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業績の悪い社員を解雇して何が悪いんですか?「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(93)(1/3 ページ)

昭和の経営者は、社員のことを一生面倒見るつもりで雇用してきたじゃないか。それなのに、たった数年評価が低いだけで解雇だなんて……!

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「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説

連載目次

ドライになった会社と社員の関係

 「昭和の会社」は、社員に24時間365日滅私奉公させ、社畜などと呼ばれるほど会社に忠誠を誓わせるイメージがあった。

 ただしその裏には、一度入社した社員はその家族も含めてしっかりと面倒を見る、という「覚悟」が会社にあったことも確かだ。よほど悪いことでもしない限り、会社は定年まで給料を払い続け、その後も退職金や年金によって老後の生活に困らないようにしていた。再就職の世話もしたし、社員旅行や会社の運動会などのレクリエーションなどで社員の家庭サービスを一部肩代わりするような役割もあったのだ(平成時代の社員であった私などからすると、うっとうしいことこの上なかったが)。

 しかし時代は変わった。

 社員たちは新しい活躍の場を求めて自由に転職や独立するようになり、会社も明確な失点や規律違反がなくても「成績が不振だ」という理由で社員を解雇するようになってしまった。会社としては合理的な判断だし、ある部分では社員のモチベーションにつながることもあるだろうから、一概にこうした風潮を否定することはできない。しかし、解雇される社員からすると納得できないことも多いだろう。

 今回取り上げるのは、ある外資系のIT企業がベテラン社員を解雇しようとしたときに起きた紛争が裁判にまで発展したものだ。必ずしも最低レベルであったとはいい切れない成績の社員が、業績評価の不振を理由に解雇を通告された。社員はこれに納得できず、身分の確認と不払い賃金の支払いを求めた。

 さて、この解雇が妥当なものなのかどうか、皆さんはどのようにお考えだろうか。

東京地方裁判所 平成31年2月27日判決から

ある外資系IT企業のプロジェクトマネジャーが数年間の業績評価が不振だったため、解雇を言い渡された。

会社の就業規則には確かに評価の低い社員は解雇される旨記述されていたが、この原告社員は、そもそも業績目標として設定された仕事内容が、自身のスキルやキャリアとはマッチしておらず難易度が高かったこと、確かに業績評価は一時、最低ランクだったが、その後は会社の業績改善プログラム(PIP)に従って改善傾向にあり、今後はさらなる改善が見込めたこと、自分の解雇は自身の業績よりも、むしろ会社全体としての社員削減計画に基づくものであり不当であることなどを主張して訴訟を提起した。

これに対して被告会社は、原告社員は、その業績に改善の見込みはない上、会社が示した対応策としての人事異動などは断り、人事部との面接も拒否するなど不誠実な対応であり、解雇は正当であると反論した。

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