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働く時間の約2割がPCトラブルでムダに? コペンハーゲン大学らの研究「ユーザーが開発に関与することも重要」

コペンハーゲン大学とロスキレ大学の研究チームは、働く時間の11〜20%をPCのトラブルで無駄にしているという論文を発表した。

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 コペンハーゲン大学とロスキレ大学は2023年6月29日(米国時間)、PCの利用時間の11〜20%がトラブルに費やされているという論文を発表した。同論文は、米国計算機学会(ACM)の論文誌「ACM Transactions on Computer-Human Interaction」に掲載された。

 同論文によると、ユーザーは平均で11〜20パーセントの時間を、動作しないシステムや望むタスクを実行できないシステムのトラブルシューティングに費やしているという。

 研究チームのカスパー・ホーンベック氏は次のように述べている。

 「これほど高い数字は信じられないことだ。しかし、ほとんどの人はPCを使用するときにフラストレーションを経験している。重要なPowerPointプレゼンテーションが保存されなかったり、システムがクラッシュしたりするような恐ろしい経験談を持っている。ユーザーニーズに合ったITシステムを作るのが難しいのは当然だが、本来、この数字はもっと低く抑えられるべきだ。そうでない理由の一つにはシステムの開発に一般のユーザーが十分に関与していないことがある」(ホーンベック氏)

 研究チームのモーテン・ヘルツム氏は、フラストレーションのほとんどは、まったく通常のタスクの実行中に経験されていることを強調する。

 「フラストレーションの原因は、高度な作業ではなく日常業務においてPCのトラブルが発生しているためだ。問題の特定にユーザーを参加させることは全く問題ない。むしろ問題が特定されず解決されなければ、ユーザーの多くは一層イライラするだろう」(ヘルツム氏)

問題点は明白

 研究チームは調査に当たって、日常業務で6〜8時間にかけてPCを使用する10歳から69歳までの234人の参加者の協力を得た。研究者らは、PCが正常に動作しなかったり、希望するタスクを実行できなかったりした場合、1時間以内に報告するよう指示した。

 調査の結果、参加者は平均して1時間あたり1回PCの問題または不満を報告した。参加者が最も多く経験したトラブルは、「システムが遅い」「システムが一時的にフリーズする」「システムがクラッシュする」「検索しづらい」だった。

 ホーンベック氏は「調査参加者の多くはIT専門家だったが、それ以外の参加者のITスキルも高かった。にもかかわらず、これらのトラブルに遭遇したということは、技術的なスキルの有無ではなく、PCの機能に関連して問題が発生している」と述べている。

 調査の参加者は、PCに関するトラブルの84%が以前も経験したものであり、87%は再発する可能性があると回答した。

 「この傾向は15〜20年前と変わっていない。問題は依然として、PCパフォーマンスが不十分であることと使いやすさが欠如していることの2点にある」(ホーンベック氏)

88%が職場でPCを使用、トラブルを減らすには?

 統計では2018年にデンマーク人の88%がデスクトップ、ラップトップ、スマートフォン、タブレット、その他のモバイルデバイスを職場で使用していた。今回の調査を踏まえると、PCのトラブルで週の労働時間のうち、半日から丸1日が無駄にされている可能性がある。これは、PCトラブルが減少すれば、社会にとっても大きなメリットがあることを意味する。

 「解決策の一つとして、PCがトラブルを起こしたことをユーザーに知らせず、ユーザーには作業を継続できるバックアップバージョンのシステムを提供するという方法がある。これでユーザーはイライラやストレスを感じずにすむ」(ホーンベック氏)

 同時にIT開発者は、システムをできるだけ使いやすく、理解しやすくするために、システムを設計する際にユーザーを関与させる必要があると指摘する。

 ホーンベック氏は「本研究はシステムには改善の余地がたくさんあることを示すものだ。問題があるのはユーザーではなく、システムを作成する側にある。将来的にはよりユーザーフレンドリーなシステムの作成に重点を置くことを期待したい」と結論づけている。

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