クラウドにバックアップを取るユーザーが最多に、ただし「使い方が不適切」:「バックアップを全く取らない」人が減らない
Backblazeは米国におけるコンピュータデータのバックアップ頻度などに関する年次調査結果を発表した。クラウドバックアップサービスが普及しているものの、バックアップを全く取らないユーザーがなかなか減らないことを指摘している。
クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2022年6月16日(米国時間)、米国におけるコンピュータデータのバックアップ頻度などに関する14回目の年次調査について結果を発表した。
2022年のバックアップ頻度の傾向
調査では、「コンピュータ上の全データをどのくらいの頻度でバックアップしますか」と質問し、回答者は「毎日」「毎週」「毎月」「毎年」「1年以上に1回」「全くしない」という選択肢の中から回答を選んだ。
回答結果を2021年調査と比べると、毎年バックアップしているコンピュータ所有者の割合が1ポイント増加した一方、毎日バックアップしているコンピュータ所有者の割合が1ポイント減少しており、それ以外は2021年調査と同じだった。
懸念材料もある。バックアップを全くしないコンピュータ所有者の割合がここ数年、下げ止まっていることだ。現状では約20%の人が、コンピュータのクラッシュや紛失の際に、全てのデータを失う恐れがあると、同社は述べている。
コンピュータデータのバックアップ頻度別に見たコンピュータ所有者の割合の推移 2008年から2022年までのデータを示した。全くしないユーザー(赤線)の割合が下げ止まっている(提供:Backblaze)
上のグラフを表にしたものを次に示す。
2008年と2022年の回答結果を円グラフにしたものを次に示す。
この2つの円グラフを見ると、時間の経過とともに、各頻度別のコンピュータ所有者の割合が大きく変化しており、特に、バックアップを「全くしない」所有者の割合が著しく低下していることが分かる。
Backblazeは、次のように注意を喚起している。「全体として、コンピュータ所有者は10年前よりも頻繁にバックアップを取るようになっている。だが、バックアップ頻度が少ない人も依然としてかなり多い。バックアップを取らない期間が長いほど、万が一のときに失うデータが多くなる」
バックアップを毎日実行するのは誰なのか
Backblazeは2021年調査の結果を使って、「バッカーアッパー」(Backblazeの造語。「1日1回以上、バックアップを実行するコンピュータ所有者」を指す)の傾向が高いのは、どのような人物なのかを分析した。その結果、次のような属性を持つ人が、バッカーアッパーである傾向が高いことが分かった。
・35〜44歳の女性
バックアップをする人の割合が21%と高い。これに対し、18〜34歳の人は9%、55〜64歳の人は6%にとどまる
・米国西部の在住者
バックアップをする人の割合が17%。南部と中西部の在住者の場合は、それぞれ9%、7%だった
・年間世帯収入が10万ドル以上の人
バックアップをする人の割合が13%。5万〜7万4900ドルの場合は、6%だった
2022年調査の結果を使って同じ分析を進めたところ、統計的に有意な違いはなかったという。
どのようにバックアップしているか
2022年調査では、バックアップをどのように取っているかも尋ねた。その結果、次のことが分かった。
・バックアップをしたことがあるコンピュータ所有者の57%は、主なバックアップ先として「クラウドベース」のシステムを使っている
・コンピュータ所有者の12%は、主なバックアップ方法としてクラウドバックアップサービスを使用している。クラウドバックアップサービス使用者の内訳は次のようになっている。
52%はクラウドバックアップサービスを使って、コンピュータ上の全てのデータを自動的にバックアップすると回答した。
25%はクラウドバックアップサービスを使って、選択したデータのみを無制限にバックアップすると回答した。
9%はクラウドバックアップサービスを使って、選択したデータのみをバックアップするものの、制限があると回答した。
3%は「その他」と回答し、10%は「全く分からない」と回答した。
バックアップをしたことがあるコンピュータ所有者の57%が、データのバックアップにクラウドを使用しているにもかかわらず、クラウドバックアップサービスを使用しているのは12%にすぎない。これについてBackblazeは次のように指摘している。「多くの場合、クラウドドライブやクラウド同期サービスを使ってバックアップを行っていると考えられる。だがクラウドバックアップサービスで提供されるような基本的な自動バックアップタスクを、実際には実行していない可能性がある」
バックアップはなぜ重要なのか
2022年の調査の結果は、これまでの調査結果と同様に、「企業にとっても個人にとっても、適切なバックアップ戦略を実行することが、さまざまなデータ災害を軽減する効果的な方法である」ことを示していると、Backblazeは述べている。
さらに同社は、米国のコンピュータ所有者が次のような割合で問題を経験していることを引き合いに出し、バックアップの重要性を強調している。
・67%が誤って何らかのデータを削除した
・54%がデータを紛失した
・53%がセキュリティインシデントの影響を受けた
・48%が外付けHDDのクラッシュに遭遇した
外付けHDDのクラッシュの21%は、過去1年間に発生した
・44%が、共有ドライブや同期ドライブの削除に伴い、自分のデータにアクセスできなくなった。
さらにBackblazeは「外付けHDDは優れたローカルバックアップ方法だ。だが、上記のように、48%が自宅の外付けHDDのクラッシュを経験している。われわれが定期的に発表しているHDD統計報告でも示されているように、プロフェッショナルな環境でもHDDの故障は発生する。万が一に備えて、オフサイトバックアップ方法を確保することが重要だ」と述べている。
なお今回の調査はBackblazeの委託により、調査会社のHarris Pollが2022年5月19〜23日、米国の18歳以上の成人を対象にオンラインで行った。回答者は2068人で、このうちコンピュータ所有者は1861人だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「クラウド同期」と「クラウドバックアップ」はどこが違うのか
Backblazeはユーザーがクラウド同期とクラウドバックアップを利用してデータを適切に保護できるように、両サービスの違いと類似点を解説した。 - あなたのHDDの寿命は何年なのか
工業製品の故障率は一般に「バスタブ曲線」に従う。初期と末期の故障率が高く、中間期は低い。ところが、Backblazeが自社のデータセンターで利用するHDDについて故障率を調べたところ、バスタブ曲線に従っていないことが分かった。それではHDDの寿命はどのように計算できるのだろうか。 - 「SSD」と「HDD」はどちらが故障しやすいのか?
クラウドストレージを手掛けるBackblazeは、自社データセンターで使ってきたSSDとHDDの故障率の比較結果を報告した。単純な比較ではSSDの故障率が6分の1以下になったが、よく調べてみるとこれとは異なる結果が出た。