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ストア版「Microsoft Defender」アプリの“強制インストールが始まる”は勘違い?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(231)

1年ほど前からMicrosoft Storeで「Microsoft Defender」アプリが利用可能になっていることに気付いた方はいるでしょうか(当初は「Preview」)。このアプリがいったい何者なのかはさておき、“Microsoftがこのアプリの自動配布を開始した”“強制的な自動インストールが始まった”といった、誤解を与えそうな記事を幾つか見掛けました。今回はその真実を明らかにします。

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Windowsにまつわる都市伝説

ストア版Microsoft Defenderアプリはウイルス対策ソフトウェアではない!

 もし、あなたがWindows向けのウイルス対策ソフトウェアを探しているとして、Microsoft Storeにある「Microsoft Defender」アプリを検討しているのなら、ちょっと待ってください(画面1)。

画面1
画面1 Microsoft Storeで提供されている「Microsoft Defender」アプリ

 「Windows 10」や「Windows 11」には、「Microsoft Defenderウイルス対策(Microsoft Defender Antivirus)」が標準搭載されており、他社のウイルス対策ソフトウェアがインストールされていなければ既定で有効になります。Microsoft Defenderウイルス対策を含むセキュリティ機能の状態や管理は、「Windowsセキュリティ」アプリに統合されています(画面2)。

画面2
画面2 Windows 10/11では、他社のウイルス対策ソフトウェアがインストールされていない限り、追加コストなしでMicrosoft Defenderウイルス対策によって保護される

 Microsoft Defenderウイルス対策は、定期的なスキャンやリアルタイム保護によるウイルスやマルウェアの検出と駆除、ネットワーク検査システム(Network Inspection System、NIS)、オフラインスキャンといった脅威からの基本的な保護機能を提供します。また、Windows10/11が備える「アカウント保護(Windows Hello)」「Windows Defenderファイアウォール」「Microsoft Defender Smart Screen」「Exploit Protection」「保護者による制限(Microsoft Family Safety)」などのセキュリティ機能とともに、さまざまな脅威に対して多重で防御してくれています。これらの機能はWindowsに組み込まれているものであり、追加のコストは必要ありません。

 では、Microsoft Storeに存在する「Microsoft Defender」アプリとはいったい何者なのでしょうか。

 本連載第213回で詳しく説明した通り、「個人用Microsoft Defender(Microsoft Defender for individuals)」のダッシュボードを提供するものであり、個人の複数のデバイスや家族のデバイスの保護状態をビジュアルに表示するものです。デバイスが他社のウイルス対策ソフトウェアで保護されている場合でも、(「Windowsセキュリティ」アプリがそうであるのと同じように)「Microsoft Defender」アプリで保護状態を確認できるようです。

 そして、個人用Microsoft Defenderは、「Microsoft 365」アプリ(Officeアプリ)、メール、クラウドストレージなどとともに、サブスクリプション製品「Microsoft 365 Personal」および「Microsoft 365 Family」に含まれます(画面3)。

画面3
画面3 個人用Microsoft Defender(Microsoft Defender for individuals)は、個人/家庭向けMicrosoft 365サブスクリプションの一部

 企業向けのMicrosoft Defender(「Microsoft Defender for Endpoint」や「Microsoft 365 Defender」など)では、Microsoft Storeの「Microsoft Defender」アプリに相当するダッシュボード機能が、管理者向けのセキュリティポータルとして提供されます。そのため、企業向けMicrosoft Defenderが利用可能な企業向けMicrosoft 365サブスクリプションユーザーのデバイスに、Microsoft Storeの「Microsoft Defender」アプリが自動インストールされることはありませんし、この個人/家庭向けアプリで企業向けMicrosoft Defenderを管理することもできません。

不可解な自動インストール開始情報、その出どころは?

 これまでも「Microsoft 365 Personal」や「Microsoft 365 Family」サブスクリプションを契約しているユーザーは、Microsoft Storeから「Microsoft Defender」アプリを入手して、無料で利用することができ、個人や家族のセキュリティ保護状態を確認することができました。

 Microsoftは以下のドキュメントで説明しているように、2023年2月下旬以降、Microsoft 365アプリ(ただし、個人用Microsoft Defenderを含むPersonalおよびFamily向け)のインストーラーに、Microsoft Storeで提供している「Microsoft Defender」アプリを統合しました。

 そのため、Microsoft 365 PersonalやMicrosoft 365 Familyサブスクリプションを新規契約し、アプリをインストールしたユーザーのデバイスには最初から「Microsoft Defender」アプリがインストールされます。また、既にMicrosoft 365アプリをインストールしているMicrosoft 365 PersonalやMicrosoft 365 Familyのユーザーのデバイスには、2023年2月下旬以降の次回アプリ更新時に「Microsoft Defender」アプリが自動的にインストールされます。

 いってみれば、「Microsoft Access」や「Microsoft Publisher」を全く使うことがなくても、サブスクリプションに含まれるのであれば、Microsoft 365アプリの一部としてインストールされるし、含まれないのであればインストールされない(個人用Microsoft Defenderが含まれないサブスクリプションや永続ライセンス製品にはインストールされない)のと同じ扱いになったということです。

 個人用Microsoft Defenderを利用可能なサブスクリプションを契約していないユーザーのデバイスに、Microsoft Storeの「Microsoft Defender」アプリが自動インストールされることはありません。企業向けのMicrosoft 365サブスクリプションも、Microsoft Storeの「Microsoft Defender」アプリのインストール対象外です。

 個人用Microsoft Defenderを利用可能でないユーザーが、自身のWindowsデバイスにMicrosoft Storeから「Microsoft Defender」アプリを入手してインストールすることは可能です。しかし、このアプリを利用するには、「Microsoftアカウント」でサインインし、さらにMicrosoft 365 PersonalまたはMicrosoft 365 Familyサブスクリプションの契約がないのであれば利用できません。契約がない場合は、親切なことに、Microsoft Storeの「Microsoft Defender」アプリは購入ページまで誘導してくれます(画面4)。Microsoft 365サブスクリプションを購入するつもりがないなら、誤って購入してしまわないように注意してください。

画面4
画面4 個人用Microsoft Defenderを利用可能でないユーザーがMicrosoft Storeの「Microsoft Defender」アプリをインストールすることは可能だが、その場合、Microsoft 365サブスクリプションの購入へと進む

 Microsoft Storeの「Microsoft Defender」アプリが、Microsoft Defenderウイルス対策を置き換える高機能版と勘違いしてこのアプリをインストールしてしまった場合は、「設定」の「アプリ」を開いて、「Microsoft Defender」アプリをアンインストールしましょう(画面5)。

画面5
画面5 誤って「Microsoft Defender」アプリをインストールしてしまったら、アンインストールしよう

 「Microsoft Defender」アプリをアンインストールしたからといって、標準のMicrosoft Defenderウイルス対策がアンインストールされることはありません。「Microsoft Defender」アプリと「Microsoft Defenderウイルス対策」は名前が似ているだけであり、あくまでも別物です。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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