2023年、企業ネットワークを進化させる3大要因とは?:羽ばたけ!ネットワークエンジニア(60)
新しい年が始まった。2023年に企業ネットワークを進化させる要因は何であり、それらを活用するとどのようなメリットが得られるのだろうか。筆者の取り組みを基に述べたい。
筆者は2021年4月から現在に至るまで、キャリア5Gによる企業内5Gネットワークの構築、クラウドPBXの導入支援、これらを広げるための提案活動を行っている。その経験を踏まえて、2023年に企業ネットワークを進化させる3大要因を述べる。
ローカル5G実証実験ブームは終わり、キャリア5Gの活用へ
この数年の企業ネットワークの動向を図1に示す。
2019年12月に制度化されたローカル5Gは、2020年から2021年ごろまでは実証実験がブームになったが、2022年には実証実験がニュースになることも少なくなった。補助金を使って短期間の実証実験は行われるものの、実用化された事例はあまり聞かない。総務省が公開しているローカル5Gの免許人(免許を取得した法人など)は2022年11月末時点で126者だが、その大部分はITベンダー、通信事業者、CATV事業者、SIerなどローカル5Gを売る立場にある企業だ。
一方のキャリア5G(大手携帯通信事業者による一般向けの5Gサービス)は、2020年春に各社のサービスが始まり、企業における実験や実用が始まった。後述するように企業は今後、キャリア5Gの活用に注力すべきだ。
ランサムウェアによる被害は相変わらず多発している。ランサムウェアが攻撃の入り口にしているのはVPN装置が多いというのも相変わらずだ。しかも、2019年や2020年に明らかになった脆弱(ぜいじゃく)性が原因になっている。VPNのパッチ対応がなされていないのだ。継続的なセキュリティ対策は企業ネットワークにとって最重要なことだ。SASE(セキュアアクセスサービスエッジ)のような高度な仕組みを導入する以前に、「脆弱性情報をきちんと受け取って対処する」という当たり前の運用ができるように体制やセキュリティベンダーとの契約を整えるべきだ。
通信サービスとして筆者が期待しているのは、キャリアのプライベート5Gだ。2022年1月には、「2022年の企業ネットワークは『プライベート5G』に注目!」を本欄に書いた。ソフトバンクが2020年5月に「2022年からプライベート5Gのサービスを始める」とニュースリリースを出していたからだ。残念ながら2023年1月現在、ソフトバンクのプライベート5Gはまだ始まっていない。しかし、ソフトバンクに限らず2023年にはプライベート5Gが始まるものと期待している。
プライベート5Gでは、ユーザー企業に帯域を専有させたり、ネットワークスライシングを使って用途別にネットワークを論理的に分割したりできるようになる。キャリア5Gをローカル5G同様、専用ネットワーク的に使えるようになるのだ。
非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)として注目されているのが低周回軌道衛星を使った衛星通信サービスだ。米Space Exploration Technologies(スペースX)は日本で一般ユーザー向けインターネット接続サービス「Starlink」を2022年9月から始めた。KDDIはスペースXと提携し、同年12月からStarlinkをバックホール(基地局をモバイル網に接続する回線)として使うSatellite Mobile Linkを開始した。企業や自治体にStarlinkのアンテナを設置して衛星回線を使うStarlink Businessの提供も始めるという。BCP(事業継続計画)対策や地上系の回線でカバーできないへき地の工事現場などでの利用が進みそうだ。
企業ネットワークを進化させる3大要因
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