取りあえず動く、でいいじゃないか:仕事が「つまんない」ままでいいの?(103)(1/3 ページ)
仕事をしていると、「どうすれば、この問題を解決できるのか?」が分からないことがあります。周囲に理解されないことも数知れません。それでも自分の中で何かが燃え始めたのなら、やるべきことは1つだけです。
先日、ある製造業の会社で働く女性Aさんと話をする機会がありました。
Aさんは、ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)の業務に関わっています。ダイバーシティーとは、多様な個性を尊重すること。インクルージョンとは、多様な人たちが集える場を形成すること。最近よく耳にする言葉ですよね。
製造業といえば、決められた製品を、決められた工程や作業手順通りに、決められた時間内で作る仕事です。企業に置けるD&Iを「多様な人たちが、多様な形で活躍できる」と置いたとき、ひょっとしたらD&Iとは対局にある業種かもしれません。
Aさんの会社でも、製造現場で働いていた女性から「子どもを出産して職場復帰したいが、時短勤務が可能か?」といった相談が寄せられるそうです。女性に限らず、多様な働き方ができるようにするのは社会的な要請でもあります。
でも、以下のような理由から、対応が難しいケースが多いそうです。
- 製造現場は「健康な人」が「フルタイム」で働くことを前提に作られているため、時短や急な労働時間の調整など、人員の割り振り上難しい
- 多様な働き方に対応するためには、時間や在庫などの「余裕」が必要だが、「決められたことを」「いかに短時間で」「在庫を持たないようにするか」が最大課題である製造現場では、多様な働き方自体の考えが浸透しにくい
- 製造現場は「決められたことを」「決まった通りに」行うことや、現在の業務を改善することには長(た)けているが、仮に、在宅勤務のような働き方を取り入れても、何をすればいいのか分からない
- 製造現場は無理でも、他の部署なら多様な働き方可能な場合、他部署への移動を促すと「いままでの経験が無駄になってしまうのではないか」と不安を抱く社員が多い
- 製造現場で働く人は、社員もいれば、非正規雇用の社員もおり、仕事に対する背景や意識がさまざま。多様な働き方に対する意識を醸成するのが難しく、特定の1人に多様な働き方を取り入れると「なぜ、○○さんだけ」といった意見が出てくる
- 多くの責任者はずっと製造現場で育ってきており、相談しても、そもそも多様な働き方の前提がなく、理解を得るのが難しい
その結果、多様な働き方ができないために、いままで築いてきたキャリアを分断せざるを得なかったり、未来を描けず退職に追い込まれたりするケースも多いそうです。
Aさんは、こう言います。
「現在のままでは、出産や育児、介護などの事情がある社員はキャリアを継続できません。しかも、最近は人材不足で採用が難しくなってきていますから、会社としても離職は避けたい。だから私は、多様な働き方ができる職場にしたいし、さまざまな制約がある社員でもキャリアを継続できるようにしたいんです。『会社を辞めなくてもいいんだ』というロールモデルになりたいんですよね」
周囲からの理解を得るために、孤軍奮闘しているそうです。この話を聞いて、私の胸は熱くなりました。それと同時に、何ともいえない虚無感に襲われました。
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