していないデバイスでは、この設定は無視されるだけなので注意してください。
- コンピューターの構成\管理用テンプレート\Microsoft Edgeの更新\アプリケーション\Microsoft Edge\ターゲットチャネルの上書き:有効
- ターゲットチャネル:拡張安定
Microsoftは2021年10月21日(米国時間)に、安定版バージョン95をリリースしました。安定版チャネルではその日(またはそれ以降)にバージョン95に更新されましたが、拡張安定版チャネルのデバイスはバージョン95を受け取らず、引き続きバージョン94向けの更新プログラムを受け取ります(2021年10月28日にバージョン94.0.992.57を受け取り、その後もバージョン94の更新が続いています)。拡張安定版チャネルは、2021年11月の第4週にバージョン96を受け取ることになります(画面2)。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Windows 11一般提供開始、企業での導入/展開時に注意すべきポイントは?
MicrosoftはWindowsデスクトップOSの最新バージョンである「Windows 11」を正式にリリースし、Windows 11対応ハードウェアを搭載したWindows 10デバイスに対して、無料アップグレードの段階的なロールアウトを開始しました。 - Windows 11登場! 11で変わること、思ったほど変わらないこと
新しいWindows OS「Windows 11」の正式出荷が2021年10月5日に開始された。Windows 10からの無償アップグレードが可能であるため、どのような新機能が実装されたのか気になる人も多いのではないだろうか。そこで、本稿ではWindows 11の新機能、削除された機能などを簡単にまとめてみた。 - 買って、試して分かったWindows 365(契約・セットアップ編)
Microsoftからクラウド上でWindows 10が動く「クラウドPC」の利用可能なサブスクリプションサービス「Windows 365」の提供が開始された。早速、サブスクリプションを契約し、クラウドPCの設定を行ってみた。契約からセットアップまでで見えてきた便利な点、不便な点などをまとめてみた。 - いよいよ完全終了へ。Internet Explorer(IE)サポート終了スケジュール
長らくWindows OSに標準装備されてきたInternet Explorer(IE)。その「寿命」は各種サポートの終了時期に左右される。Windows OSごとにIEのサポート終了時期を分かりやすく図示しつつ、見えてきた「終わり」について解説する。