2022年の企業ネットワークは「プライベート5G」に注目!:羽ばたけ!ネットワークエンジニア(48)
2021年にソフトバンクとNTTドコモは5Gの最終形であるSA(Stand Alone)のサービスを開始した。2022年にはSAを生かしたプライベート5Gが始まる予定だ。今回は2022年の企業ネットワークを展望するとともに、プライベート5Gへの期待について述べる。
2020年に携帯電話各社が始めた5GサービスはNSA(Non Stand Alone)と呼ばれ、制御信号のやりとりに4Gの設備を利用し、データパケットの通信だけ5Gの基地局を使う方式だ。5G設備だけでなく既設の4G設備を使うのでNon Stand Aloneというわけだ。4G設備を使うことで5Gのサービスを早期に始めるのがNSAの狙いだ。しかし、NSAでは5Gの3つの特長である「超高速」「超低遅延」「多端末接続」のうち1つ、それも10Gbpsといった超高速ではなく、下りで2Gbps程度の速度しか実現できていない。
SA(Stand Alone)は制御もデータパケットのやりとりも5Gの設備だけで担う方式で、5Gの3つの特長を全て実現できる。2021年秋にソフトバンクとNTTドコモが相次いでSAのサービスを開始した。2022年はSAの上でプライベート5Gも始まる見込みだ。
2022年の企業ネットワークの動向
2022年の企業ネットワークの動向を図1に示す。2021年1月に掲載した連載第36回にも書いた通り、ネットワークのサービス化という大きな傾向は変わらない。ネットワークはユーザーがネットワーク機器や回線を使って「構築する」ものではなく、サービスとして「利用する」ものになったのだ。
図1 2022年版 企業ネットワークの動向 ISDN:Integrated Service Digital network、MVNO:Mobile Virtual Network Operator、NGN:Next Generation Network、NSA:Non Stand Alone、SA:Stand Alone、SASE:Secure Access Service Edge、WVS:Wide Area Virtual Switch
2021年12月に掲載した連載第47回「ローカル5Gより速い! キャリア5Gによる事業所内ネットワークが稼働」で紹介した事業所内5Gネットワークもサービス利用の事例だ。基地局設備やアンテナはキャリア(KDDI)が事業所内に設置し、サービスとして企業に提供している。サービスなので、ローカル5Gと比較して3つのメリットがある。
(1)導入コストが低い
(2)導入が簡単(導入企業は総務省への免許申請が不要、専門知識も不要)
(3)陳腐化しない(技術進歩に応じてサービスが進化する。なお、ローカル5Gは企業が購入した製品が陳腐化する)
ただし、全てをキャリアに任せることはできない。
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