日本は「他社で解雇されたサイバーセキュリティ人材採用」に前向き (ISC)2:不況で「サイバーセキュリティ部門の優位性」が高まる
(ISC)2は、調査レポート「How the Cybersecurity Workforce Will Weather a Recession」を発表した。景気後退局面がサイバーセキュリティ部門に与える影響を評価したもので、同社は「サイバーセキュリティ部門の戦略的優位性が高まっている」としている。
“(ISC)2”(International Information Systems Security Certification Consortium)は2023年2月24日、調査レポート「How the Cybersecurity Workforce Will Weather a Recession」を発表した。これは日本、米国、英国、ドイツ、シンガポールの5カ国で、Cレベルの企業経営陣(CEOなど頭に「C」が付く職位)を対象に実施した調査で、景気後退局面がサイバーセキュリティ部門に与える影響を評価したもの。
サイバーセキュリティの人員削減は最後?
2023年に人員削減を予定している分野について聞くと、各分野において20%前後の人員削減が想定されていたが、サイバーセキュリティ分野については比較的少なく、10%だった。(ISC)2は「景気後退局面でサイバー脅威の増加が見込まれることから、サイバーセキュリティ部門の戦略的優位性が高まることが明らかになった」と述べている。
2023年に自社でレイオフ(再雇用を前提とした一時的な解雇)が必要になると予想している企業の割合は85%。国別に見ると、日本はその割合が最も高く82%、米国は79%、英国は75%、ドイツは74%、シンガポールは68%だった。
景気後退局面で人員を削減する可能性があるとした日本企業の割合を部門別に見ると「人事」が53%、「財務」が45%、「調達、生産物流」が37%、「営業」が34%、「マーケティング」が28%、「サイバーセキュリティ」が14%だった。
「経営層は新たにチームを作ることの難しさを分かっている」
「サイバーセキュリティ人材の削減がサイバー攻撃に対するリスクの増大につながる」と考えている企業の割合が日本では88%と高く、(ISC)2は「高い技術力を備える熟練労働者が不足する中、経営層はサイバーセキュリティチームの構築が困難だと知っている」と分析している。
レイオフ後、優先的に採用または再雇用する人材を部門別に見ると、日本ではIT部門が最も高く、54%。次いでサイバーセキュリティ部門(50%)、研究開発(46%)などが挙がった。なお、人事分野は最も低く、23%だった。また、「他社で解雇されたサイバーセキュリティ人材採用に前向きだ」と回答した日本企業は72%で、「過去2〜3年の間にサイバーセキュリティ部門の採用を増やした」と回答した日本企業は90%に達した。
(ISC)2のクレア・ロッソ氏(CEO)は、「経済情勢が不透明な状況でも、企業経営陣がサイバーセキュリティの専門家を重要視していることが分かった。予算削減の圧力が高まる中、2023年は進化するサイバー脅威に対する企業のレジリエンスを強化するための取り組みを持続できるかどうかが大きな試練になる」と指摘している。
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