結局のところ、Windows 10の「Internet Explorer」はいつ無効化されたのか?――IE終了の真相:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(230)
日本時間の2023年2月14日、MicrosoftがWindows 10の特定バージョンで、デスクトップアプリケーションとしてのIE 11を完全に無効化したというニュースが飛び交いました。実際、その日になって、IEでWebサイトにアクセスできないのを目の当たりにした人は「とうとう無効化されたか」と思ったことでしょう。でも、IEが無効化されたのは本当にその日だったのでしょうか。サポートが終了してもうだいぶたつのでどうでもよいことなのですが、無効化されるその日、その瞬間に立ち会ってみました。
時差の関係で「2023年2月14日」(日本時間)に無効化処理の一部が発動?
ご存じのように、「Windows 10」上での「Internet Explorer(IE)」のサポートは「2022年6月15日」をもって既に終了しています。しかし、その後もWindows 10でIEを利用することは引き続き可能でした。デスクトップアプリとしてのIEの無効化は、以下のFAQで予告されていたように、「2023年2月14日」に行われることが決まっていました。
- Internet Explorer 11 desktop app retirement FAQ[英語](Microsoft Tech Community:Windows IT Pro Blog)
日本時間で2月14日のその日に、Windows 10でIEを開いてみて、以下の画面1のような挙動を目にした人はいないでしょうか。アクセスしたいURLを入力しても「このWebサイトはInternet Explorerでは動作しません」というページにリダイレクトされ、代わりに「Microsoft Edge」でそのページが開かれるという挙動です。
この以前とは違うように見える挙動から、とうとうIEが無効化されたと思った人もいるでしょう。しかし、この時点では実際にはまだ無効化されていませんでした。この挙動は、2022年6月のIEのサポート終了に向けて追加された、以前からある「Microsoft Edgeのリダイレクト機能」の動作であり、互換性のないサイトにアクセスしたときの、これまでの挙動と変わっていません。スタートページが「互換性のないサイト」のリストに入っているのでしょう。画面2を見てください。2月14日になっても、IEを利用できたWindows 10もあります。
再度、画面1をよく見てください。デスクトップアプリとしてのIEは起動できています。つまり、この時点ではまだ完全に無効化されていなかった
のです。FAQにあるように、無効化は、最初に予定されていた「Windows Update」ではなく、「Microsoft Edge Update」(Microsoft Edge自身の更新機能)で2月14日以降にデバイスに配布されることになっています。日本時間ではそれは2月15日以降です。
この2台のWindows 10デバイスの違いは、Microsoft Edgeの「設定|既定のブラウザー」(edge://settings/defaultBrowser)にあった、「Internet Explorerの互換性」の設定がどうなっていたかに依存します(画面3)。
画面2のWindows 10デバイスは、「Internet ExplorerにMicrosoft Edgeでサイトを開かせる:なし」に設定されていました。既定は「互換性のないサイトのみ」なので、設定を変更していなければ画面1のような挙動になります。
以前と挙動は変わっていないといいましたが、ローカル時間で2月14日に切り替わったときに1つ変わったことがあります。2月14日以降、Microsoft Edgeの「設定|既定のブラウザー」から「Internet Explorerの互換性」が消えてなくなったのです(前出の画面2)。
「Internet Explorerの互換性」が消えてしまったので、このUIから設定を変更することはできなくなります。この挙動は、2月14日になればIEが利用できなくなることを想定してのものと思われます。もし、この設定を開いてまだ表示されるという場合は、ページを再読み込みしてみてください。「Internet Explorerの互換性」の項目は消えてしまうはずです。
“真の無効化アップデート”は2月17日にやってきた!
