Azure Kubernetes ServiceのWindows Serverノードで「containerd」が正式にサポート:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(163)
Microsoftは2022年1月20日、2021年5月からプレビュー提供していたWindowsノードプールにおける「containerd」のサポートの一般提供開始を発表しました。
コンテナランタイムはDockerからcontainerdへ
「containerd」は、OCI(Open Container Initiative)準拠のオープンソースのコンテナランタイムであり、従来の「Docker」(現在の「Mirantis Container Runtime」)に代わる、コンテナ技術の最新の業界標準です。
同じく業界標準であるコンテナオーケストレーションツール「Kubernetes(K8s)」は、早くからcontainerdへの対応とサポートが行われてきました(Linuxコンテナ向けに先行的に)。「Azure Kubernetes Service(AKS)」も同様です。
Microsoftは2021年5月から、K8s 1.20以降を使用している「Windows Server 2019」のノードプールにおいて、containerdのサポートをプレビュー機能として提供してきました。AKSのWindowsノードプールは、Windowsコンテナをデプロイして実行するための専用のもので、AKSが利用可能な全てのリージョン(日本を含む)でサポートされます。
今回、このcontainerdのサポートがGA(一般提供開始)となったことが発表されました。システム要件に変更はなく、K8s 1.20以降のWindows Server 2019ノードプールで、運用環境のワークロードを実行するために正式に利用できます。
- Generally available: Containerd support for Windows in AKS[英語](Microsoft)
containerdは既にGAになりましたが、現状、K8s 1.20以降であっても、Windows Server 2019のノードプールを作成すると、既定でDockerがランタイムとして選択されます。
containerdのノードプールを作成するには、以下のドキュメントで説明されているように、ノードプール作成時に「--aks-custom-headers WindowsContainerRuntime=containerd」を明示的に指定する必要があります(画面1、画面2)。また、現時点では、事前に「az extension add --name aks-preview」の実行が必要でした。
なお、K8s 1.23以降(現在、AKSではプレビュー提供中。2022年2月にAKSでGA予定)は、Linuxノードプールと同様、Windowsノードプールでもcontainerdのみがランタイムとしてサポートされます。つまり、今後、AKSにおけるWindowsコンテナのサポートは、containerdのみになるということです。
- AKS Kubernetes Release Calendar[英語](Microsoft Docs)
Mirantis Container Runtime/Dockerの商用利用は有償サブスクリプションに
Windows Serverがコンテナ技術に初めて対応した「Windows Server 2016」では、「Docker Enterprise(Docker EE)」のライセンス(使用権)とサポート(Microsoftが窓口)がWindows Serverに付属する形で提供されました。
その後、DockerのEnterprise部門がMirantisに買収され、Docker EnterpriseがMirantis Container Runtime(MCR)に改称されたわけですが、ライセンスやサポートの話が不明瞭になっていました。
2021年、MicrosoftおよびMirantisの双方から方針が発表されました。Microsoftは2022年9月以降、MCRのサポートを終了します。引き続き、MCRをサポート付きで利用したい場合は、Mirantisが提供する有償サブスクリプションを購入する必要があります。Microsoftは、AKSおよびAKS on HCIのcontainerdでのみ、Windowsコンテナを正式にサポートすることになります。
- Updates to the Windows Container Runtime support[英語](Microsoft Tech Community)
- Windows Server container users:Mirantis is here to support you[英語](Mirantis)
また、これまで無償提供されてきた「Docker Desktop」は、2022年2月1日以降、商用利用が規模に応じて有償サブスクリプションに代わります。これは2021年12月に発表され、2022年1月のDocker Desktop 4.4.2のアップデートの際にユーザーに通知されました。
- The Grace Period for the Docker Subscription Service Agreement Ends Soon – Here’s What You Need to Know[英語](Docker Blog)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Windows 11一般提供開始、企業での導入/展開時に注意すべきポイントは?
MicrosoftはWindowsデスクトップOSの最新バージョンである「Windows 11」を正式にリリースし、Windows 11対応ハードウェアを搭載したWindows 10デバイスに対して、無料アップグレードの段階的なロールアウトを開始しました。Windows 11登場! 11で変わること、思ったほど変わらないこと
新しいWindows OS「Windows 11」の正式出荷が2021年10月5日に開始された。Windows 10からの無償アップグレードが可能であるため、どのような新機能が実装されたのか気になる人も多いのではないだろうか。そこで、本稿ではWindows 11の新機能、削除された機能などを簡単にまとめてみた。買って、試して分かったWindows 365(契約・セットアップ編)
Microsoftからクラウド上でWindows 10が動く「クラウドPC」の利用可能なサブスクリプションサービス「Windows 365」の提供が開始された。早速、サブスクリプションを契約し、クラウドPCの設定を行ってみた。契約からセットアップまでで見えてきた便利な点、不便な点などをまとめてみた。いよいよ完全終了へ。Internet Explorer(IE)サポート終了スケジュール
長らくWindows OSに標準装備されてきたInternet Explorer(IE)。その「寿命」は各種サポートの終了時期に左右される。Windows OSごとにIEのサポート終了時期を分かりやすく図示しつつ、見えてきた「終わり」について解説する。