「Windows情報保護」が非推奨リスト入り、今後推奨される新たな情報保護機能「Microsoft Purview」とは?:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(133)
Microsoftは2022年7月、Windows 10で導入された高度な情報保護機能「Windows情報保護(WIP)」を非推奨リストに追加しました。今後は保護ニーズに合わせて、有料サブスクリプションである「Microsoft Purview情報保護」や「Microsoft Purviewデータ損失防止」の使用が勧められています。
Windows 10で登場したWIP、早々に非推奨リスト入りした理由は?
「Windows情報保護(Windows Information Protection:WIP)」は「Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607、RS1)」で正式機能として提供された、Windowsデバイス上の情報保護テクノロジーです。
正式提供される以前は「エンタープライズデータ保護(Enterprise Data Protection、EDP)」と呼ばれていました。この機能は、NTFSの「暗号化ファイルシステム(EFS)」を使用してデータを暗号化して保護します。また、「Azure Information Protection(AIP)」と組み合わせて、デバイスから離れるデータ(例えば、Outlook電子メールメッセージ)にAIPの暗号化保護を適用して保護を継続することもできます。
- 2つの情報保護技術、クラウドのAIPとWindows 10のWIP(その3)(本連載 第13回)
Microsoftは2022年7月22日、以下のドキュメントで公開されているWindowsクライアントの非推奨機能リストに、Windows情報保護を追加しました。また、「Announcing the sunset of Windows Information Protection(WIP)」(WIPのライフサイクル終了に向けた案内)というブログを公開し、そのいきさつや代替ソリューションについて説明しています。
- Windowsクライアント機能のライフサイクル|Windowsクライアントの非推奨機能(Microsoft Docs)
- Announcing the sunset of Windows Information Protection(WIP)[英語](Microsoft Tech Community)
Windows情報保護は「Windows 10」および「Windows 11」の機能であり、Windowsデバイス上でしか利用できません。異種プラットフォーム間で利用できるデータ保護ソリューションや、さまざまなクラウドアプリ/サービスで提供されているデータ保護機能をマルチプラットフォームのエンドポイントに拡張したいという顧客からのニーズがあり、そのようなニーズはWindows情報保護ではカバーできません。
Microsoft Purview情報保護とデータ損失防止
より多くの顧客ニーズに応えるため、Microsoftは「Microsoft Purview」という包括的なデータ保護ソリューションを構築してきました。Microsoft Purviewは、以前は「Azure Purview」と呼ばれていたものと、「Microsoft 365」が備えるコンプライアンスソリューションを1つのブランドにまとめたものです。
- Microsoft Purview − データ保護のソリューション(Microsoft Security)
Microsoft Purviewにはさまざまな機能が用意されていますが、Windows情報保護の代替としては、「Microsoft Purview情報保護(Information Protection)」と「Microsoft Purviewデータ損失防止(Data Loss Prevention:DLP)」が該当します。
Microsoft Purview情報保護を使用すると、機密情報がどの場所に保存されていても、それが移動されても、情報の検出や分類、保護ができるように、データの把握と保護、損失防止のためのツールを提供します(画面1)。
名称変更やサービスの再編が繰り返されてきたため混乱しますが、Microsoft Purview情報保護は、以前は「Microsoft Information Protection(MIP)」と呼ばれていたもので、さらに「Azure Information Protection(AIP)」はMIPの一部という位置付けでした。
Microsoft Purviewデータ損失防止は、「Office 365」アプリや「Microsoft OneDrive」「Microsoft Edge」「Microsoft SharePoint」「Microsoft Teams」、Windows(エージェント不要)およびmacOSのエンドポイントの全てにわたって、機密情報の検出と暗号化制御を行います(画面2)。
利用にはMicrosoft 365 E5またはMicrosoft 365 E5 Complianceが必要
Microsoft Purview情報保護とMicrosoft Purviewデータ損失保護は、「Microsoft 365 E5」ライセンスに含まれます。また、現在、「Enterprise Mobility+Security E3」「Office 365 E3」「Microsoft 365 E3」のライセンスを利用している場合は、「Microsoft 365 E5 Compliance」ライセンスを購入(1300円ユーザー/月:税別)することで利用できます。購入要件のライセンスを持っている場合は、90日の無料試用版にサインアップして試用することも可能です。
- Microsoft 365 E5 Compliance(Microsoft Security)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Windows 11一般提供開始、企業での導入/展開時に注意すべきポイントは?
MicrosoftはWindowsデスクトップOSの最新バージョンである「Windows 11」を正式にリリースし、Windows 11対応ハードウェアを搭載したWindows 10デバイスに対して、無料アップグレードの段階的なロールアウトを開始しました。 - Windows 11登場! 11で変わること、思ったほど変わらないこと
新しいWindows OS「Windows 11」の正式出荷が2021年10月5日に開始された。Windows 10からの無償アップグレードが可能であるため、どのような新機能が実装されたのか気になる人も多いのではないだろうか。そこで、本稿ではWindows 11の新機能、削除された機能などを簡単にまとめてみた。 - 買って、試して分かったWindows 365(契約・セットアップ編)
Microsoftからクラウド上でWindows 10が動く「クラウドPC」の利用可能なサブスクリプションサービス「Windows 365」の提供が開始された。早速、サブスクリプションを契約し、クラウドPCの設定を行ってみた。契約からセットアップまでで見えてきた便利な点、不便な点などをまとめてみた。 - いよいよ完全終了へ。Internet Explorer(IE)サポート終了スケジュール
長らくWindows OSに標準装備されてきたInternet Explorer(IE)。その「寿命」は各種サポートの終了時期に左右される。Windows OSごとにIEのサポート終了時期を分かりやすく図示しつつ、見えてきた「終わり」について解説する。