2月15日には、Microsoft Edgeの「バージョン110.0.1587.46」がリリースされましたが、このバージョンでIEが無効化されることはありませんでした。IEが無効化されたのは、2月17日の「バージョン110.0.1587.49」でした。
Microsoft Edge バージョン110.0.1587.49になってから、それまでIEを利用できていたデバイスでスタートメニューからIEを起動すると(Windowsアクセサリ\Internet Explorer)、IEの真っ白なウィンドウが表示された後、「Internet ExploreはMicrosoft Edgeに移行しました」というポップアップウィンドウが表示され、「続行」をクリックすると、Microsoft Edgeが開き、「マイクロソフトエッジへようこそ」の画面にリダイレクトされました(画面4)。
その後のIEの起動では、IEの真っ白なウィンドウが一瞬表示された後、そのウィンドウは閉じられ、Microsoft Edgeが開くようになりました。つまり、これでようやくIEが完全に無効化されたというわけです(注意:Microsoft Edgeの「IEモード」を機能させるため、IEのバイナリが削除されることはありません)。なお、もともとIEを利用できない設定(「常に」リダイレクトするように設定)にしていた場合は、ポップアップ通知は表示されないと思います。
IEに関しては今後、2023年6月14日(日本時間)に提供されるセキュリティ更新(Bリリース)に含まれる形で、IEのアイコンやスタートメニュー、タスクバーなど視覚的な参照が削除されることが予定されています。
Windows 10 LTSCはIE無効化の対象外
今回の措置は、IEの無効化対象外のWindows 10(Windows 10 Enterprise LTSC 2021など)やWindows Serverには影響ありません(画面5)。
![画面5](https://image.itmedia.co.jp/ait/articles/2303/01/vol230_scrreen05.png)
画面5 Windows 10 LTSCバージョンはIE無効化の対象外なので、引き続き利用可能。「Internet Explorerの互換性」の設定を変更したい場合は、日付を2月13日以前に一時的に戻すか、ポリシー設定を利用する
筆者が確認した限り、Windows 10 Enterprise評価版も対象外のようです。しかし、Microsoft Edgeの「設定|既定のブラウザー」からの「Internet Explorerの互換性」の削除は、同じく無効化対象外のWindows Serverを含む、全てのMicrosoft Edgeでそうなるようです。
無効化対象外のデバイスで前出の画面1のような挙動を示し、IEが使い物にならない、あるいは「Internet Explorerの互換性」を調整したいという場合は、日付を2月13日以前に戻すと「Internet Explorerの互換性」が復活するので設定変更(Microsoft Edge にリダイレクト:なし、など)が可能になります。
Microsoft Edgeの以下のポリシーでも設定できますが、ポリシーテンプレートはダウンロード提供であるため、それをダウンロードして適切な場所に配置するという手間があります。
- 管理用テンプレート\Microsoft Edge - 既定の設定(ユーザーはオーバーライドできます)\互換性のないサイトを Internet Explorer から Microsoft Edge にリダイレクト
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Windows 11一般提供開始、企業での導入/展開時に注意すべきポイントは?
MicrosoftはWindowsデスクトップOSの最新バージョンである「Windows 11」を正式にリリースし、Windows 11対応ハードウェアを搭載したWindows 10デバイスに対して、無料アップグレードの段階的なロールアウトを開始しました。Windows 11登場! 11で変わること、思ったほど変わらないこと
新しいWindows OS「Windows 11」の正式出荷が2021年10月5日に開始された。Windows 10からの無償アップグレードが可能であるため、どのような新機能が実装されたのか気になる人も多いのではないだろうか。そこで、本稿ではWindows 11の新機能、削除された機能などを簡単にまとめてみた。買って、試して分かったWindows 365(契約・セットアップ編)
Microsoftからクラウド上でWindows 10が動く「クラウドPC」の利用可能なサブスクリプションサービス「Windows 365」の提供が開始された。早速、サブスクリプションを契約し、クラウドPCの設定を行ってみた。契約からセットアップまでで見えてきた便利な点、不便な点などをまとめてみた。いよいよ完全終了へ。Internet Explorer(IE)サポート終了スケジュール
長らくWindows OSに標準装備されてきたInternet Explorer(IE)。その「寿命」は各種サポートの終了時期に左右される。Windows OSごとにIEのサポート終了時期を分かりやすく図示しつつ、見えてきた「終わり」について解説する。