大きいサーバって小さいエアコンだけだと熱暴走するんですね:Go AbekawaのGo Global!〜Aaron Farney(前)(3/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はUnwired LogicのAaron Farney(アーロン・ファーニー)さんにお話を伺う。農家に生まれ、忙しくも楽しい10代を過ごしたアーロンさんが日本に憧れたきっかけは「ナショナル ジオグラフィック」だった?
大学の勉強は退屈……そうだ海軍に行こう!
阿部川 高校卒業後は海軍に入隊されますね。卒業後、すぐに入隊されたのですか。
アーロンさん いいえ。実は数カ月ですが大学に通っていたのです。ただ退屈で……。それで大学を辞め、電気工事士として、ホテルやレストランなどの建築現場で働き始めました。4年くらいしていたかな。そうしたらそのうち「違う土地に住んでみたい」と思うようになりました。考えましたね。22歳で、正規の大学教育も受けていない。電気工事士としての稼ぎはあるがそんなに貯金はない。そんな状況で、一番手っ取り早くここを抜け出す方法は何だろうか、と。おー、海軍があるじゃないかと(笑)。すぐに海軍の採用窓口にいって、入隊を志願しました。
阿部川 なぜ海軍を選んだのでしょうか。
アーロンさん とにかくイリノイ州から出たかった、というか米国から出てみたかったのです。海軍ならほぼ世界中に基地があります。陸軍に入っていたら、例えばカンザスとかアイダホとかにずっと住み続けることになったと思います。それはそれで良かったのかも知れませんが、もっといろいろな世界に行きたかった。
勢いで海軍行きを決めたかと思えば、意外としっかり人生設計できているところが素晴らしいですね。後に本人が触れていますが、海軍に入るまでにした仕事はしっかりと後の人生に役立っているものの「ひたすら楽しい」といったものではなかったそうです。だからこそ、それらを一斉に打破する海軍というある意味とっぴな選択をしたのでしょう。結果的にそれが今の仕事につながる大きなブレークスルーになったのだと考えます。
阿部川 なるほど。最初に赴任したのはグレートレイクスですね。
アーロンさん はい、シカゴでブートキャンプに参加し、その後グレートレイクスで学校形式のトレーニングを受けました。その後サンディエゴに移り、23歳のときに通信士として来日しました。海軍は2000年に辞めましたが、来日してからはずっと日本で暮らしています。
阿部川 通算でいうと26年、結構長いですよね。そんなに長いこと日本にいる理由は何でしょうか。
アーロンさん 日本のことが大好きだからです。面白そうな仕事があればすぐに取り掛かれますし、多くの方々は私に非常に良くしてくれます。仕事の機会も豊富にあれば、友人もたくさんおります。言ってみれば私の人生の半分は日本で過ごしていることになりますので。むしろ今米国に戻っても、その違いにショックを受けるのではないでしょうか(笑)。
メンバーが素晴らし過ぎて、いつの間にか退屈になってしまう
阿部川 さて海軍を辞めた後は日本企業に入社されます。
アーロンさん はい、SystemsGoというシステムインテグレーターの会社です。プロジェクトマネジャーとして約3年勤務しました。入社当時はまだ小さかったのですが、現在はアジア地域に幾つもの拠点を持つほどに成長しています。不動産、弁護士事務所など本当にさまざまな業界の方々と会いました。
阿部川 3年勤めた後はQurazに転職されました。
アーロンさん Qurazはトランクルームのマネジメントをビジネスとするスタートアップ企業です。当時、IT部門を強化できる人材を探しており、声をかけてもらいました。IT部門の部長という肩書ではありましたが部下はゼロでした。ただかなりの裁量権を与えてくれたので、ビルディングのマネジメントシステムやエネルギーマネジメントシステム、ITシステムなど、ある程度私が思い描く通りにITシステムを構築できました。IT業界で13年といえば長い期間だと思いますが、それだけやりがいのある仕事でした。
阿部川 スタートアップ企業で13年というと、その間にはビジネスそのものの浮き沈み、組織の成長とあつれき、最高の日や最低の日などなど、さまざまなことがあっただろうと想像するのですが、一番記憶に残っていることは何でしょうか。
アーロンさん 「チームのメンバーに恵まれた」ということですね。ほぼ全てのメンバーが10年以上、一緒に仕事をしてくれました。それほど素晴らしメンバーに恵まれましたから、私がしなければならない仕事はとても簡単なものに集約されてきました。というより、私のやるべき仕事がどんどんなくなり、最終的には毎日やることがなくて退屈になるくらいでした(笑)。
一番の思い出に“人”を挙げるとは……アーロンさん、さてはいい人ですね!
阿部川 では、悪い思い出はありますか?
アーロンさん そうですね、サーバが熱暴走したことがありました。Qurazは日本でかなり最初期にVMware製品を利用した企業だと思います。VMware製品を使って作ったシステムを稼働させるため、Dell Technologiesから大型のサーバを買ったんです。ただ、私はそれまで小型のサーバしか管理したことがなくて。小さなエアコン1つで管理できていましたからまぁ同じ感じで管理できるだろうと高をくくっていたんです。サーバがあれほど熱を放出するとは知らなかった。あっという間にシステムはダウンしてしまいました(笑)。修復するのに結構時間がかかりましたし、上司はもちろん良い顔をしませんでしたね。Dell Technologiesのサポート要員が大慌てで駆け付けて直してくれました。
阿部川 それは大変でしたね(笑)。
幼いころから好奇心の赴くまま、さまざまなことにチャレンジするアーロンさん。失敗もあるが、それもまた次のチャレンジの糧にする。そんなアーロンさんの次のチャレンジとは。後編は同氏が考える“起業の魅力“について。
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