Microsoft Officeの製品サポートとサービス接続サポートを再確認:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(114)
Microsoft OfficeとWindowsの組み合わせは、恐らく最も一般的な、そして古くから慣れ親しんでいる企業クライアントPCの構成です。デスクトップアプリケーションとしてのOfficeアプリは現在も提供されていますが、バックエンドとなるサービスは、以前のOfficeサーバ製品からMicrosoft 365(旧称、Office 365)へと切り替わっています。
Officeアプリもクラウド版がメインストリームに
「Microsoft Office」は、単体アプリを含めれば(1985年のMacintosh版「Microsoft Excel」など)、Windowsよりも長い歴史のあるMicrosoft製品です。生産性アプリケーションの統合スイート製品として長くバージョンアップを重ねてきましたが、現在はクラウドサービスとともに提供される「Microsoft 365 Apps」(旧称、Office 365 ProPlus)がメインストリームになりました(画面1)。
“クラウド版”とはいっても、Windows(やmacOS)のローカルにインストールする「サブスクリプション版のデスクトップアプリケーション」であり、企業向けの永続ライセンス製品としてのMicrosoft Officeも引き続き提供されています。なお、Microsoft 365 Appsに対して、企業向けの永続ライセンス製品を「Office LTSC」と呼ぶこともあります。
Microsoft 365 Appsは、適切に更新されている限り、常に最新バージョンが利用可能であり、定期的に新機能が追加されます。一方、Office LTSCはリリース時点の機能に原則として固定され、セキュリティ更新およびバグ修正のみが提供されますが、10年(メインストリーム5年+延長サポート5年)という長期サポートが提供されてきました。
ただし、「Office 2019」のサポート期間は7年(メインストリーム5年+延長サポート2年)に、「Office LTSC 2021」のサポート期間は5年(メインストリーム5年のみ)に短縮されており、MicrosoftとしてはMicrosoft 365 Appsへの移行を強く勧めたいようです(表1)。
製品 | サポート終了日 |
---|---|
Office 2010 | 2020年10月13日 |
Office 2013 | 2023年4月11日(*1) |
Office 2016 | 2025年10月14日 |
Office 2019 | 2025年10月14日 |
Office LTSC 2021 | 2026年10月13日 |
表1 Office LTSCの製品サポート(*1 Office 2013バージョンのOffice 365 ProPlusのサポートは、2017年2月28日に終了済み[参考]製品およびサービスのライフサイクル情報の検索|Office) |
クラウドサービスへの接続性は、Office 2016以降を公式にサポート
Officeアプリを「Microsoft 365」(「Exchange Online」「SharePoint Online」「OneDrive for Business」など)のクライアントとして利用する場合、その接続性については製品のサポート期間中であることに加えて、2020年10月13日以降は「Office 2016」以降にサポートが限定されたことに注意してください。
古いバージョンのOfficeアプリが直ちに接続できなくなるということではありませんが、サポート対象外のバージョンのOfficeアプリは考慮されることがないため、パフォーマンスや信頼性、セキュリティの問題に直面する可能性があります。そして、そうした問題が修正されることは期待できません。
- Microsoft 365 サービスへの接続(Microsoft Docs)
Outlookクライアントのブロックが2021年11月から段階的に開始
Microsoftは2021年8月末、公式ブログでMicrosoft 365に接続可能な「Microsoft Outlook」の最小バージョンの限定について発表しました。2021年11月1日以降、Outlook 2013 Service Pack1(SP1)以降からの接続だけがサポートされ、それ以前のバージョン(Office 2013の場合はSP1なしの5.0.4971.1000以前)からの接続はブロックされるようになります。
- New minimum Outlook for Windows version requirements for Microsoft 365[英語](Microsoft Tech Community)
ただし、2021年11月1日からのブロックの措置は「Office 2007」を対象にとられ、それ以降のバージョンに対しては段階的にブロック措置の範囲が広げられるようです(画面2、画面3)。
古いバージョンのOutlookの問題は、outlook.comで即解決
Microsoft 365のサービスを利用していない場合、Outlookクライアントやその他のOfficeアプリの使用が制限を受けることはありません。製品サポート期間中のバージョンを推奨しますが、サポート期限が切れても利用できなくなるということもありません。
Outlookクライアントが接続をブロックされてしまった場合、Microsoft 365のサービスにアクセスできる資格があれば、Web版のクライアント(outlook.com)を利用することで代替できるでしょう(画面4)。
ただし、outlook.comを含むMicrosoft 365の「Internet Explorer(IE)」のサポートは、2021年8月17日に既に終了しているため、「Microsoft Edge」などのモダンブラウザを利用する必要があります。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Windows 11一般提供開始、企業での導入/展開時に注意すべきポイントは?
MicrosoftはWindowsデスクトップOSの最新バージョンである「Windows 11」を正式にリリースし、Windows 11対応ハードウェアを搭載したWindows 10デバイスに対して、無料アップグレードの段階的なロールアウトを開始しました。 - Windows 11登場! 11で変わること、思ったほど変わらないこと
新しいWindows OS「Windows 11」の正式出荷が2021年10月5日に開始された。Windows 10からの無償アップグレードが可能であるため、どのような新機能が実装されたのか気になる人も多いのではないだろうか。そこで、本稿ではWindows 11の新機能、削除された機能などを簡単にまとめてみた。 - 買って、試して分かったWindows 365(契約・セットアップ編)
Microsoftからクラウド上でWindows 10が動く「クラウドPC」の利用可能なサブスクリプションサービス「Windows 365」の提供が開始された。早速、サブスクリプションを契約し、クラウドPCの設定を行ってみた。契約からセットアップまでで見えてきた便利な点、不便な点などをまとめてみた。 - いよいよ完全終了へ。Internet Explorer(IE)サポート終了スケジュール
長らくWindows OSに標準装備されてきたInternet Explorer(IE)。その「寿命」は各種サポートの終了時期に左右される。Windows OSごとにIEのサポート終了時期を分かりやすく図示しつつ、見えてきた「終わり」について解説する。