セキュリティスキルはポッドキャストで身に付けた:Go AbekawaのGo Global!〜Julian Garthwaite(前)(2/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はセキュリティエンジニアのJulian Garthwaite(ジュリアン・ガースウェイト)さんにお話を伺う。ニュージーランドの自然豊かな場所で生まれ育った同氏の将来の夢は「弁護士か政治家になって自国に貢献すること」。そんなジュリアンさんが技術の道に進んだ理由とは。
大学の思い出は「歴史と技術、そして人」
阿部川 ニュージーランドの政治家もジュリアンさんも、自国に貢献したいという気持ちが強いのですね。少し話を戻しまして、学生のときに得意な科目は何でしたか。
ジュリアンさん コンピュータと歴史です。特に歴史は大好きで、2度の世界大戦や冷戦時代のことを学ぶことが好きでした。ニュージーランドの歴史は1840年くらいからようやく西洋史に登場するくらいで面白くありませんが(笑)。当時は「なぜ米国とロシア(当時はソビエト連邦)は仲が悪いのか」などを考えていました。自国のことというより、世界の視点の歴史が好きです。
歴史上、人間は多くの失敗を経験していますが、そこから学べることは多いと思います。失敗から学ぶことで個人としても、人間としても成長すると思っています。私自身、毎日のように失敗していますから(笑)。
阿部川 コンピュータ(理科学)と歴史(社会科学)というのは良いバランスですね。大学は、サザン・インステュート・オブ・テクノロジー(SIT)ですね。最初から技術の学校に行くと決めていたのですか。
ジュリアンさん 選択肢は幾つかありました。SIT以外の学校の入試も受けましたし、オークランドでも有名な大学も受験しました。ただ私はまだ幼かったので、自分の人生の方向性を決めるときに自分だけで決めず、母親の助言を参考にしました。「一生コンピュータを使って過ごしたいと思ったら、技術を知らないと駄目だよ」と。母の助言は(自分の人生の選択において)大きな影響を持っていましたし、私もある意味、従順でした。
阿部川 大学で学んだことで何が印象に残っていますか。
ジュリアンさん 1番はネットワーク技術だと思います。没頭しましたし、今でもそれは続いています。勉強以外でいえば生涯にわたる友人と出会えたことでしょうか。みなコンピュータ技術に対して並々ならない情熱を持ち、最先端の技術を喜々として学んでいました。単に学ぶことを超えた、人間同士のつながりが作れたと思います。そういった友人たちとは卒業後もニュージーランドで一緒に仕事をしました。私が日本に行ってからも仕事をする機会がありました。
阿部川 素晴らしい出会いでしたね。
ジュリアンさん はい。みんなコンピュータに心酔していましたし、技術的にも全てが黎明(れいめい)期でした。「Twitter」やポッドキャスティングなど、アプリケーションレベルでもコンセプトという意味でも、未来を予想させるものが世の中に出てきた時期でした。私はそれらの将来性や可能性に興奮していました。
阿部川 大学院に進学するなどしてそのまま技術を極めようとは思わなかったのですか。
ジュリアンさん いやぁ、当時はビデオゲームの攻略に夢中だったので(笑)。ゲームを続けられる仕事が欲しかったな。大学時代は、半分は勉強、もう半分はゲームに費やしましたね。時間の無駄だと言う人もいますが……。
阿部川 いえいえ、そんなことはありませんよ。プロのゲームプレイヤーという職業もありますしね。ちなみに、そちらの道は考えませんでしたか。
ジュリアンさん そんな幻想は抱きませんでした。プロゲームプレイヤーになって賞金を稼げるようになる確率は、0.001%もないと思いますので。ただITが楽しいと言う感覚はありましたし、仕事がよりできるようになるために、もっと勉強したいという思いがありました。
道を示してくれた大切な友人
阿部川 卒業後、NetBase Technologiesに入社されます。
ジュリアンさん はい。主に「PHP」や「MySQL」を使う仕事でした。企業で「ビジネスとして開発をする」という最初の体験でした。もちろん、アルバイトなどでいろいろな仕事は経験してきましたが、就職という意味ではこれが初めてです。
そこに2年ほど勤めて、Colmar Bruntonに転職しました。ネットワークとセキュリティサービスの企業ですが、ビジネスの中心は世論調査で、バーチャライゼーションなど最先端の技術に特化した技術を用いて、政治調査やオピニオン調査などもやりました。とても良い仕事でした。どちらかといえばセキュリティよりネットワークが主体の仕事でしたが、対応を続けるうちに「技術として進化させるためにはどういったストラクチャがいいだろうか」「自分は情熱を持って取り組めるだろうか」などと考えるようになりました。
阿部川 Colmar Bruntonでの仕事でセキュリティに興味を持ったのですか? あるいはセキュリティそのものにずっと興味があって、それがより強くなったのですか。
ジュリアンさん 前者ですね。仕事のスキルを上げるためにセキュリティに関するポッドキャストを毎週聞くようになりました。そのうち、セキュリティやその周辺の技術を深く知ることができるようになったと思います。
私は「ハンマーを持つと全ての問題がくぎに見える」(本質を理解するには多角的な視点が必要という意味)という言葉が好きです。ジュリアンさんはColmar Bruntonで、大学での学び(ネットワーク技術)を生かしつつ、マーケティング的な要素を学んだことで、その視点を手に入れたのだと考えます。きっとこの会社での経験によって、エンジニアとしての視野が一気に広がったのではないでしょうか。
阿部川 その後、通信会社であるSpark New Zealandに転職します。
ジュリアンさん はい。当時はTelecom New Zealandという名前でした。ITプロバイダーでもあり、電話、モバイルなどの通信も提供する総合的なテレコミュニケーション企業でした。年俸もいきなり数万ドル跳ね上がったので、小さな町におさらばして(笑)、私にとっては大都会のオークランドに引っ越しました。正しい決断だったと思います。
阿部川 入社されたきっかけは何だったのですか。
ジュリアンさん 友人のBenが紹介してくれました。彼にはとても感謝しています。良い友人がいると人生の大事なところで勇気や機会をくれるものですね。
阿部川 リクルーターの間では「良い人は良い友人を持っている」といわれ、コネクションは良い人材を得る方法として知られています。
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